階級章(幹部)

海上自衛官(幹部)の階級章は、冬服の袖口に装着する「甲階級章」、第一種夏服の両肩に装着する「丙階級章」、第二種夏服や作業服の両肩に装着する「乙階級章」の三種類があります。「丙階級章」と「乙階級章」は同じデザインで、「甲階級章」も一佐までは「丙」「乙」と同じデザインです。  ここでは幹部の階級章でも最も美しい「丙階級章」をご紹介します。

 海上幕僚長たる海将   Admiral
約4万4000人の海上自衛官のトップ。諸外国海軍の大将に相当します。正式には階級ではなく、海上幕僚長という役職に就いた海将を別格に処遇するための階級章です。したがって、この階級章を付けているのは海自の中で海幕長ただ1人です。海幕長とは専門的な見地で防衛大臣を補佐する海上幕僚監部の長で、幹部自衛官の中でも選りすぐられた人材が就くポストです。海幕長を経て統合幕僚長に就いた海将もこの階級章を装着します。
 海将      Vice Admiral
海上自衛隊における実質的な最高位。諸外国海軍の中将に相当します。この階級まで達するのは同期の中でも2〜3人程度、海自全体でも16人しかいません。就く役職も艦隊司令官や地方総監など、まさに部隊・機関の最高責任者に就任するのがこの海将なのです。
配置:海上幕僚副長・自衛艦隊司令官・護衛艦隊司令官・航空集団司令官・潜水艦隊司令官・教育航空集団司令官・幹部学校長・各地方総監・補給本部長・開発担当官(艦船担当)
 海将補     Rear Admiral
諸外国海軍の少将に相当します。この階級から上がいわゆる「提督」です。ここまで達するのも至難の業で、同期の5〜6人程度しか昇れません。就く役職は護衛隊群司令や艦隊幕僚長、海幕部長職など、将官にふさわしい華々しい役職が待ち受けています。
配置:
海幕部長職・練習艦隊司令官・術科学校長・幹部候補生学校長・護衛隊群司令・航空群司令・掃海隊群司令・艦隊幕僚長・総監部幕僚長 など
 1等海佐    Captain
諸外国海軍の大佐に相当します。「Captain」の名前の通り、隊司令や艦長など一線部隊の指揮官として奮闘しているのがこの1佐です。年齢も40〜50代前半と幹部自衛官として脂の乗り切った時期と言えるでしょう。ただここまで昇進するのも同期の約45%と、中々の厳しさです。配置:護衛隊司令・潜水隊群司令・潜水隊司令・大型艦艦長・飛行隊司令・教育隊司令・警備隊司令・業務隊司令・海幕課長職・総監部部長職・補給所長・群首席幕僚 など
 2等海佐   Commander
諸外国海軍の中佐に相当します。防衛大や一般大を卒業した幹部自衛官はこの階級までは全員が昇進します。1佐同様、第一線の指揮官として活躍する階級ですが、誰もが憧れる艦長職が回ってくるのもこの2佐です。「2佐=艦長」と言えるほど艦長のイメージが強い階級です。海自ではこの階級から制帽の庇に飾り(通称スクランブルエッグ)が付きます。配置:艦長・大型艦副長・飛行隊長・掃海隊司令・ミサイル艇隊司令・総監部課長・総監部幕僚室長・分遣隊長など
 3等海佐    Lieutenant Commander
諸外国海軍の少佐に相当します。艦艇で言えば船務長や砲雷長・機関長・飛行長といった配置に就き艦の戦闘力向上に努めるとともに、分隊長として乗員のまとめ役としての役割も担っています。中には副長として艦長を補佐する人もいます。掃海艇やミサイル艇などの艇長はこの三佐で回ってきます。このあたりになると海曹から昇進した「叩き上げ」の方も多くいます。  配置:副長・艦艇の砲雷長・船務長・機関長・飛行長・掃海艇長・ミサイル艇長・音楽隊長 など
 1等海尉    Lieutenant
諸外国海軍の大尉に相当します。旧海軍時代から「粋な大尉さん」と言われていたように、若さに経験と知識が備わった「スマートな士官」さんのイメージがあるのがこの1尉です。艦艇では三佐同様に○○長という配置に就く一方で、若手幹部のまとめ役・指導役を担っています。掃海艇ではこの一尉で艇長に就く人が多くいます。
 2等海尉    Lieutenant Junior Grade
諸外国海軍の中尉に相当します。医官や大学院卒業者は防医大・幹候校卒業後この階級からスタートします。艦艇では水雷士・機関士といったいわゆる「士(サムライ)配置」に就き日々奮闘しています。その傍らで1尉・3佐といった中級幹部になるための勉強にも励まなければならない忙しい身分でもあります。
 3等海尉     Ensign
防衛大・一般大を卒業し1年間の幹部候補生学校での教育を修了したのち任官するのがこの3尉です。艦艇では2尉同様「士配置」に就きながら、先輩幹部と経験豊かな海曹たちから「海軍士官」としての知識と経験を叩き込まれています。学校を卒業し晴れて幹部になったものの、日々の業務すべてが勉強といった状況のようです。
 准海尉      Warrant Officer     
部内課程等の海曹から幹部に登用する昇任制度を経ず、海曹長の中からごく僅かな者が昇進するのがこの准海尉です。防大・一般大卒の幹部、部内課程での幹部登用者は3尉からスタートするので、この准海尉の人数は非常に少なくなっています。しかし海曹を経ているだけに経験は超豊富で、艦艇、群や隊の司令部で経験を基に指揮官や上官を補佐する配置に就いています。
 幹部候補生    Midshipmen 
防衛大・一般大を卒業し海自幹部となるために江田島の幹部候補生学校で学ぶ候補生の階級章です。幹部候補生の階級は「海曹長」ですが、海自では旧海軍同様、候補生に錨をあしらった専用の階級章を与えています。帝国海軍の先達が学んだ赤レンガの校舎で、候補生たちは「海軍士官」となるための厳しい教育を受けています。