鹿児島港 体験航海&一般公開


前頁に引き続き、鹿児島・谷山港での艦艇イベント2日目の模様をお送りします。
この日、鹿児島地方は梅雨明けし、南国の青い空と海に艦艇が美しく映えました。
0620に鹿児島中央駅そばのホテルを出発、0640に谷山港到着。

到着したちょうどその時、「ちょうかい」から『出港用意!』のラッパが聞こえてきました。まさにグッドタイミング!
「くらま」に繋げられていた舫が解かれ、「ちょうかい」がゆっくりと動き出しました。

予想していた出港時刻よりかなり早めに埠頭に行ったのですが、それでもちょうどのタイミング。海自の朝は早い!
朝日を浴びながら鹿児島湾に向かう「ちょうかい」。

逆行気味で、シルエット風になっているのが逆にいい雰囲気を醸し出しています。まさに「黒がねの城」というべき重厚な姿です。

後ろにかすかに見える山は桜島です。山頂には雲がかかっていますが、地元では「山頂の雲が晴れれば梅雨明け」という言い伝えがあるそうです。
港外で「ちょうかい」と「あしがら」がすれ違いました。

朝日を浴びた2隻のイージス艦のシルエットが行き違う光景は、鳥肌が立つほど美しく、幻想的でした。この時の私は「我、よくぞ日本男子に生まれけり」といった心境でした。

マストの形状や艦橋の形など、シルエットでも「こんごう」型と「あたご」型の違いがよく分かりますね。
「あしがら」は0710に港内に入り、0720から曳船に押されて向きを変えはじめました。

「こんごう」型の「ちょうかい」と「あたご」型の「あしがら」、両艦はよく似ていますが、撮影しながら「あしがら」の方が「ちょうかい」より1回り大きいと感じました。同じ位置、同じ構図で撮影していても「あしがら」の方が、ファインダーからはみ出してしまうのです。

前頁でも述べましたが、早朝から艦を入れ替えるという手間をかけたのは、曳船の使用料を節約するためです(笑)
転回中の「あしがら」。城郭を思わせる巨大な艦橋構造物が目を引きます。「あたご」型では司令部機能を強化したため、「こんごう」型よりも艦橋が大型化しています。

「あしがら」は去年の佐世保シーフェスで見学会(有料)があったのですが、見学中はカメラを取り上げられて撮影ができないというとんでもないことがありました(苦笑)。それだけに、私にとって「あしがら」は何としても撮りたかった艦なのです。
0745に「あしがら」の入港作業が終了。

DDH「くらま」と「あしがら」のツーショット。昨日よりも「くらま」が小さく見えます。というか、「あしがら」がデカイのですが…。このような巨体に漁船がぶつかったら木っ端微塵になるわけですな…(笑)

「こんごう」型のラティスマストから変更されたステルスデザインのマストが目を引きますが、次期汎用護衛艦も同じ形状のマストが採用されるようです。
0800頃から埠頭に見学者が続々と訪れるようになりました。

一般公開は0900からだったのですが、30分前にはご覧のとおり乗艦待ちの列が出来ていました。(私も慌てて並びました)

5月に門司であった「ちょうかい」の公開もそうでしたが、最近、艦を見学に訪れる一般の方々(=マニアではない方々)が非常に多いと感じます。海外派遣任務等で海自への関心が高まっているのでしょうか?それとも単なる物珍しさ?
0900、一般公開開始。
最初に「くらま」に乗艦。艦橋構造物の入り口部分には木製の表札艦暦・歴代艦長を記したプレートが設置されています。
歴史ある艦だけに、プレートには多くの出来事と艦長の名前が刻まれています。

「くらま」が生まれたIHI東京工場2002年3月に閉鎖され、現在は大規模なショッピングセンターになっています。ドックはそのまま公園になっているのですが、そこでカップルがいちゃついているのを見ると複雑な気持ちになります…(苦笑)
「くらま」の艦橋
奥の赤いカバーが掛けられた席が艦長席です。

最新鋭艦と比べればクラシックな雰囲気すら漂う艦橋内ですが、逆に軍艦らしさを感じます。大型艦DDHの艦橋とあって、十分な広さがあります。
中央のジャイロコンパスの前に艦長や航海長、当直士官が立ち、操艦にあたります。
「くらま」の科員食堂。後部ヘリ甲板の真下に位置します。

360人もの乗組員がいるので、食堂も他艦と比べてかなり広いです。真っ赤な椅子、カラフルな模様の床面など、軍艦の中のオアシスのような場所です。もちろん、アイスクリームとジュースも売っています。私は科員食堂の「ゆる〜い雰囲気」が大好きです!

ここで提供されていた麦茶がとても美味しかったです♪
こちらは「あしがら」の艦橋

まさに最新鋭艦の艦橋といった雰囲気。しかも、就役して1年半程度とあってまだピカピカです。
ただ狭いです。最新の航海用レーダーなどが設置されている分、「こんごう」型よりもさらに狭く感じます。戦闘訓練時にカポックを着込んだ乗組員が多数詰めると、身動きするのも大変そうです。

奥の赤い席が艦長席ですが、この日は群司令が「あしがら」に乗艦していたため、左舷側の席には黄色いカバーが掛けられていました。
「あしがら」のヘリ格納庫

「あたご」型は、将来八艦八機体制(八八艦隊)が見直される場合に備えてヘリ格納庫を備えているのですが、ご覧のようにとてもいびつな形をしています。無理矢理スペースをひねり出したような雰囲気です。広さも十分ではなく、実際にヘリを格納したらかなり窮屈な状況になりそうです。
現状では、「あたご」型にヘリを常備させる計画はありません。
格納庫では「あしがら」グッズが販売されていました。

識別帽にTシャツ、マグカップ、バスタオルなどなど多彩な品揃えです。(ちなみに私は超カッコいいTシャツを買いました)
海自の各艦は独自にグッズを製作し販売していますが、どの艦もセンスの良いものが多く、ついたくさん買い込んでしまいます(笑)

艦側としては多額の利益があがる訳ではないのですが、「自分たちの艦にひとりでも多くの人が親しみを持ってもらいたい」という気持ちで販売しているとのこと。皆さん、買いましょう!
埠頭の一角では、艦艇イベントの定番・制服試着コーナーが設けられていました。
制服は幹部の第1種夏服、第3種夏服、海士の第1種夏服のほか、陸自幹部の制服もありました。

小さな子供が制服を着て、記念撮影をしている様子はとても微笑ましいのですが、この日は70歳前後のジイさんやメタボなおっさんが第1種夏服を着て(制帽まで被って)敬礼をしながら記念撮影していたのにはかなり引きました…(苦笑)
こちらも艦艇イベントの定番・募集コーナーです。

艦艇イベントが隊員の募集・確保を第一の目的にしていることを考えると、実はこの募集コーナーこそがイベントのメインであると言うことができます。
「くらま」や「あしがら」に乗艦し、海上防衛に志を抱いたり、海自の制服はカッコいいと思った中高生諸君、すぐさまここで入隊の手続きをしたまえ!
「くらま」と「あしがら」での艦内撮影を終えて、熊本艦隊氏・ASA-P氏と埠頭の突端で休憩しました。ちょうど写真のように「くらま」と「あしがら」を艦首から眺めながら海自談義に花を咲かせました(嗚呼、至福のひととき…)。

さらにその場で数人のマニアの方々と知り合い、海自談義の輪が広がりました。まさにマニアのオフ会状態です(笑)

そんな中、熊本から来ていたM.Hさんがこう切り出しました。「『くらま』と『あしがら』の共通点は?」
私を含めマニアの方々は、「司令部機能が充実している」「ヘリが積める」「竣工後すぐさま佐世保に配備された」などと答えたのですが、正解は「相方(=同型艦)にまったくツキがない」でした。これには一同大爆笑!何と桜島まで噴火してしまいました(笑)

漁船を沈めてしまった「あたご」とCICが燃えた「しらね」を揶揄した秀逸なジョークですが、それにしても同型艦を「相方」と言うセンスはお見事です。
1400、「あしがら」が体験航海に出港しました。

待ちに待った「あしがら」の出入港シーンの撮影が始まります。
巨大な「あしがら」が、「出港用意!」のラッパを合図にゆっくりと動き出す光景は迫力満点感動的ですらありました。

ちなみに乗艦した熊本艦隊氏は艦橋ウイング部に陣取り、出港を指揮している艦長の横で私に向かって帽振れをしています。艦長の操艦のじゃまをするなよ!
「あしがら」は徐々に速度を上げて鹿児島湾へ。
ちょうど桜島が頂上まで姿を現していたので、桜島を背景に航行する「あしがら」の姿を収めることができました。

嗚呼、なんという美しさ…。美しい桜島、そして美しいイージス艦、日本の夏(というか私にとっての夏)を象徴する一枚です。
「あしがら」の美しい姿を撮影することができて、はるばる鹿児島まで遠征した甲斐がありました!
約40分後、「あしがら」が戻ってきました。
この日、鹿児島地方は梅雨明けしており、空に浮かぶ夏の雲、蒼く輝く南国の海に「あしがら」の造形美が映えました

護衛艦はいわゆる「軍艦」ですが、この時私は「海自艦艇は国家の芸術品」だと感じずにはいられませんでした。
この時私は夢中でシャッターを押しまくりました。灼熱の陽射しにより顔や腕が激しく日焼けしていることも気付かずに…。(翌日、皮膚科でヤケドと診断されました…苦笑)
1500、「あしがら」は「くらま」に接舷し体験航海が終了しました。
私は16時過ぎの新幹線に乗らねばならなかったので、入港シーンを撮影後、すぐさまタクシーで鹿児島中央駅に向かいました。

「くらま」「あしがら」「ちょうかい」という大物を存分に撮影することができただけでなく、マニアの方々とも楽しく交流することができました。とても充実した遠征でした♪

夏の遠征は、このあと日向市、横須賀、佐世保と続きますが、撮影と交流両方で充実したものになればいいなと思っております。

梅雨明けの蒼く美しい空と海、そして美しい護衛艦、忘れられない夏の思い出になりました。