護衛艦ひゅうが 体験喫食


8月27日、護衛艦「ひゅうが」が1年ぶりに日向・細島港に寄港。同日、「ひゅうがカレー」体験喫食が実施されました。

1年ぶりの細島港遠征です。
今回のミッションの第一の目的は「ひゅうが」を左舷前方から撮影すること。全通甲板と右舷に寄せられた艦橋という空母艦型を持つ「ひゅうが」ですので、最も空母らしく見える左舷前方からのアングルでその特徴的な姿を写真に収めたいと思います。

一週間前にも伊勢湾で「ひゅうが」を撮影したのですが、左舷前方からの撮影は叶いませんでした。今回はそのリベンジです!

細島港には午前7時前に到着。港内で「ひゅうが」の左舷側が見えるポイントに陣取りました。
夏空が広がる蒸し暑い朝。炎天下での撮影となりそうなので日焼け止めを顔や腕に塗って撮影準備完了です。
予定より少し遅れて午前8時10分頃に「ひゅうが」が入港してきました
細島港のように港内があまり広くない港で見る「ひゅうが」は、まるで金魚鉢に立派な錦鯉が入り込んだような雰囲気です(笑)
その大きさを改めて実感しました。

ところが、入港と同時に空から雨粒が落ちてきました
10分ほど前から上空にどす黒い雨雲が広がっていたので心配だったのですが、よりによってこのタイミングとは…(絶句)
まさに「ひゅうが」が雨を連れて来たとしか思えません。
大雨に祟られた去年の悪夢の再来か…。それともここにきて雨男の本領発揮となってしまったのでしょうか…。
「ひゅうが」が港内を進むに連れて雨も激しくなります。
←の画像を撮影している時はバケツをひっくり返したような大雨。まるでスコールのようです。さすが、南国・宮崎!
猛烈な雨により港内の「ひゅうが」も霞んでしまっています。

ちなみに私はといえば、雨合羽など持っているはずもなく、この大雨に濡れるがままの状態でした。
車の中に雨合羽を積んでいましたが、撮影場所は車から離れており、車に戻っていては撮影のチャンスを逃してしまいます。

雨に打たれようとも、ご馳走を逃すようなマネはできません。
雨で霞む「ひゅうが」を撮影しながら「今回のミッションは失敗か…」と諦めはじめた時、奇跡が起こりました。
スコールのような猛烈な雨は突然ぱったりと止んだのです

上空にはまだ雨雲があって小雨がぱらついてはいますが、この状態なら「ひゅうが」を霞むことなく撮影できます。ヨッシャ〜!!
2隻の曳船によって「ひゅうが」はゆっくりと左に回頭。いよいよ左舷前方からの撮影が実現します。

私はこのHP等で「『ひゅうが』は多目的護衛艦だ」と訴え、世間の空母視する風潮を嫌っております。しかし、あの形を目の当たりにすると「空母らしく撮りたい」と思ってしまうから不思議です(笑)
来たーぁぁ!!
狙っていたアングルによる渾身の一枚が撮影できました♪
この姿こそが「ひゅうが」が最も空母らしく見え、その特徴が最も良く分かる姿ではないでしょうか。

右舷前方に寄せられて設置された艦橋。艦首から艦尾まで延びる全通式の飛行甲板。飛行甲板を広くとるために大きく張り出した船体。飛行甲板に沿って設置されたキャットウォークスポンソン等々、「ひゅうが」の魅力が満載のお姿です。

とはいえ、「ひゅうが」はあくまでもDDHまたは多目的護衛艦です。空母と言って喜んでいる方々や雑誌は「ひゅうが」型護衛艦の本質を理解していないと私は思ってます。
こちらは左舷前方というよりほぼ正面からのアングル。
この姿もまさに「空母」です(笑)

飛行甲板と船体が一体化した艦首形状(=エンクローズドバウ)は、帝国海軍の空母「大鳳」を彷彿とさせます。
この形状は艦の凌波性が向上するとともに、飛行甲板の強度を高める効果があります。

船体右舷から係留用の舫が伸びている様子にご注目。
「ひゅうが」は船体と飛行甲板が一体化しているため、舫は船体に設けられた専用の窓から外に出されます。この窓は波の入り込み防止とステルス対策のため航海中は閉鎖されます。
体験喫食は1200から1300までの1時間です。
1130から参加者の受け付けが始まりましたが、実施10分前の1150までに受け付けを済ませないと参加できなくなるので、格納庫や飛行甲板の撮影をさっさと切り上げて受付へ直行です。

体験喫食の参加者は宮崎地本のHPで参加者が募集され、先着で約40人が選ばれました
抽選ではなく先着順なので、私は宮崎地本のHPに応募フォームがアップされるのと同時に申し込みを敢行、なんとか40人に入ることができました。

テントの中にいる宮崎地本の隊員さんに印刷した当選メールを渡し、参加費(カレー代)444円を支払って受け付けは完了です。
1200、いよいよ体験喫食の開始です。
一般公開時の格納庫ランプからではなく舷門から艦内の科員食堂へ向かいます

体験喫食に参加した理由は、もちろん「ひゅうがカレー」を味わいたいからですが、もうひとつは科員食堂をはじめとする「ひゅうが」の艦内を撮影することです。
今回の寄港でも、一週間前の伊勢湾でも公開されたのは格納庫と飛行甲板のみ。そこで私は、科員食堂に向かう途中カレーを食べている合間に可能な限り「ひゅうが」の艦内を撮影しようと目論んだ訳です。
果たして艦内はどのような雰囲気なのか…。いよいよ乗艦です。
海自艦艇は、上甲板から艦橋構造物内に入ってすぐの場所に艦名を記した表札歴代艦長の名前を刻むプレート艦の歴史を記すプレート艦長らの顔写真などが飾られていますが、「ひゅうが」では舷門から艦内に入ってすぐの場所にそれがあります。

艦の玄関にあたるこの場所は、昔から艦の表札やプレートが飾られていましたが、米海軍の影響なのか10年ほど前から艦の三役(艦長・副長・先任伍長)の顔写真も飾られるようになりました。

「ごんごう」型や「あたご」型は豪華客船のような内装で、立派な調度品も置かれていますが、それに比べると「ひゅうが」は意外に質素な雰囲気です。
(ちなみに「あたご」では有名画家が描いた愛宕山の絵が飾られています)
一番上にあるのは「ひゅうが」を建造したIHIマリンユナイテッドのプレート。完成年と建造を行った工場名が記されています。

中央は「ひゅうが」の三役と第1護衛隊群首脳の顔写真。
左から1護群司令1護群先任伍長第1護衛隊司令副長艦長先任伍長の順で並んでいます。

最下列は左から艦の歴史を記したプレート、歴代艦長名を記したプレート、「ひゅうが」の表札です。
当然ですが、歴代艦長のプレートには山田一佐の名前しか記されていません(笑)この先、このプレートに誰の名前が刻まれていくのか非常に楽しみです。
もうひとつ目を引くのが、帝国海軍の戦艦「日向」と「ひゅうが」を並べて描いたイラスト。
このようなイラストが飾られているのは、帝国海軍の伝統と気風を受け継ぐ海自らしい光景であるとともに、「ひゅうが」の乗組員が戦艦「日向」と同じこの艦名に大きな誇りを持っていることの顕れとも言えるでしょう。

戦艦「日向」は長らく日本海軍戦艦部隊の中核を担う一方で、太平洋戦争中は数々の海戦を生き抜いた武勲艦です。
また、歴代艦長には宇垣纏中将山口多門少将松田千秋少将らがおり、戦史に名を残す提督が大佐時代に指揮を執った艦としても有名です。
ラッタルを降りて一段下の甲板へ。どうやら科員食堂はこのレベルにあるようです。

ラッタルは他の護衛艦と比べて幅が広い訳ではありませんが、艦内の通路はさすが大型艦とあって広いです
しかも、就役してから僅か1年とあって壁も床もピッカピカ。一昔前の艦の狭く薄暗い通路と比べるとまさに隔世の感があります。

去年の一般公開では艦橋を見学しましたが、艦橋構造物内の通路は人ひとりがやっと通れるほどの狭さでした。
さすがにアイランド(艦橋構造物)では艦内並みの広さの通路は無理だったようです。
艦内の通路をさらに艦尾方向に進んで行きます。
ホント、通路が広くてとても歩きやすいです♪反対方向から人が来ても余裕ですれ違うことができそうです。

ネットにアップされている「ひゅうが」の艦内の画像を見ると、艦内でも通路がものすごく狭い箇所があるようです。
ヘリ空母と多目的艦、護衛艦という3つの艦の機能を船体に詰め込んでいる訳ですから、艦橋構造物内や艦内の一部分は余裕のない設計になっているのは確かでしょう。

「ひゅうが」はそれまでにない全く新しいタイプの護衛艦なので、艦内の部屋の配置やその形状を決めるまでには様々な試行錯誤があったということです。
ここは科員食堂の入口に面した通路。
食事時間に乗組員が押し寄せることを想定し、混雑緩和のためやや広めのスペースとなっています。

その壁面には「ひゅうが」神社が祀られています。
艦の神社は艦橋構造物内に祀られていることが多く、このように科員食堂の近くに祀られているのは初めて見ました。
この場所の通路が広くなっているのは、神社にお参りしやすいよう配慮された結果かもしれません。

映画「トラ・トラ・トラ」で、出撃前の淵田中佐が空母「赤城」の神社にお参りするシーンがあります。この場所でそのシーンを思い出し、思わず「奇襲が成功しますように」と祈願してしまいました(笑)
科員食堂の入口です。
只今営業中です」という看板が洒落っ気があって素敵です(笑)

科員食堂は幹部とCPOを除いた乗組員の食堂です。
食事時間は、停泊時は朝食が総員起こし〜0700、昼食が1100〜1200、夕食が1600〜1700です。また航海中は配食用意から1時間となっています。
かつては夜食もあり、艦艇の食事は1日4食でしたが、今では夜食は訓練時などに不定期に出されるのみとなりました。

訓練や業務等で営業(?)時間内に食事ができない場合は、所属する分隊の役員に知らせておけば取り置きしてもらえます
科員食堂の中では、参加者がセルフサービスでカレーを盛り付けている最中で、早い人では既に席に座ってカレーを食べ始めているではありませんか。
どうやら艦内を撮影しまくっているうちに、私は参加者の最後尾になってしまっていたようです…。

こうしてみると参加者は女性が多いですね。しかも若い女性です。

平日にわざわざ仕事を休んで「ひゅうがカレー」を食べに来る若い女性…。これらの女性たちは、今はやりの「歴女」(れきじょ)ならぬ「艦女」(ふねじょ)ではないでしょうか(笑)
私もセルフサービスの列に加わって盛り付け開始です。

士官室で食事をする幹部と先任海曹室で食事をするCPOは当番の海士が盛り付けをしてくれますが、科員食堂での食事は銀色のプレートに自分で盛り付けをします。
私の前に白制服の乗組員がいますが、数人の乗組員が等間隔で列に混じり、参加者に盛り付けを指導してくださいました。

いざ挑戦してみると、ご飯を綺麗に盛るのが意外に難しいのです…。乗組員は毎日しているとあって、素早くかつ美しくご飯を盛っていました。さすがです!
サラダ等のサイドメニューは給養員(青い作業服の方々)が所定の位置に盛り付けてくれました。
盛り付けが完了!これが当日の「ひゅうがカレー」です。
主食は具だくさんのカレー、サイドメニューはサラダトウモロコシの炒め物春巻き煮卵フルーツ。さらに牛乳まで付いています。444円のお代でこのボリューム、すごいです!

お味もとっても美味♪とても文章では伝えきれません!
カレーはスパイシーというか少々辛目。とても上品な味でした。隠し味に何を使っているのか気になりますね。
カレーに負けずサイドメニューも美味しくて、私は過去にこんなに美味しい炒め物や春巻きを食べたことがありません

こんな美味しい食事を毎日食べられるなんて…。海自の隊員が本気で羨ましくなりました。
科員食堂の全景です。私が座った席からの眺めです。
ざっと数えたところ100席近くありました。
広いことは広いのですが、L字型という珍しい形をした食堂です。

広い科員食堂を有する艦艇といえば「おおすみ」型輸送艦がありますが、「おおすみ」型の食堂は陸自や自治体との打ち合わせスペースとしての機能を持っています。
一方、「ひゅうが」はそれらを専用の多目的スペースで行うため、食堂は純粋に乗組員の憩いの場です。

明るい照明、カラフルなテーブルとイス、大型の液晶デジタルテレビなど、最新鋭艦の食堂らしい充実した設備です
↑の画像とは対角線上の反対側から見た科員食堂。
画像の左奥に向かってL字型となっています。

参加者の皆さんも「ひゅうがカレー」を満足そうな表情で味わっています。私同様、あまりの美味しさに驚いたのでは。
考えてみれば、この日は金曜日。
平日に会社も行かずに「ひゅうが」でカレーを食べている方々ってどんな人たちなのでしょうね?
皆さん、私のように「ひゅうがカレー」を食べるためにわざわざ会社を休んだのでしょうか…?

でも「ひゅうがカレー」は、たとえ会社をずる休みしてでも食べに来るだけの価値がありますよ!
「ひゅうが」の科員食堂には、ホテルのバイキングのように料理を置く専用のテーブル(左)が備え付けられています。
先ほどはこのテーブルの前に並んで、トレーにカレーやサイドメニューを盛り付けていった訳です。

従来の艦艇では料理置き場は調理室と一体化していましたが、「ひゅうが」では独立した専用のテーブルがあるのです。これも混雑緩和の一環なのでしょうか。

右に見えている部屋は配膳室で、その奥に調理室があります。調理室でこしらえた料理は配膳室に運ばれ、その後、料理用のテーブルに並べられるようです。
食堂の入口の反対側にある出口近くに食器洗浄室があります。
画像では少々分かりにくいのですが、左側に少しだけ人が写っている場所が食器洗浄室です。

食べ終わったら食堂を出て、食器洗浄室にトレーを返却します。
そこで気付きました
「ひゅうが」の科員食堂は、入口→盛り付けテーブル→着席して食べる→食べ終わったら食堂を出る→食器洗浄室にトレーを返却という、人の流れが一方通行となるように設計されているのです。食堂の形がL字型なのもこれなら納得がいきます。

さすが最新鋭艦。まさに人間工学に基づいた設計です!
食べ終わったら、食堂で冷たい麦茶を飲みながらくつろいでいたのですが、喫食の終了時刻が近づいたため食堂を後にしました。

科員食堂のすぐそばには先任海曹室があります。
先任伍長の鈴木海曹長をはじめとする22人の先任海曹(CPO)の事務室兼休憩室兼居住区です。
長年海軍(海自)の飯を食ったベテランで、曹士の勤務態度や生活態度に目を光らせるCPOの拠点であるこの部屋は、若い曹士たちにとっては入室するだけでも緊張する場所です。

入口の横には掲示板があるのですが、上陸にあたってのさまざまな注意事項が記されていました。
先ほど科員食堂へ向かった通路を戻って舷門へ向かいます。
左のラッタルを昇ったら、上から9枚目のプレートが並んでいる場所に出ます。

科員食堂があるのは第5甲板という甲板レベルで、このレベルには上記の先任海曹室や科員居住区もあり、主に海曹・海士の生活区画となっています。
一方、艦長室や司令室、士官室、士官寝室といった幹部用の施設は第2甲板レベルにあり、このレベルはヘリ格納庫の直上にあたります。また多目的ルームは同じく第2甲板レベルの艦首寄りの位置にあります。
来シーズンは、是非ともこれら幹部用の施設や多目的ルームを見学したいものです。
舷門で当直の海士君にお礼を言って「ひゅうが」を降りました。

「ひゅうがカレー」を味わいつつ、科員食堂などの艦内を撮影するというミッションを達成することができました。
広い艦内の一部とはいえ、一般公開では立ち入ることができない場所を撮影し、そして美味しいカレーを堪能しました。伊勢湾フェスタ同様、素敵な夏の思い出となりました。

このような催しを企画してくれた「ひゅうが」と宮崎地方協力本部に心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
来年もぜひ体験喫食を開催してください。できれば次回は士官室でカレーを食べたいです(笑)

とっても美味しかった「ひゅうがカレー」。「ひゅうが」そして海上自衛隊の精強さの根源は食にあり!