大分港大在埠頭 体験航海 |
大分の夏の代表的(?)イベントである大在埠頭での体験航海。 マニアの間では毎年大物がやって来ることで有名ですが、今年は「こんごう」と「いかづち」がやって来ました! 0800に自衛艦旗の掲揚。海自隊員にとっては1日のはじめの神聖なひとときですが、民間人の私もあの独特なラッパ譜が聞こえると背筋がシャキッと伸びます。 空には雲が低くたちこめていましたが、この時間帯はまだ雨が降っていませんでした。このまま天気が持ちこたえるのではと期待したのですが…。 |
|
自衛艦旗掲揚後に艦の外観を撮影していたら、いきなり猛烈な雨が降り始めました。私の淡い期待はあっさり打ち砕かれてしまいました…(涙) 毎年、大在埠頭の体験航海は顔や手が真っ赤に日焼けするほどの灼熱の晴天なのですが、今年は土砂降り。私が覚えている限りでは、大在の体験航海で雨が降るのは初めてです。 本来ならば、この位置からの写真は、青い空と蒼い海を背景に艦がとても美しく写るのですが…。 |
|
土砂降りにも関わらず、0815頃には乗艦を待つ長蛇の列ができていました。出港まで1時間以上あるというのに…。 去年はこんな時間に列なんてありませんでした。さらに大分地本の隊員のもとにはキャンセル待ちの市民が殺到、何なんだ!この人気は!? 艦には傘を持ち込めないので、全員が乗艦前に預けるのですが、地本の隊員がひとつひとつ番号札を付けるので相当時間がかかります。その後に持ち物検査と身体検査を経てようやく乗艦となるので、土砂降りの中、乗艦するまで30分以上も待つはめに…。早くも戦意喪失状態です。 |
|
乗艦後、すぐさま艦橋へ。 すでに乗組員が出港の準備に追われていました。 なかでも副長(右)と砲雷長(左)が忙しそうに艦橋を行き来していました。砲雷長は無線で曳船に指示を出し、副長は全般的な指揮と監視を担当していました。 「こんごう」をはじめとするイージス艦の副長には二佐が配置されていますが、次の異動で「ゆき」型や「あぶくま」型などの小型艦の艦長になる人も多くいます。イージス艦の副長は「艦長5分前」のポストのようです。 |
|
出港の準備をする乗組員は、黒い雨合羽を着て横殴りの雨をもろともせず作業をしていました。 海自ではどんなに雨が降っていようと、傘をさしながら作業をすることはありません。それどころか帝国海軍以来の伝統で、制服を着ている時は傘をさしません。 この大雨のせいで、艦橋内は身動きができないほどのすし詰め状態、一方で外に出て撮影なんかしているのは私だけ。しかも全身ずぶ濡れ。一般市民にはさぞ「変な兄ちゃん」に見えたことでしょうね…。 |
|
0905頃、艦長が艦橋に上がってきました。 鍋田智雄一佐、去年8月から「こんごう」艦長を務めています。その前は「あけぼの」の艦長でした。「あけぼの」「こんごう」と第1護衛隊群の主力艦の艦長を立て続けに歴任している訳ですから、かなり凄腕の船乗りなのでしょうね。 大雨だと体験航海が中止される場合も多いのですが、鍋田艦長は実施を決断。予定より早めの0915に「出港用意!」の号令が響き渡りました。 |
|
「こんごう」は後進しながら、ゆっくりと「いかづち」から離れていきます。 この時、降り続いていた雨はピークに。まさにバケツをひっくり返したような大雨となりました。「いかづち」を撮影しようにもレンズに水滴が付いて思うような写真が撮れません。それどころかカメラが雨に濡れて壊れる恐れさえ出てきました。(一応、防滴構造にはなっていますが…) ←の画像も「いかづち」の煙突の上や遠方の山なみの上あたりに大きな水滴が写り込んでいます。 |
|
「いかづち」の乗艦者のほとんどが、大雨を避けてヘリ格納庫に入っていました。「こんごう」はヘリ格納庫がないため、甲板上でずぶ濡れになるか艦内の食堂などで過ごすしかなかったようです。雨の体験航海ってホント悲惨です…。 去年この大在で「こんごう」を思う存分撮影したので、今年は「いかづち」を撮影しようと「こんごう」に乗艦しました。 ところがこの大雨。 出港時に「こんごう」の艦橋から「いかづち」を撮影したのですが、大半がぼやけていたりピンボケしていました。最悪です。 |
|
ところが、天候は思わぬ方向に転びました。 あれほど激しく降っていた雨が、艦が湾内に出ると途端に止んでしまいました。 出港時という絶好の撮影チャンスに大雨に打たれ、撮影が一段落したら雨が止む。何というめぐり合わせの悪さ! 嗚呼、天は我を見放したか…(涙) 雨が止んだので、乗艦者がぽつぽつと上甲板に出てきました。ずっと艦内にいたのでは体験航海の意味がありませんからね。よかったよかった! |
|
乗組員が主砲やVLSなど、甲板上にある装備品を乗艦者に説明していました。体験航海や一般公開の度に思うのですが、艦について説明している時の乗組員の表情って、とても誇らしげで生き生きしていますよね! この時は少年たちが熱心にVLSについての説明を聞いていました。このような体験を通して、海上防衛と海上自衛隊に興味を持って欲しいものです。 少年たちよ、艦を降りたらすぐさま地本の募集コーナーに走りたまえ!! |
|
湾内を航行すること約30分。「こんごう」の後に出港した「いかづち」が近づいて来ました。 大在の体験航海では後続艦が先頭艦を追い抜くのが恒例のイベントなのですが、今年は2隻の距離がかなり開いていました。300mmの望遠レンズをめいっぱい使ってようやくこのサイズ。 去年は「こんごう」が手が届きそうな至近距離で「しまかぜ」を追い抜いただけに、今年の妙に開いた距離は残念です…。 雨が止んだので、「いかづち」の艦橋露天部や前部上甲板が乗艦者で溢れかえっています。 |
|
「いかづち」は速度を上げて「こんごう」を抜き去っていきました。 護衛艦が海上を疾走する姿は、力強くて美しいですね♪ 私のような素人艦艇写真家は、岸壁や遊覧船から停泊中の艦を撮影することがほとんどなのですが、やっぱり軍艦は航行している姿が最高です。あ〜、柴田三雄氏が羨ましい〜! 「いかづち」1隻でもこの迫力。たくさんの艦が海上を駆け抜ける観艦式はさぞかし壮観なのでしょうね。乗艦券、当たって欲しいなぁ…。神様!お願いします!! |
|
変針点で「いかづち」は大きく右へ回頭しました。まさに面舵一杯!です。 こうして見ると、回頭中の艦は思った以上に船体が大きく傾いているんですねぇ。 この回頭シーンも天気が良ければとても美しい写真になるのですが…つくづく今年の異常に長い梅雨が恨めしいです。 遥か彼方に立っている煙突は、東洋一の高さを誇る日鉱精錬佐賀関精錬所の大煙突です。 |
|
「いかづち」が遠ざかったので、艦橋から上甲板に降りました。 艦船マニア、家族連れ、カップル、ギャル、お年寄り…実に様々な人たちが乗艦しておりました。「こんごう」には約500人が乗艦していたようです。 「こんごう」はこの角度から眺めるとすごく大きなフネだと実感します。まさに「浮かべる城」「黒がねの城」です。 しばらくして、ラッパの音と「入港用意」の艦内アナウンスが聞こえてきましたが、アナウンスを担当する「こんごう」の航海科員の口調が非常にユニークでした。 「にゅ〜うこぉ〜〜〜よぉ〜〜〜い!」みたいな感じでした(笑) |
|
「入港用意」のアナウンスが流れると、すぐさま舫作業を担当する第1分隊(砲雷科)の乗組員が前甲板と後甲板に現れ、素早く準備を整えて作業開始まで整列していました。 一番左の黄色いメガホンを首に下げた幹部(水雷士)が、現場作業の指揮を執ります。 水雷士は任官1〜2年程度と思われる若さ溢れるお兄さんで、まだ全身から強烈な「江田島オーラー」を放っていました(そう感じました)。 |
|
いよいよ大在埠頭の岸壁に近づきました。 一足先に「いかづち」が入港を済ませていました。舫作業も終了し、右舷側には既に防舷材も設置されています。 この防舷材は、佐世保港務隊がわざわざトラックで佐世保から運んで来たものです。艦艇が地方の港に入る時には、このような港務隊の支援が不可欠です。艦艇の行動は裏方部隊の苦労の上に成り立っているんですね! 帝国海軍の重巡を彷彿させる船体ラインが美しいぃぃ♪ この美しい姿こそが、今回私が狙っていた絵なんです! |
|
右舷側から曳船に押されて、「こんごう」はゆっくりと「いかづち」に近づいていきます。 「こんごう」の甲板上では大勢の子供たちが、徐々に近づいてくる「いかづち」を見て大喜びでした。 それにしても子供が多かったです。 もちろん親に連れられて乗艦しているのですが、今年は何処の艦艇イベントに行っても家族連れの姿が目立ちました。やはり不況により、お金がかからない海自イベントに人気が集まっているとしか思えません。家族連れにとっては、さながら「無料の国営遊覧船」なのでしょうね(笑) |
|
ある意味、今年の大在イベントの主役と言えるのがこの人。 「こんごう」の水雷長です。 「こんごう」の広報責任者ということで、体験航海中さらには一般公開の際、乗艦者に「こんごう」の説明をしていました。 その話が実に面白い!! よく通る声と軽妙な語り口で、イージス艦・海上防衛という難解な事柄を、絶妙な比喩を交えながら分かりやすく説明するのですがまるで落語を聞いているかのような面白さでした。 このような幹部がいれば、海自はまだまだ大丈夫です(笑) |
|
約500人が乗艦していたので、艦を降りるまで20分程度並んでいたのですが、その間に雨が落ちてきました。 艦を降りて埠頭から撮影を始めた頃には、出港時と同じくらいの大雨になりました。←の画像もレンズの水滴が写り込んでいるのがお分かりになると思います。 今年の体験航海は、出港時や岸壁での撮影時に大雨を食らい、撮るものがない海の上で雨が止むという、まるで神様に嫌がらせされているような状況でした。来年は夏らしい晴天でありますように…。 |