2009自衛隊観艦式 〜出港編〜


10月25日に荒天の中で行われた自衛隊観艦式の模様を、4回に分けてレポートします。
今回は各艦が出港する模様と、荒波を蹴散らして式典海域に向かう様子をお伝えします。

0650、横須賀地方総監部に到着。(私の乗艦場所は吉倉桟橋)
待ちに待った観艦式の一日の始まりです。ワクワク!!
ところが、高まる期待とはうらはらに、空にはどす黒い雲が立ちこめ、海からは強い風が吹き寄せて来ます。かなり不安な天候です…。

画像は明るく写っていますが、実際は雲が低く立ちこめているせいで、午前7時前だというのにかなり薄暗かったです
2回実施された予行の時は爽やかな秋空が広がっていたというのに…。やっぱり私は雨男なのかも…。
入場ゲートの手前で、報道関係者の受付けが行われていました。

私:「私が管理人のHARUNAである」
隊員:「お待ちしておりました!HARUNA様の撮影用に護衛艦を一隻用意しております」

…となるはずもなく、私は一般人として前を通り過ぎるだけでした(今は単なるマニアですから…笑)

報道関係者は観閲艦や先導艦の絶好のポジションに撮影場所が確保され、海幕の広報担当者が親切にお世話をしてくれます。
あ〜羨ましい!!
ふと海の方を見ると、観艦式に参加する潜水艦が出港していました。「わかしお」「なつしお」のどちらかでしょうね。

「そうりゅう」の就役で、「はるしお」型は2世代前の古い潜水艦となってしまった感がありますが、私は流滴型の船体をした優美な姿が大好きです。大学生の頃、広島湾で初めて姿を見て感動した時のことを今もはっきりと覚えています。

式の訓練展示では急速潜航と急速浮上、いわゆるドルフィン運動を披露してくれる予定です。
手荷物検査を終えて桟橋に向かったのですが、普段通っている海沿いの道ではなく、総監部の建物の裏にある道が桟橋への通行路になっていました。VIPが来るので一般人は別ルートにしたのでしょうか?

桟橋の向かいにある体育館やコンビニが入った建物の1階(サマーフェスタで家族連れがカレーを食べている場所)が、乗艦券確認のゲートになっていました。
ここでまず乗艦券の有無が確認されたあと、乗艦する艦の前で乗艦手続きが行われました。
ゲートを抜けて吉倉桟橋へ。そこには式に参加する艦艇たちが乗艦者を待ち受けていました。

桟橋の右側には「いなづま」「あしがら」が係留されています。
「あしがら」は受閲艦艇部隊の旗艦、「いなづま」は観閲部隊の先導艦と、それぞれ名誉な大役を仰せつかっています。両艦の乗組員も大役に向けてとても張り切っているように見えました。

「あしがら」は最新鋭のイージス艦、しかも母港が佐世保で関東の方々は中々お目にかかれないとあって、盛んにカメラのフラッシュを浴びていました。
桟橋の左側には私が乗艦する掃海母艦「うらが」がいました。
かつて周防灘や佐伯湾で掃海隊群の訓練を取材した際にお世話になったフネです。今回は私を乗せて観艦式へ…不思議な縁を感じます。

「うらが」は横幅がある船体なので波浪に強く、しかも上部構造物がシンプルで撮影の邪魔になるような構造物がありません。加えて、災害派遣や海外での邦人救出も考慮に入れている艦なので通路や梯子が広いなど居住性も抜群。撮影には最適なフネと言えるでしょう。
「うらが」乗艦後、さっそく撮影位置を探しに艦上をうろうろ…。

ヘリ甲板にはマットが敷かれ、早くもさくたんの人が艦が用意した毛布にくるまってくつろいでいました。朝食でしょうか、お弁当を広げている人たちもいて、ゆったりとしたのどかな光景が広がっていました。

しかし式典終了後、この同じ場所が地獄絵図と化すとはこの時は予想だにしませんでした…。
「うらが」の隣には「ぶんご」が接舷されていたのですが、受閲艦艇部隊ということで出港時刻が早いため、艦橋ウイング部では慌しく出港の準備が進められていました。

赤ストラップを掛けた幹部は「ぶんご」艦長の田口一佐です。
約10年前、周防灘で掃群の訓練を取材した際、私が乗艦した掃海艇に座乗し、取材の対応をしてくれたのが第1掃海隊司令だった田口一佐(当時は二佐)でした。その際、掃海作業について判りやすく説明していただきました。つまり、私にとっては機雷掃海についての先生なのです。
ご覧のとおり、とてもダンディーな艦長さんです。
「うらが」のウイング部では掃海隊群の椙本幕僚長が「ぶんご」の出港作業を見守っていました。

椙本幕僚長が掛けているストラップに注目!非常に珍しい黄赤の二色ストラップです。
この黄赤ストラップは、掃海隊群幕僚長以外では護衛艦隊幕僚長が使用しています。さらに潜水艦に乗艦した際の潜水隊群司令もこのストラップです。
つまり、将官を区別する場合特別な役職にある一佐を識別するためのストラップなのです。
0755、「ぶんご」が出港しました。

「ぶんご」のヘリ甲板では音楽隊が軍艦マーチを演奏しており、まさに心踊る勇壮たる光景です。

しかし、「ぶんご」の出港に合わせるかのように、どす黒い雲から雨が落ちてきました。しかも海からの風に乗って容赦なく降りかかってきます。光量不足とレンズに付着した水滴のせいでブレ写真とピントぼけ写真を大量生産するはめに…。
ああ、大在埠頭の悪夢の再来か!?
「ぶんご」出港後ほどなく午前8時の自衛艦旗掲揚となりました。
ラッパ譜「君が代」が響き渡る中、すべての隊員が自衛艦旗が翻る艦尾方向に向いて敬礼を行います。
あのラッパ譜を聞くと、海軍DNAが疼きだして私も思わず敬礼しそうになってしまいます…(笑)

しばしの間、自衛艦旗に向かって姿勢を正したあと、ウイング部で敬礼する幹部たちをパシャリ。
左から掃海業務支援隊司令の中谷一佐同副長の荒木二佐「うらが」艦長の中沢二佐です。
0810、受閲艦艇部隊旗艦の「あしがら」が出港
部隊指揮官として護衛艦隊司令官の河野海将が座乗しており、マストには三ツ星の海将旗が翻っています。

受閲艦艇部隊旗艦は、観艦式では観閲艦に次ぐ大変名誉ある役割です。これまでも護衛艦隊旗艦もしくは海自が最も期待をかける最新鋭艦が充てられてきました。
「あしがら」にとってはまさに一世一代の晴れ舞台、事故を起こし表舞台に出れなくなった姉の「あたご」とはあまりにも対照的です。「あたご」が不憫なので、私は当日「あたご」の識別帽を被りました(涙)
0850、観閲部隊先導艦の「いなづま」が出港
先導艦も名誉ある役割で、護衛艦隊の中核として活躍している艦が充てられます。ちなみに3年前の前回は「いかづち」、6年前は「むらさめ」でした。

「いなづま」は私が頻繁に遠征している呉のフネです。私にとっては「ひえい」同様とても親しみのあるフネなのですが、この日の「いなづま」は、全身ドレスアップしてよそ行きの格好をしているように感じました。とても美しく、そして頼もしかったです。
出港する姿を見送りながら、心の中で「頑張れ!」と叫びました。
先導艦「いなづま」は、外国の駐日大使駐在武官といったVIPを乗せています。さらに報道カメラマンを乗艦させています。
画像では判りにくいのですが、ヘリ甲板の格納庫入り口付近には駐日大使や駐在武官が集まって、出港の様子を見学しています。

また、格納庫の上には報道機関のカメラマンが陣取っています。新聞に掲載されていた観閲艦「くらま」と、そのうしろに艦が続いて航行している勇壮な写真はこの位置から撮影したものです。まさに絶好のポジションです
いいなぁ〜。私もあの場所で撮影したかった…。
0900、観閲艦「くらま」が出港しました。

マストには海将旗と五つ星の防衛大臣旗が翻っています。
この時はまだ観閲官である内閣総理大臣は乗艦していません。相模湾の海上でヘリに乗って「くらま」に乗り込んで来ます。

観艦式の主役である観閲艦は長らく1護群旗艦の「しらね」が務めていましたが、前回初めて「くらま」がその任を務めました。
1護群の旗艦を退いたとはいえ、今回は「しらね」が観閲艦に復帰するのではと予想したのですが、前回同様「くらま」でした。やはりあの火災が影響しているのでしょうか…?
「くらま」の出港に続いて、我らが「うらが」も出港しました。
横須賀新港や横浜、木更津から出港した艦とも合流して単縦列で浦賀水道を抜けて行きます。

天候は最悪です。相変わらず小雨が降り続き、海上は雨と霧で霞んでいます。本来ならば艦が一列になって航行する勇壮な光景が撮影できるチャンスなのですが、結果はご覧の通り。思いっきり霞んでいます…(涙)
ちなみに、直後を航行する艦は「あぶくま」。そのあとに「あすか」「てんりゅう」「こんごう」と続いています。(ほとんど見えませんが…)
「うらが」の前方には、観閲付属部隊を率いる「まきなみ」が航行しています。3護群司令の堂下海将補が座乗しています。

天気が悪いだけではなく、波もとんでもなく荒いです。「まきなみ」も船体が上下に揺られ、さらに左右に傾きながら航行していました。とても迫力ある航行シーンとも言えるのですが…。

「まきなみ」が揺れまくっている光景を見て、昔の東宝映画で真珠湾攻撃に向かう南雲機動部隊が荒れる北方海域を航行しているシーンを思い出しました。
観閲付属部隊は、「まきなみ」を先頭に「うらが」「ちはや」「あすか」「てんりゅう」の5艦で構成されています。

「うらが」の後ろに位置するのが潜水艦救難艦「ちはや」です。
その名の通り沈没した潜水艦から乗組員を救うための艦で、第1潜水隊群に所属しています。
排水量が5000tを超える大型艦ですが、艦長や副長など艦の主だった幹部は潜水艦乗りが配置されています。
「ちはや」の甲板上にもぎっしりと乗艦者がいます。艦がトップヘビー気味の構造であるためか、かなり揺れまくっていました。
観閲付属部隊の4番艦は試験艦「あすか」です。海自の優等生、艦艇の学級委員長です。(と、私は思っています…笑)
艦首が鋭く尖った前衛的なデザインをしたフネですが、荒波の中を航行する姿もそこはかとなく優雅さが漂っています。優等生は難しい事でもあっさりとやってのける、そんな雰囲気です(笑)

今回の観艦式では母港の横須賀ではなく木更津から出港し、前日の一般公開も木更津で実施しました。「うらが」や「ちはや」と比べると乗艦者が少ないような気がします。どういった方々が乗っているのでしょう…?
式典の実施海域に近づくにつれて雨が止みました。若干ですが空も明るくなりました。天は我に味方したか…?ただ、依然として風は強く、波は高いです。

「うらが」に後続する「ちはや」「あすか」、さらに5番艦の訓練支援艦「てんりゅう」が各艦の距離を500ヤードに保ちながら一列に陣形を整えました。

艦艇29隻、航空機29機が参加しての海の一大イベント、2009年自衛隊観艦式が間もなく始まります。

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