佐伯港 第3護衛隊群入港

6月10日、国内を巡航しながら集合訓練を実施している第3護衛隊群が佐伯に入港しました。

6月10日午前6時30分、私は佐伯港にいます。去年10月に第1護衛隊群8隻が続々と入港し、地方港とは思えない勇壮かつ壮観な光景をご紹介しましたが、その佐伯に、今回は“日本海の守護神”第3護衛隊群が入港するという情報がもたらされたのです。1群の入港から約半年、再びあの壮観な艦隊の入港シーンを見ることができるのです。否が応でも心が躍ります

到着すると、既に数隻の艦影が見えます。ただ、いずれの艦影も動いていません。実は、艦隊は前夜に佐伯湾に到着していて、沖留めの艦は夜のうちにいち早く停泊位置に投錨したのです。↑の画像で米粒のような艦影が確認できると思いますが、驚くべきことに、実はこの画像には10隻もの艦が写り込んでいるのです。何処にどの艦がいるか、お分かりになりますか?

大分地方は梅雨の時期らしく前日まで雨が続いていたのですが、今朝は上空を厚い雲が覆っているものの、天候は何とか持ちこたえています。そして、雲の切れ間から燃えるような朝焼けが覗き、湾内に停泊する艦艇を美しく染め上げています。

湾内の中央部に見える艦影は「ひゅうが」「すずなみ」「あたご」です。3隻とも私とは過去に深い縁があり、様々な思い出を作ってきた艦たちです。いつもなら県外に遠征してようやく会うことができる彼女たちが、こうして私の地元に来ていることに、わざわざ私に会いに来てくれたかのような気がしてとても嬉しくなります♪「ひゅうが」「あたご」は舞鶴、「すずなみ」は大湊が母港です。地元から遠く離れて訓練に励む乗組員ですが、この美しい朝焼けの景色で少しでも心身を癒して欲しいと思います。

3隻からやや南方に離れた地点に「ゆうだち」「まきなみ」が停泊しています。湾内に浮かぶ小島を背景にして朝焼けに映し出されたシルエットは、戦闘艦であることを忘れさせるほど優雅で美しい佇まいです。本当に日本の艦艇は美しい!うっとり…。
艦艇のこんなに美しい姿を撮ることができるのは、もしかしたら日本中広しといえどもここだけかもしれません。まさに佐伯は艦艇撮影の“穴場”“隠れた名所”と言えます。

旧海軍時代からの泊地である佐伯は、コアなマニアにはよく知られた場所でしたが、去年11月に『艦これ』の新設サーバーに「佐伯湾」の名が冠せられてからは、ゲームマニアにも知られる場所となりました。ちょうど1群入港のレポを掲載した直後だっただけに、運営さんは私のレポを見て名前を決めたと勝手に思っています(笑)

DDH「ひゅうが」です。沖合いに停泊していても、その大きさと特異な艦型はよく目立ちます。朝焼けに映えていい雰囲気です。
新型DDH「いずも」の就役&1群配備に伴って3月に舞鶴に転籍3群に配置換えとなりました。当HPでもお馴染みの『もびうす』さんは、「しらね」退役後にこの「ひゅうが」乗り組みとなっています。沖合い停泊なので面会に行けないのが残念だなぁ…。

転籍により「ひゅうが」の横須賀在籍は6年間で終わりました。耐用年数を35年と想定すると、「ひゅうが」は今後約30年もの間日本海の守りを担当することになります。他基地からの“お下がり艦”が多い舞鶴ですが、この「ひゅうが」は“お下がり”とはいえ艦齢7年ですし、就役時に大きな注目を浴びた艦ですから、舞鶴艦隊のファンにとっては期待の星であり、長く愛され続けることでしょう。

艦隊のうち岸壁に接岸するのは「みょうこう」「ふゆづき」「せとぎり」と、訓練に飛び入り参加(?)している12護隊の「とね」です。これらの艦は沖留めの艦とは異なり、湾の遥か沖合いで、まるで島陰に身を隠すかのようにひっそりと停泊しています。
←には訓練支援艦「てんりゅう」の姿も写っています。「てんりゅう」は直後に抜錨し、呉へ戻って行きました。ということは、今回の3群入港は四国沖で一訓練終えての入港ということになります。

海自艦が入港する際は、多くの場合、前日までに港外・湾外まで来ていて、準備万端整えてから悠々と入港します。今回も誰が見ている訳でもないのに、接岸する艦は陸上から見えにくい地点に待機し、あたかも今まさに到着したという体で入港するのです。海自という組織は、良い意味で“格好をつける”組織なのです。

あれっ、潜水艦がいる!
沖合いにいる艦艇ばかりに気を取られていたのですが、ふと気付くと、私がいる防波堤から近い位置に「おやしお」型潜水艦がいます。残念ながら艦名は分かりませんが、川崎重工で建造された艦のいずれかのようです。この潜水艦も訓練中なのでしょうね。

対岸に写っている陸地は、陸続きではなく、佐伯湾に浮かぶ大入島なのですが、防波堤と大入島を結んだ線のやや東側(沖方向)の海域が、潜水艦が沖留めする際の定位置となっています。
佐伯湾には潜水艦も数多く入港して佐伯基地分遣隊の支援を受けることから、歴代の分遣隊長は潜水艦乗りが多数務めています。現隊長の高瀬二佐も艦長経験を持つベテランの潜水艦乗りで、6年程前には2度の艦長経験を持つ猛者の隊長もいました。

思いかけず停泊していた潜水艦に心躍らせながら撮影をしていると、突然一隻の掃海艇が目の前を横切って行きました。わぁ!
航行して行ったのは掃海隊群第1掃海隊(呉)に所属する「いずしま」です。潜水艦とその前を航行する掃海艇、まるで呉かと見間違えるような光景です。沖にいる3群の艦艇たちと合わせて、ここは本当に地方港なのかと疑問に思えてくるほどの状況です。

到着した時点で姿が見えず、いま突然現れたのは、ここからは見えない佐伯基地分遣隊の桟橋に接岸していたためでしょう。この「いずしま」も訓練中に入港していたものと思われますが、掃海艇がこんな場所に単艦で訓練に来ることはあまりないので、恐らく第1掃海隊3隻で行動中なのだと思います。ということは、この後に2隻のお仲間がやって来る可能性が大です。撮影スタンバイ!

カメラを分遣隊方向に向けて待ち構えていると、予想通りお仲間が現れました!「みやじま」です。「すがしま」型10番艇で広島で最も有名な観光の島の名を負ったこの艇は、私が尊敬申し上げる不肖・宮嶋氏が名誉乗組員になっているユニークな艇です。

第1掃海隊の3隻は一世代前の「すがしま」型3隻で編成されていますが、最新型の「ひらしま」型・「えのしま」型が就役しても、地方隊に転じることなく活躍を続けています。同じ機動部隊でも護衛艦隊は新型艦が就役すると旧式艦が地方配備護衛隊(旧地方隊)に押し出されるのに対し、掃海隊群は旧式艦がそのまま残留し、逆に地方隊に最新型が配備されるという現状になっています。言い換えれば、「すがしま」型は一型式古くなっても、最新型に負けない性能を有しているとも言えます。

最後にマストに司令旗を掲げた「あいしま」が現れました。睨んだとおり、第1掃海隊で訓練に来ているようです。舫作業にあたっていた乗組員が依然として前部甲板上に残っていますが、皆さん、昨夜のうちに湾内を埋めた艦隊の姿に見入っているようでした。

現在時刻は午前7時15分です。通常ならば午前8時に出港するところでしょうが、これから4隻の護衛艦が入港してくることから、混雑防止と事故防止のために、急ぎ自衛艦旗掲揚を済ませて出港したと考えられます。ということは、この「あいしま」が湾外に出るタイミングで最初の艦が入港することになります。3群の艦を撮影しに佐伯に来たのですが、潜水艦に掃海艇まで現れて、まるで呉か佐世保にいるような気すらします。どうです、佐伯ってすごい所でしょ定年後は佐伯湾を望む場所に移住しようかなぁ…。

「あいしま」は、湾内に停泊している3群所属艦を左手に眺めながら豊後水道へと出て行きます。太陽が昇って海上にかかっていたモヤが晴れると、「ひゅうが」の右舷遥か後方に「ふゆづき」「とね」の姿が現れました。おぉ、そこにいたのか!

いま「あいしま」が航行している海域が佐伯湾に航路にあたります。これから入港する3群の艦は、この航路を「あいしま」とは逆向きに航行して埠頭に近づいてきます。例えば、遠方にいる「ふゆづき」と「とね」は、直線移動が最も近いからといって、今いる地点から真っ直ぐ埠頭に向かって来てはいけないのです。航路を外れて航行すると、浅瀬や岩礁で座礁したり、操業中の漁船を蹴散らしてしまう恐れすらあります。だだっ広く感じる湾内ですが、実は船舶が航行できる場所は限られているのです。

「あいしま」が通過した直後、最初に入港する「ふゆづき」が入れ替わるように航路に進入、私がいる女島埠頭に向かって一直線に航行して来ます。続いて「とね」も「すずなみ」の背後を横切り、今まさに航路に進入しようとしています。
各艦の動きは統一と連携がとれた全く無駄のないもので、まるで観艦式や展示訓練での艦隊運動を見ているよう。一見何気なく見える艦の行動も、実は訓練を兼ねていることが多いのです。

そういえば、今年は10月に観艦式がありますねぇ。「ひゅうが」や最新鋭DDである「ふゆづき」は参加する可能性が大です。ぜひとも撮影に行きたいのですが、関係者からの情報では、今回は公募用の乗艦券が前回の3分の2以下にまで減らされているとのこと。昨今の海自人気と相まって、入手は困難を極めそうです…

トップを切って入港して来たのは「ふゆづき」です。「あきづき」型DDの4番艦で、去年3月に就役した最新鋭艦です。去年7月の舞鶴展示訓練の際に、岸壁に接岸中の姿を撮影しましたが、航行中の姿を撮影するのはこれが初めてです。嬉しいなぁ♪

マストには訓練の統裁官である護衛艦隊司令官・河村海将の海将旗が翻っています。去年10月の1群入港の際も、司令官が「しまかぜ」に座乗して訓練を統裁していました。5年前に司令部専用艦(護衛艦隊旗艦)が廃止され、完全に陸に上がった護衛艦隊司令官と幕僚は、訓練統裁の際には、このように司令部施設が充実した訓練参加艦に乗艦するようになりました。
逆の見方をすると、大型化・高機能化して司令部を収容できる艦が増えたことで、司令部専用艦が不要になったとも言えます。

「ふゆづき」が私が立つ防波堤の間近にまで迫りました。DDとはいえ、基準排水量が5000tを超えるともなると、実に堂々とした立派な体躯です。「ゆき」「きり」型と同じDDという事が信じられません。加えて、特殊な形の艦橋構造物や後部構造物を有することから、艦艇に詳しくない人でも、一目で「何だか強そう」「特殊な働きをする艦」という事が分かるほどの際立った艦容を誇ります。

「あきづき」型DDは1~3番艦は三菱重工長崎で建造されましたが、この「ふゆづき」だけは三井造船玉野事業所で建造されました。同造船所が護衛艦を建造するのは「むらさめ」型DD2番艦「はるさめ」以来17年ぶりで、海自内には建造技術の低下と劣化を憂慮する声もありましたが、三井の技術者たちの懸命の努力と頑張りによって素晴らしい艦が出来上がりました。三井造船に拍手!

タグボートの支援によって「ふゆづき」は180度向きを変えて女島埠頭に接岸します。支援している曳船ですが、去年10月の1群入港時には呉からYT2隻が来ていましたが、今回は民間の曳船です。
俗に『一押し30万円』と言われるように、民間の曳船を雇うと、入港する船舶1隻にあたり最低でも30万円がかかります。最安値の30万円と仮定した場合、4隻が入港する今回は入港作業だけでも最低120万円の経費がかかることになります。

去年10月には1番艦「あきづき」が、同じ埠頭に入船の状態で接岸しましたが、今回「ふゆづき」は出船での接岸です。今回の接岸方法は、「あきづき」型が今後佐伯港に入港・接岸する際のデータ収集なのは間違いありません。この接岸も一見何気なく見えるものの、実は深い意図が込められているのです。

続いて入港してきたのはDE「とね」です。「ふゆづき」の凝りに凝ったデザインと堂々たる体躯を見た後なので、小さくてシンプルな「とね」がとても可愛らしく感じてしまいます(笑)
ところで、3群所属ではなく呉の地方配備護衛隊(第12護衛隊)所属の「とね」が、なぜ3群に混じっているのでしょうか?

考えられるのは、訓練相手がいないので3群に混ぜてもらって訓練をしたということ。12護隊の僚艦「あぶくま」「せんだい」「うみぎり」がドック入り等でいないために、群集合訓練で3群が呉に近い四国沖に来たのを機に、一緒に訓練を行った可能性が大です。
実は護衛隊群の訓練に地方配備艦や線習艦が飛び入り参加することは多々あり、僚艦とでは実施できない訓練も可能なことから、練度向上の絶好の機会として捉えられています。

「とね」も180度方向転換、出船の状態で埠頭に接岸します。
あれ?曳船が取り付く前から自ら向きを変えているぞ…。「あぶくま」型ってサイドスラスターを搭載していましたっけ?それとも、車のドリフトの如く、推進力を維持しつつ急激な転舵で艦を曲げたのでしょうか?はたまた、停止して潮流に身を任せたのでしょうか?

さて、「とね」が3群に混ざって訓練している事について、私は少し穿った見方もしています。実は来年3月に「あぶくま」型DEが1隻舞鶴に転籍して、第14護衛隊に編入される予定になっています。私は、この「とね」が転籍予定艦であり、近い将来舞鶴艦隊の一員になるのを見越して、この時期から舞鶴の皆様(=3群)と訓練を行って転籍後に備えているとも考えています。この推理が当たっているかどうか、答えは来年3月に判明します(笑)

曳船に押されて「とね」が接岸します。女島埠頭の「ふゆづき」の前方に付けるうようです。埠頭で入港作業にあたっているのは佐伯基地分遣隊の隊員です。佐伯のような地方港に艦艇が何隻も入港・接岸できるのは、彼らの働きのお陰です。

DDとDEの違いがあるとはいえ、「ふゆづき」と「とね」のあまりの艦容の違いに思わず笑ってしまいます…
今となってはあっさりし過ぎと感じる「とね」ですが、「あぶくま」型DEは海自史上初めて意匠にステルスを導入したり、科員居住区のベッドを二段化したり(それまでは三段)と、艦艇が近代化する契機となった艦=エポックメイキングな艦なのです。私としてはこの点を踏まえて、もっと「あぶくま」型のファンが増えて欲しいと思っています。しょっちゅうイベントに来るので見飽きたとか言ってはいけません!

続いては「みょうこう」姉さんが入ってきました。ここ数年、夏のイベントレポートで毎回のように登場するお馴染みの艦です。
3群の防空の要であり、なおかつ日本海に弾道ミサイルを撃ち込もうと画策する半島の某国に睨みを効かせる最強の盾でもあります。舞鶴艦隊の長女的存在であり、上記の存在意義とも相まって舞鶴市民と舞鶴艦隊ファンから絶大なる人気を得ています

「みょうこう」は舞鶴や八戸など、大分から遠く離れた海で撮影することがほとんどでしたが、初めて私の地元にやって来てくれました。母港・舞鶴を長期間離れて訓練に励んでいますが、山が海岸線にまで迫った佐伯湾の景色は舞鶴湾によく似ているので、乗組員たちも母港に戻ったような感覚に襲われているかもしれません。上陸後は名物の佐伯寿司でも食べて鋭気を養ってください!

「みょうこう」は「ふゆづき」「とね」と比べてかなり奥まった地点で方向転換、どうやら新女島埠頭の方に接岸するようです。
去年4月に新女島埠頭が完成したことから、佐伯に艦艇が多数入港・接岸する場合は、大型艦が新女島埠頭(水深14m)、中小型艦が女島埠頭(水深10m)と使い分けることが可能になりました。

ところで、今この場所では私以外に数人の艦艇ファンが撮影をしています。今回の3群入港は“業務上の入港”であるため、自衛隊側からの告知は一切なかったのですが、皆さんなぜ入港を知っているのでしょうか?話を伺ってみると、昨夜インターネットのライブ船舶マップ(AIS)を眺めていると佐伯湾に海自艦が続々と集結しているので、「これは祭りだ!」と急きょ駆け付けたとのこと。私以上にディープなマニア様たちです。さすがです!

最後に入港して来たのは「せとぎり」です。“隠れ「きり」型ファン”としては、この入港はかなり嬉しいものがあります♪ この「せとぎり」を撮影したくて、わざわざ八戸まで遠征したのがもう4年も前になります。あの遠征は楽しかったなぁ…。

その時に乗組員から「再来年に横須賀に転籍します」と聞いたのですが、実際に転籍したのは僚艦の「ゆうぎり」でした。何らかの事情で変更になったと思われますが、もしかしたら私が当HPでいち早く報じてしまったので、それが原因になったのでしょうか?
「きり」型DDは、その「ゆうぎり」をはじめ全8隻中5隻が地方配備護衛隊に転出しています。この「せとぎり」は護衛隊群に残っている3隻のうちの1隻で、最新鋭艦のような華々しさはありませんが、“ベテランの円熟味”を発揮して頑張って欲しいと思います。

「せとぎり」は「みょうこう」とは対照的に、私がいる場所からかなり近い場所で方向を変えます。どうやら「とね」「ふゆづき」と同じ女島埠頭の方に付けるみたいです。マニアの間でも好き嫌いが分かれる「きり」型の艦容ですが、こうしてみると尖った艦首、低い艦橋構造物、林立する2本のマストなどかなり精悍でカッコいいと思いますが…いかがでしょうか?

前甲板上にいる乗組員の服装にご注目。皆さん作業服(幹部:紺、曹士:青)を着ています。今回の入港が広報目的ではなく、訓練における“業務上の入港”であることを窺わせます。この出入港作業も訓練の一環でもあるので、遠くから見ていても作業にあたる乗組員の間には緊張感が漲っているように感じます。同じ入港風景でも広報目的の時とは雰囲気が全く異なります。

「せとぎり」は「とね」に目刺しで付けるようです。目刺し(=横付け)は一歩間違えは“体当たり”になってしまうので、曳船は慎重に「せとぎり」を押します。艦を押すのは曳船ですが、その力加減は、艦橋にいる幹部から曳船に無線で指示が送られています。曳船に的確に指示を送って横付けすることも操艦の一部なのです。

今回埠頭に接岸する4隻が1枚の画像に収まりました。なんという壮観な光景でしょう!繰り返しになりますが、とても地方の港とは思えません。夏の広報の時期には地方港に艦艇がしばしば入港しますが、このように主力艦が4隻も入ることはありません。訓練中の入港が行われる佐伯でこその光景です。ただ、十数年ほど前までは、広報でもこの位の規模の入港は結構あったのですが…。この10年ほどで海自も随分忙しくなってしまいました…。

「せとぎり」が入港を終えた直後、さらなる動きが…。あの「おやしお」型潜水艦が出港を始めたのです。どうやら4隻の入港が終了するのを待っていたようです。出港ラッパを鳴らさず(艦長の「出港用意!」の号令はあってもラッパは吹奏しない)、誰にも見送られずにひっそりと出港する様子は、まさに“海の隠密”です。

この潜水艦はこれから何処へ向かうのでしょうか?母港に戻るのか、それとも訓練海域か、はたまた海峡監視等の任務に就くのでしょうか?過酷な任務不自由な艦内生活に負けずに奮闘する潜水艦乗組員に、心からエールを送ります。頑張って!!
日差しがほとんどないので私は帽子を着用していませんが、心の中でこの潜水艦に向かって力いっぱい帽子を振りました
「潜水艦が出港する、帽振れ!」

4隻すべての入港が終わりましたが、贅沢を言わせてもらえば、沖にいる「ひゅうが」「すずなみ」「まきなみ」「ゆうだち」「あたご」も入港して欲しかったです。ただ、全艦入れようとすると曳船の料金が跳ね上がるでしょうし、「ひゅうが」1隻で新埠頭を占有してしまうでしょうから、無理なのは分かっていますけどね…(笑)

沖留めの「ひゅうが」ですが、先ほどと向きが変わっているのは、私が撮影場所を移動したからではなく、艦自らが向きを変えたからです。このように沖留めの艦は、潮流によって刻々とその向きを変えるのです。ちなみにこの2時間ほど後には、完全にお尻をこちらに向けていました。まるで踊っているようです(笑)
沖にいても望遠レンズ威力でその姿を間近に捉えることが可能なのですが、逆光とモヤでシルエット状になっているのが残念…。

「まきなみ」「ゆうだち」も「ひゅうが」と同じ方向に向きを変えています。準同型艦で艦容がほぼ同じ2隻のシルエットが重なる光景は幻想的であり、見ようによっては、「まきなみ」が忍者の如く「分身の術」を使っているようにも見えます(笑)

この2隻、かつては佐世保所属艦でしたが、「まきなみ」は2011年、「ゆうだち」は去年大湊に転籍しました。特に「まきなみ」は体験航海で大分に来て、当時艦長だった豊住二佐(現一佐)に出会った思い出深い艦です。遠く大湊に嫁いでしまったことはとても寂しいのですが、北方海域の守護神としての使命を果たして欲しいと思います。寒さに負けずに頑張れ「まきなみ」!
大湊はこの2隻に加えて「すずなみ」もいて、大湊艦隊は数は少ないながらも強力なメンバーが揃っていますね。

入港・接岸作業が終了すると、各艦の内火艇がひっきりなしに往来します。左は「ひゅうが」、右は「ふゆづき」の内火艇です。艦長と各科長が打ち合わせ等のために移動していると考えられます。いずれかの艦で作戦会議が行われているようです。
艇前部に見張り員、後部に機関長が立っていますが、かなり揺れる艇上でバランスを崩すことなく端正に立っている姿は、「さすがは海の男だなぁ」と感心せずにはいられません。

内火艇の往来は、典型的な軍港の風景ですが、近年は乗組員の勤務環境改善の一環で、各基地とも岸壁や桟橋を増設・改良して沖留めを極力避けるようになり、このような光景はあまり見られなくなりました。その意味では、佐伯は昔ながらの“海軍的な光景”“軍港の風景”を見ることができる国内唯一の場所と言えます。

内火艇の行き先を目で追ってみると、「みょうこう」へ向かっています。どうやら「みょうこう」で会議が開催されるものと思われます。時を同じくして、埠頭に接岸している「せとぎり」「とね」「ふゆづき」のマスト上に艦長不在を示す旗が揚がりました。やはり「みょうこう」で会議が開催され、3艦の艦長もそれに向かったようです。この場合はさすがに内火艇は使わず、埠頭を歩いて移動します。

接岸が終わって艦が動くことはないのですが、私はしばらくの間この4隻を眺めていました。動かなくても様々な艦内放送が流れたり、広報での入港では目にしない整備風景を見ることができるのです。「せとぎり」では艦橋の窓掃除主砲砲身の清掃が行われていますし、「とね」では溜まったゴミの搬出が行われています。行動中の艦艇は停泊していても様々に楽しめるのです。

入港した3群の艦を日が暮れるまでずっと眺めていたいのですが、私も所要があるので、泣く泣く佐伯港をあとにします。
最後に対岸の鶴谷岸壁から撮影、林立するマストがこの港に3群の艦艇が集結していることを実感させてくれます。もはや、佐伯は海自艦艇の“準母港”と言っても過言ではないでしょう。

地元に住む者としては、総監部が所在する五大基地以外にも多数の艦艇が入港し、壮観な出入港風景や広報とは違う緊張感が漲る艦艇の姿を見ることができる佐伯を、その歴史とともにもっと多くのマニア・ファンに知ってもらいたいと思っています。
当レポをご覧になって「佐伯って素敵」と思った方、ぜひお越しくださいませ。ただ事前に艦の動向を把握しておかないと、単に波穏やかな美しい湾を見るだけになってしまいますのでご注意を!

朝焼けに美しく照らされた佐伯湾に散らばる艦艇たち…感動的な光景をあなたもぜひご覧ください!