2009自衛隊観艦式 〜式典編〜


出港した各艦は約3時間かけて相模湾の観艦式実施海域に到着。式典の模様をお送りします。

観閲部隊は、先導艦の「いなづま」を先頭に、観閲艦「くらま」、随伴艦「こんごう」「あぶくま」の4隻で構成されています。

観閲部隊と、平行して航行する観閲付属部隊との距離は800m。この両部隊の間を受閲艦艇部隊が航行して観閲を受けます。

「くらま」には観閲官である内閣総理大臣(代理の菅副総理)が空からヘリで乗艦しました。艦橋露天部で防衛大臣や海上幕僚長らと共に受閲艦艇から敬礼を受けるのですが、この風と荒波に驚いているのではないでしょうか…?
私が乗っている「うらが」の真向かいには随伴艦の「こんごう」が航行しています。
「こんごう」の甲板上にもお客さんの姿が見えますが、「うらが」より全然人数が少ないです。恐らく一般公募の乗艦者ではなく、家族や友好団体等の関係者が乗っているものと思われます。

ちなみにこの頃「うらが」では、雨を避けて艦内や艦橋内にいた人たちが一斉に外に出て来て、押すな押すなの大混雑。撮影場所に割り込んでくるオッサン、撮影しているカメラの前に平気で身を乗り出すバカ女などが多数出現。艦上はまさに無秩序状態となりました(苦笑)
同じく随伴艦の「あぶくま」です。
今回の観艦式では随伴艦が2隻しかいません。前回、前々回の観艦式では随伴艦は5隻いたのですが…。少し寂しいですねぇ。

減ったのは随伴艦だけではありません。観閲付属部隊も7隻から5隻に、受閲艦艇部隊は22隻から18隻に減少しています。前回はさらに訓練展示専用の艦が3隻いました。
海自も海外任務を二つも抱えて艦の運用に余裕がないのは理解できますが、正直、マニアとしてはもう少し多くの艦に参加して欲しかったです
1200、受閲艦艇部隊がやって来ました。観艦式のスタートです。

まず最初は受閲艦艇部隊の旗艦「あしがら」です。
受閲艦艇は、観閲艦「くらま」とすれ違う際にラッパの合図とともに観閲官に対し敬礼を行います。甲板上では乗組員が登舷礼を行い、艦として最大の敬意を表しています。

ふと気付いたのですが、艦上で登舷礼を行っている一方で、艦の後方にはお客さんがいますね。確か受閲艦艇は式本番ではお客さんを乗せない筈ですが…。今回は参加艦艇が少ないので受閲艦艇にも客を乗せているのかもしれません。
受閲艦艇部隊第1群は2隻のミサイル護衛艦です。

1隻目は「はたかぜ」です。1986年の就役以来ずっと横須賀を母港としています。海自がイージス艦を導入する前の第三世代ミサイル護衛艦で、2隻が建造されました。対空ミサイルを前甲板に配置したため、ブルワーク(波よけ)が設置された独特の艦首が魅力的です。

最悪な天候とはいえ、やはり航行している艦艇の姿は魅力的です。ここぞとばかりカメラのシャッターを押しまくって撮影していたのですが、ここで最悪の事態が発生しました…。
カメラが壊れたぁぁぁぁ!!
シャッターを半押ししてもピントが合焦せずレンズが駆動しないのです。(恐らく雨に濡れ続けたのが原因でしょう)
「えっ、何これ?」「よりにもよってこんな時に…」
戸惑い、頭が真っ白になる私。何度か電源を入れ直しても事態は好転しません。そしてその間、無情にも目の前を艦艇が通り過ぎて行きます

念願の観艦式です。簡単に撮影を諦める訳にはいきません。手動でピントを合わせて撮影続行です。
何とか通り過ぎる前に「さわかぜ」を捉えることができました。
続いて、受閲艦艇第2群。
今回の観艦式の目玉商品、空母 新型DDH「ひゅうが」です。

私は7月に宮崎県日向市で「ひゅうが」を思う存分見学しましたが、「うらが」艦上のお客さんのほとんどが「ひゅうが」を見るのは初めてのようで興奮は最高潮に
「『ひゅうが』だぁ!」「すげーでっかい!!」などと叫びながら客が前に押し寄せて来ました。そのため私は後ろから押されて、あやうく艦橋ウイング部から海に落ちそうになりました
「お前ら〜いい加減にしろ!!」(と叫びたかったのですが我慢しました)
第2群2隻目は「さざなみ」
「さみだれ」と共に今年3月30日から約4ヶ月間、ソマリア沖のアデン湾で海賊から日本の商船を護衛する任務にあたりました。

まさに戦場帰りの戦士。受閲はさながら「さざなみ」の凱旋パレードと言っても過言ではないでしょう。
しかしながら、目玉商品「ひゅうが」の直後だけに、「うらが」艦上のお客さんの関心が「ひゅうが」に集まり、あまり注目されていなかったのが残念です…。
こういう艦に注目してこそ真の艦艇マニアですよ!
受閲艦艇第3群は、観艦式には欠かせぬ存在の2隻です。
大湊から参加の「ゆうばり」(227)と「ゆうべつ」(228)です。

艦名、行動海域、さらに兵装に至るまで、まさに「北の防人」と言うべきユニークかつ独特な艦です。1980年代初頭の冷戦下における北方防衛思想の結晶とも言える艦です。
艦齢が既に25年を超えた古い小型のDEですが、マニアにとってはたまならい魅力を放ち続けています。

老朽化のため、観艦式の参加は今回で最後と囁かれています。このようなユニークな艦が退役してしまうのは寂しいですね。
「ゆうばり」と「ゆうべつ」は排水量が1740tの小型艦であるため、猛烈に揺れまくっていました。やはり小型艦は時化た海の航行は厳しいようです。
そのためでしょうか、両艦の甲板上では登舷礼が行われていません。乗組員が海に落下したら大変ですからね。

画像の「ゆうべつ」は、前日の艦艇公開で先任伍長さんに艦を案内していただきました。艦が小さいためか、それとも大湊の隊員の気質なのか乗組員は皆さんフレンドリーで、艦内はとてもいい雰囲気でした。
受閲艦艇第4群は潜水艦です。
最初は、海自の潜水艦史を塗り替えたAIP潜水艦「そうりゅう」です。この艦も今回の目玉商品と言えるでしょう。

セイル上では第1潜水隊群司令の西川一佐が立ち、敬礼を行っています。また旗竿には一つ星の代将旗が掲げられています。通常は陸上で勤務する潜水隊群司令が潜水艦に乗るのは、観艦式の時のみです。とても珍しい光景です。

潜水艦の登舷礼では、潜航舵にも乗組員が2人程度立つのですが、やはり波浪のために取り止めています。
「そうりゅう」のあとには「わかしお」「なつしお」が続きます。

「わかしお」は横須賀、「なつしお」は呉が母港です。「はるしお」型は「わかしお」1隻を除いてすべて呉が母港です。
今年3月、ネームシップの「はるしお」が退役、さらに2隻が練習潜水艦に転用されており、現在第一線で活動するのは4隻となっています。

潜水艦は水中での運動性能を重視した艦形なので、元々水上航行はあまり得意ではないのですが、今回のような大荒れの海での航行は本当に大変そうです。
受閲艦艇第5群は掃海艦艇です。まずは掃海母艦「ぶんご」

「ぶんご」と「うらが」は、1991年のペルシャ湾掃海派遣の経験に基づいて建造された艦で、司令部設備や掃海艇への補給、乗組員の休養といった母艦機能に加え、航空掃海への支援や機雷敷設能力を持つ総合的な機雷戦艦艇です。
掃海母艦が2隻あるのは、かつて掃海隊群が2個あった時の名残です。ちなみに「ぶんご」が1群、「うらが」が2群の旗艦でした。

船体は幅があり乾舷も高いので波浪には強く、この大時化の中でも悠々と航行しています
続いては掃海艦「やえやま」です。

深深度にある高性能機雷や潜水艦用機雷の処理を任務としており、世界トップレベルの機雷処理能力を持っています。
排水量は1000tに及ぶため掃海ではなく掃海です。ただ船体は掃海艇と同じ木製で、世界最大の木造船でもあります。艦内の通路や艦橋は小型護衛艦に匹敵するほどの広さです。

ただ艦艇としては小型なので、今回の大時化の海では気の毒なほど揺れまくっていました
5群の最後は掃海艇「あいしま」。

ペルシャ湾派遣の教訓を盛り込み12隻が建造された「すがしま」型の8番艇です。一世代古くなったとはいえ、「すがしま」型は掃海部隊の中核として活躍しており、掃海隊群だけではなく地方隊、基地隊にも配備されています。

排水量は510tです。500t足らずの掃海艇と1万3000t以上ある「ひゅうが」や「ましゅう」が同じ速度、同じ間隔で一列で航行するってとても凄いことではないでしょうか?
海自は技量の高い一流海軍だと確信しました。
受閲艦艇第6群は補給艦と輸送艦です。

まずは海自最大の艦、補給艦「ましゅう」の登場です。
むちゃくちゃデカイです!!
満載排水量が大きい分、「ひゅうが」よりも遥かに大きく感じます。まさに威風堂々といった佇まいです。

観艦式終了後には護衛艦「いかづち」とともに、インド洋での給油活動という任務が控えています。頑張れ!「ましゅう」!!
ちなみに「ましゅう」って何回インド洋に行ってるんでしょうか…?
しょっちゅう海外派遣に行かされているような気がします。
輸送艦「おおすみ」です。

就役当時、軍事知識の乏しい新聞やテレビが「空母だ!」と大騒ぎしたことが懐かしいですね。
いくら護衛艦と叫んでも「ひゅうが」は実質的に空母ですが、「おおすみ」はどこをどう見ても輸送艦そのものです。
記者のみなさん、この「おおすみ」と「ひゅうが」を比べて、空母と輸送艦の違いを学んでくださいね!

甲板上で登舷礼をしているのは乗組員ではなく陸自の隊員で、災害派遣用の車両も並んでいます。
受閲艦艇第7群は、スクランブル部隊であるミサイル艇です。

「くまたか」「おおたか」で、「くまたか」は余市を拠点に北方の海を、「おおたか」は佐世保を拠点に西の海に睨みをきかせています。24時間体制で日本海から忍び寄る不審船に備えており、空自のF−15Jに匹敵するスクランブラーです。

ウォータージェット推進により、最大速力44ノットで大海原を駆け抜けます。まさに韋駄天と呼ぶにふさわしい俊足ランナーですが、大時化の海では揺れを通り越して転覆寸前でした…(汗)
受閲艦艇第8群として、海保の巡視船「やしま」が続くのですが、海保に全く興味のない私は撮影をパス。
さらにP−3Cなどの航空機の受閲もあるのですが、飛行機に興味がないのでこれもパス。
お客さんが哨戒機やヘリコプターを見ている隙に、私は左舷側に移動、訓練展示撮影のための場所を難なく確保することに成功しました。

ほどなく、観閲付属部隊の先頭を航行する「まきなみ」が左に大きく回頭を始めました。観艦式最大の見せ場である艦艇の一斉大回頭です。
我が「うらが」も大きく右に傾きながら回頭していきます。
あとに続く「ちはや」「あすか」「てんりゅう」も回頭しながら続きます。観閲部隊の4隻、受閲を終えて訓練を披露する受閲艦艇の18隻も一斉に回頭しています。

目の前に広がる艦艇たちの一大絵巻。嗚呼、なんて勇壮な光景なのでしょう…。我、よくぞ日本男子に生まれけり!

痺れまくっている私に再び危機が…。訓練展示は右舷側では見えないことに気付いたお客が雪崩を打って左舷側に。私はまたも押されて海に転落しそうになりました。
「ごらぁ〜、殺す気かぁ!」 この時は頭にきて叫んでしまいました(苦笑)

荒波を蹴散らしながら実戦さながらに繰り広げられた訓練展示編へ