2015自衛隊観艦式 ~事前公開1・展示 帰投編 |
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「いずも」が「ぶんご」と反航して行きました。「いずも」は「ぶんご」の直前を航行していましたが、その艦と反航するということは…そうです、受閲部隊の艦は展示を担当する艦を除いてこの先の地点で反転するのです。「ぶんご」は「いずも」の後を追って右に転舵し反転するので、その際に後続する受閲部隊各艦を隊列の斜め前から撮影できる絶好のシャッターチャンスが訪れるはずです。 反転を前に私の胸の鼓動は高まります♪♪ 私見ですが、「いずも」って前から見るよりもこのように斜め後ろから見る方が格好いいと思いませんか?前から見ると「ひゅうが」型にそっくりですが、後方から見るとデッキサイド式エレベーターや艦尾キャットウォークなど、「いずも」ならではの装備が見えて長大な船体と相まって新型艦特有のワクワク感を与えてくれます。 |
「ぶんご」が変針点に到達しました。面舵一杯! 「ぶんご」は速力10ノットを保ったまま右に変針、すると後続する受閲部隊の隊列、さらにはその後方を反航する観閲部隊の隊列が、美しい二本の線となって相模湾を突き進んでいる光景が目に飛び込んできました。嗚呼、絶景なるかな相模湾。 その時、私はあろうことか、あまりの絶景ぶりに舞い上がってしまい、シャッターを押せなくなってしまいました。どこを見ても絵になる絶景のオンパレードに、どの艦を撮ればいいのか分からなるほど頭の中が混乱してしまったのです…(汗) 被写体を選ぶことができず、さらに体が凍りついたよう動かないことに焦る私、 そんな時、頭の中に誰かの声が響きました。「掃海艇、反航!」「『ましゅう』、左変針!」「『おおすみ』、近づく!」。 |
その声で我に返った私、指示のあった艦にカメラを向け、渾身の力を込めてシャッターを“連射”します。α77の連写性能を見よ! まずは反航する掃海艦艇を捉えます。この艇は「たかしま」です。道中に強烈なうねりに行く手を阻まれ、上下左右に船体が翻弄されましたが、それを乗り越えて観閲を受けている姿は自信に満ち溢れているように見えます。掃海屋の心意気を身を持って見せ付けてくれました。その心意気や、まことに天晴です。 掃海艦艇は船体の小ささ故に水上艦とは航行性能に大きな差があるためか、反転せずにこのまま帰途に就きます。せっかくここまで来ているのですから、このまま帰すのではなく、何か展示を担当させてみてはいかがでしょうか?例えば掃海具を使っての機雷処理のデモなんていいと思うのですが…。少々地味かなぁ…。 |
その声で我に返った私、指示のあった艦にカメラを向け、渾身の力を込めてシャッターを“連射”します。α77の連写性能を見よ! まずは反航する掃海艦艇を捉えます。この艇は「たかしま」です。道中に強烈なうねりに行く手を阻まれ、上下左右に船体が翻弄されましたが、それを乗り越えて観閲を受けている姿は自信に満ち溢れているように見えます。掃海屋の心意気を身を持って見せ付けてくれました。その心意気や、まことに天晴です。 掃海艦艇は船体の小ささ故に水上艦とは航行性能に大きな差があるためか、反転せずにこのまま帰途に就きます。せっかくここまで来ているのですから、このまま帰すのではなく、何か展示を担当させてみてはいかがでしょうか?例えば掃海具を使っての機雷処理のデモなんていいと思うのですが…。少々地味かなぁ…。 |
「おおすみ」が2隻のLCACを従えて航行しています。こうして見ると、LCACが凄まじい量の海水を飛ばしているのが分かります。 LCACはいわゆるホバークラフトですが、私の地元には5年程前まで国内唯一の旅客用ホバークラフト(大分ホーバーフェリー)が運航されていました。LCAC同様、航行時に凄まじい勢いで海水を飛ばすため、発着場近くに住んでいる同級生が洗濯物を外に干せないと言っていたのを思い出しました。 さて、先ほど私の頭の中に響いた声は、誰の声だったのでしょう?後になって、あの声は帝国海軍の軍人だった祖父だったのではないかと思うようになりました。絶景を前に舞い上がった私を、天国で見ていた祖父が助けてくれたのだと思います。もしかしたら、祖父も天国からこの観艦式を見ていたのかもしれません。 |
航空部隊への観閲が始まりました。まずはSH-60K・SH60J・UH-60Jの3機編隊です。SH-60KとSH-60Jはお馴染みの対潜ヘリコプター、UH-60Jは救難ヘリコプターです。ちょうど「ぶんご」が「おおすみ」と至近距離で擦れ違う際に編隊が飛来したので、「おおすみ」+ヘリ編隊+富士山という、これまた素敵な画になりました。富士山、まさに千両役者です(笑) 航空部隊への観閲が始まると、相模湾には飛来するヘリコプターの凄まじいローター音やジェット機のエンジン音がこだまします。一方で、足元からは航行中の艦が波を切る音も耳に飛び込んできます。観艦式では空(上)からの音と海(下)からの音両方が聞こえるわけで、目の前で繰り広げられる艦隊絵巻だけでなく、音(耳)でも観艦式は楽しむことができるのです。 |
続いての3機編隊は掃海・輸送用ヘリコプターです。MH-53Eが2機、MCH-101が1機という構成です。MH-53Eは1989年の初調達以来、長らく掃海・輸送任務に携わり、ピーク時には11機が配備されていましたが、老朽化や事故等により現在は5機まで機数を減らしています。その後継機がMCH-101で、2006年から配備が始まり、現在の機数は6機、将来的には11機まで増やされる予定です。 MH-53Eは機体側面に取り付けられた大きな燃料タンクが目を引きます。このタンクにより原型のCH-53Eよりも3倍の燃料が搭載可能で、掃海作戦時の長時間飛行に対応できるようになりました。 私はかつて周防灘での掃海訓練で、MH-53Eが間近を飛行するのを見た経験がありますが、その大きさに圧倒されました。 |
続いては、お馴染みの哨戒機・P-3Cです。製造国のアメリカ(ロッキード社)のみならず、日本やオーストラリアなど20ヶ国以上で使用されているベストセラー機です。海自で配備が始まったのは私が中学生の頃(1981~82年)で、当時のテレビニュースで大きく報じられたほか、雑誌「丸」で特集記事が掲載され、それらを興味深く見たり読んだりしたことを昨日の事のように覚えています。 約15年前に、第1航空群第7航空隊(現在は統合されて第1航空隊)所属のP-3Cに取材で乗ったことがあるのですが、機内は思いのほか広く、機体後方部分にはトイレや休憩用設備(テーブル&イス)までありました。旅客機がベースとはいえ、軍用機だけにとんでもなく揺れまくり、壁に体のあちこちをぶつけるはめに。それ以来、旅客機がどんなに揺れても揺れとは感じなくなりました(笑) |
おぉ!P-1だ!哨戒機P-3Cの後継機で、観艦式初登場のP-1です。海自で30年以上に渡って活躍しているP-3Cも老朽化で2009年から古い機体の退役が始まっており、その穴を埋めるべくおととしから配備が始まった期待の最新鋭機です。 P-3Cが米国・ロッキード社製であるのに対し、我が国の航空機関連企業の技術の粋を集めて独自開発した完全国産機です。さらにP-3Cとの大きな違いは、ターボプロップエンジンを用いたプロペラ機機から、ターボファンエンジン搭載のジェット機となったこと。それによって精悍かつ近代的な外観となっています。現在9機が配備されており、将来的には70機程度が配備されて、P-3CはすべてこのP-1に置き換えられます。日本の航空産業界は、単独でこれほどの哨戒機を造る技術を有しているのです。 |
陸自の輸送ヘリ・CH-47Jが飛来してきました。人員移送のみならず中型火砲や大型車両の空輸が可能で、そのマルチな能力を生かして災害派遣でも活躍しています。甲板上に陸自車両を積載した「おおすみ」との組み合わせは、“中華な大国”の覇権主義的海洋進出によって奪われた島嶼部を奪還する作戦中の一コマみたいな雰囲気になりました。 現在、陸自は島嶼部を外国軍によって不法に占拠された際に、それを奪還する作戦を主任務とする水陸機動団の創設を目指して準備を進めていますが、部隊が誕生すれば「おおすみ」型輸送艦と装備・人員輸送等で密接に連携することになります。新型DDH「いずも」が大きな注目を浴びていますが、今後動向が最も注目される艦は、この「おおすみ」型輸送艦だと私は考えています。 |
なんだか変な形をした機体が1機、やって来ました。これが日本で最も有名(?)な航空機、米海兵隊所属のMV-22オスプレイです。 いやぁ~、見れば見るほど変な形です(笑) テスト飛行や部隊配備直後に立て続けに事故を起こしたために“危険な航空機”との認識が広がり、“左側の人々”が沖縄への配備を強硬に反対したために、日本での知名度は他の軍用機の追随を許さぬほど高いものがあります。一説には、世界で最もオスプレイのプラモデルが売れているのが日本なのだとか。 考えてみれば新型の航空機で不具合が噴出するのは恒例行事みたいなもので、ボーイング787でも多数の不具合が出て運航休止に追い込まれています。オスプレイだけが不具合が多く、危険な航空機であるかのような報道には、今さらながら疑問を感じます。 |
航空機への観閲が終了した午後12時31分、二列の隊列となって西へ向かっていた艦隊は、180度ターン(=反転)します。 まずは「あすか」を先頭に航行している観閲付属部隊の隊列が観閲部隊との距離が1500ヤードになるまで離れます。続いて先導艦「むらさめ」が左に転舵して反転したのを皮切りに、変針点に達した艦が順次反転します。、大きさも性能も異なる各艦が、前方の艦が海面に残した航跡をトレースするように同じコースを辿るとともに、間隔・速力は維持したまま艦の進行方向を180度変えるのです。 前レポの受閲部隊反転の際にも述べましたが、これは非常に高度な艦隊運動であり、並みの海軍ではこのような芸当はできません。帝国海軍以来、艦隊運動を重視して猛訓練に励む海自だからこそ可能な技であり、高い練度の象徴でもあります。 |
本日の事前公開1が最初の予行練習なので、反転の際にはみ出したり間隔を保てない艦が現れるかと思いきや、各艦は粛々と隊列を乱すことなく美しく反転していきます。 観閲艦「くらま」も反転を終えて東に進路を取ります。本番当日には、この「くらま」や「むらさめ」に各国の駐在武官が乗艦すると思われますが、富士山を背景に大艦隊が反転する光景を見て欲しいものです。これぞジャパニーズネイビーの晴れ姿です。果たして、観艦式本番日には富士山は姿を現してくれるでしょうか。 「しらね」の退役によって「くらま」1隻のみとなった従来型のDDHですが、旧式ながらも力強い艦容は観閲艦にふさわしいといえます。 |
「ちょうかい」が反転終了、後続している「あたご」も舵を切って反転します。イージス艦が2隻続いて反転するなんて素敵すぎます!しかも、「あたご」と「ちょうかい」という高雄型重巡2番艦と3番艦の名を受け継いだ2隻の競演は観艦式ならではの贅沢な光景です。 高雄型重巡の「愛宕」と「鳥海」ですが、近代化改装を実施した「愛宕」に対して、「鳥海」は近代化改装を施さぬまま太平洋戦争に突入したため、両艦は良く似ているものの随所に違いがありました。一方、イージス艦の「あたご」と「ちょうかい」も良く似ているものの、「あたご」の方が改良型でマスト形状の変更や格納庫の有無など、「ちょうかい」とは随所で違いがあります。帝国海軍の時代がら70年余りが経過した今日においても「あたご」と「ちょうかい」の関係が海軍時代と同じであることに歴史の面白さを感じます。 |
我が「ぶんご」も反転終了、ほどなく祝砲を撃ちながら「しまかぜ」が航行してきました。「しまかぜ」は観閲艦「くらま」の艦橋露天部に立つ観閲官から60度の角度に達した時に射撃を開始、35秒間隔で51番砲と52番砲を交互に撃ち、合計8発の祝砲を射撃します。 今回の祝砲射撃は「しまかぜ」1隻のみで行われるため、海幕の担当者が「艦が少ないなら射撃数を多くしよう」と考えたのか、3年前の前回よりも射撃数が3発多くなっています。とはいえ、隊列の最後尾にいる「ぶんご」に近づいた際には最後(8発目)の射撃になっており、やや距離が離れていたこともあって、残念ながら射撃の瞬間を撮影することはできませんでした…。 それにしても、祝砲担当艦が「しまかぜ」1隻だけなんて…祝砲射撃が可能な5インチ砲搭載艦が減ったとはいえ寂しいですねぇ。 |
左舷前方を航行する隊列に目を移すと、なんだかカオスな状況になっているではありませんか。この状況を説明すると、観閲部隊の隊列の左舷側で「おおなみ」「きりさめ」「さみだれ」の3隻が戦術運動を披露しているのです。ただでさえ地味な展示が、遠く離れている「ぶんご」からは全く分からず、単に3隻の護衛艦が変な動きをしている程度にしか見えません。近くで見たら違う印象なのでしょうけど… 訓練展示は観閲艦に乗っている観閲官やお客様に見せることを念頭に置いているので、基本的に観閲艦から良く見える場所で実施されます。逆に言えば、いま乗っている「ぶんご」など受閲部隊の艦では展示は見にくいということになります。展示の撮影をメインに考えている場合は、観閲部隊か付属部隊の艦に乗らないと「遠くて見えない!」ということになりますのでご注意を。 |
続いては潜水艦による潜航と浮上です。「ずいりゅう」は潜航をせずにセイルパス、「こくりゅう」「うずしお」の2隻が潜航と浮上を実施しました。しかしながら、2隻が潜航・浮上するのは観閲艦の前後で、「ぶんご」に接近した際には単なるセイルパスになっていました。私は受閲部隊の艦である「ぶんご」からは展示はよく見えないと分かった上で乗っていますが、そうとは知らなかった多くの乗艦者は「見えない!」とか「もう終わっているじゃないか!」などといたくご立腹の様子でした。乗艦できているだけでもよしとしなさい! かつては涙滴型の潜水艦が急速潜航・急速浮上(ドルフィン運動)を派手に披露していましたが、現行の「そうりゅう」型と「おやしお」型がそれを行うと、搭載した精密機器が壊れる恐れがあるため、前回の観艦式からは通常の潜航と浮上が行われています。 |
派手に海水を吹き上げながら2隻のLCACが爆走していきます。 観閲部隊の左舷側150ヤードの位置を反航した2隻はUターンしたのち、今度は観閲部隊と付属部隊の隊列の間を速力35ノットで駆け抜けます。推進用のプロペラの音が凄まじく、吹き上げた海水は「ぶんご」艦上にまで降り注ぐほどの勢いです。 私の地元で運航されていた旅客用ホバークラフト(大分ホーバーフェリー)は少し海が荒れると頻繁に運休していましたが、このLCACは過去の観艦式では荒れた海でも展示を中止することなく、うねりに抗うかのような爆走を披露しています。さすがです。 このLCAC、当初は「おおすみ」型輸送艦の艦載艇という扱いでしたが、現在は小型ながらもれっきとした自衛艦となっています。今後、島嶼防衛でその特性と能力を発揮することが期待されます。 |
LCACに負けじとミサイル艇が駆け抜けます。画像では穏やかに見える海面ですが、実はかなりのうねりがあり、加えて帽子が飛ばされそうになる程の強風も吹いているので、吹き上げる波しぶきの量が半端じゃないです。それがミサイル艇の魅力でもありますが…。 ちなみに、3隻のミサイル艇はIRデコイを発射・炸裂させたのちに艦隊の傍を駆け抜けて行くのですが…もうお分かりですね、「ぶんご」からはIRデコイ炸裂の様子はまったく見えませんでした(苦笑)うねりが強い中を高速航行しているため、船体が上下左右に揺さぶられています。かつてミサイル艇を見学した際に説明役をしていたミサイル艇隊司令が、「シートベルトをしていないと、天井に頭をぶつけます」と言っていたことを思い出しました。どれだけ強烈に揺れるのか、ぜひ一度乗艦して体験してみたいものです。 |
展示のラストは空自・ブルーインパルスによる飛行展示です。 実はこの前にP-3Cによる対潜爆弾の投下とP-1によるIRフレア発射があったのですが、残念ながら両方とも見えませんでした(涙) ブルーインパルスの6機編隊は艦隊の右舷方向から飛来、約10分間に渡って5つの課目(本番日は8課目)を披露しました。他の展示と同様、この飛行展示も観閲艦「くらま」を基準に(=「くらま」からよく見えるように)行われるので、「ぶんご」からは見づらかったです。 唯一、よく見えたのが画像の課目、「サクラ」です。6機が直径500mの円を描いて桜の花を形づくります。一見、1964年の東京オリンピックの際にF-86によって描かれた五輪マークに見え、あの伝説の課目の再現か!と思いましたが、これは桜の花でした。ただ、艦上の見学者の多くは五輪マークと思っていたようですが…。 |
快晴の青空にスモークによって描かれた意匠は、残念ながらすぐに消えてしまいます。「サクラ」を艦隊込みで撮影した時には、ご覧のようにスモークが薄くなって消える寸前でした。 調べてみると、ブルーインパルスの観艦式参加は1973年以来42年ぶりとなります。今回なぜブルーインパルスが参加したのかは分かりませんが、飛行展示によって従来の観艦式で実施されてきた洋上補給や飛行艇の着水、ヘリの発艦といったお馴染みの展示が無くなってしまったのが残念でなりません。 航空機が好きな人ならばブルーインパルスの展示が見れて万々歳なのでしょうが、艦艇一本槍の私にとっては、「そんなもの航空観閲式でやってろ!」というのが本音です。ブルーの展示よりも洋上補給や飛行艇の着水が見たかったです。 |
午後1時25分、すべての展示が終了しました。これから観艦式参加艦艇は全艦帰路に就きます。浦賀水道航路の通過や港への入港順序、さらにはVIPの優先帰投といった様々な条件があるために、艦隊はこれから帰投用の隊列を形成します。VIPや招待客を早くお返しするために、観閲艦・先導艦、招待客を多く乗せた観閲部隊の艦(「うらが」など)が隊列の前方を占め、観閲・付属部隊でも一般人が多い艦や、受閲部隊の艦は基本的に後回し(=隊列の後方)となります。ここでも“観艦式カースト”が発動されてしまうのです(笑) 船越を出港して5時間あまり、強風とうねりによる揺れに耐えるために、全身に力を入れて踏ん張り続けていたのですが、その状態が5時間以上も続いたとあって腰が強烈に痛くなってきました…。 |
「ぶんご」の真横を「ましゅう」が航行しています。今回は洋上補給がないので観閲終了後に海域を離脱して一足早く帰路に就いていると思いきや、ちゃんと海域にとどまっていたようです。つくづく、展示でこの巨大補給艦を使わないのは惜しいと思いました。 自衛艦旗と絡めて「ましゅう」を撮影したのですが、旗のはためき具合からいかに風が強いかがお分かりいただけると思います。 艦内スピーカから「くらま」乗艦中の自衛艦隊司令官・重岡海将の挨拶が流れてきました。簡単に要約しますと、「東シナ海等の周辺海域で軍事力を強化する国に対して海上自衛隊は監視等の適切な処置と活動を行っており、観艦式を通してその一端をご理解し、合わせてご声援を頂ければ幸いです」といった内容でした。もちろん、甲板上の見学者からは暖かい拍手が贈られていました。 |
隊列の前方を航行していた観閲艦「くらま」が何故か「ぶんご」と反航し、「ぶんご」の後方で進路を南に取って航行しはじめました。 「何しているの?」と思ったのも束の間、その疑問はすぐに解けました。「くらま」にヘリコプターが接近してきたのです。そう、「くらま」は観閲官を移送するためのヘリを収容するために、風に向かって航行する必要があるため、他艦との衝突を避けるべく「ぶんご」の後方まで移動して、風に立つ進路を取ったのです。観艦式当日は風向きが今日とは違うでしょうから、この光景もとても貴重です。 「くらま」に着艦しようとしているヘリですが、よく見るとMCH-101ではないですか。これまでの観艦式ではHSS-2BやSH-60系が観閲官移送の任務を担ってきましが、ここにも新型器材導入による世代交代の波が押し寄せているようです。 |
「ぶんご」が「とね」を追い抜きます。「とね」は隊列の最後尾に占位すべく速力を落として航行し、他艦を前方へ先行させます。 実は私、3日後の事前公開2でこの「とね」に乗艦します。船体が小さいが故にうねりで相当揺れていますし、艦が隊列の最後尾に占位するということは入港が最も遅くなるわけで、どうやらこの艦に乗るには相当な忍耐力が必要なようです。 「とね」の背後に見える陸地は房総半島です。晴天の場合、観艦式の往路と復路で良く見えるために興味を抱き、式終了後に地図を見て調べることから、九州在住なのに房総半島に詳しくなりました。見えている陸地ですが、第21航空群が所在する館山基地がある館山市か、その隣の南房総市辺りと思われます。ちなみに私、房総半島は木更津までしか行ったことがありません。 |
さらにしばらく進むと、今度は「おおなみ」が反航して来ました。さらに「おおなみ」の左舷側遠方には「しまかぜ」もいます。この2隻は訓練展示終了後に「ぶんご」のかなり前を航行していたのですが、「ぶんご」の後ろに占位するために房総半島沖でしばらく待機して、「ぶんご」がやって来るのを待っていたようです。2隻はこのあと隊列に合流し、「ぶんご」に後続することになります。 それにしてもこの2隻、「とね」のようにゆっくり航行しながら「ぶんご」の通過を待てばいいのに、進路から大きく外れて房総半島沖を漂い、さらに「おおなみ」に至っては「ぶんご」の到着が待ちきれないとばかりに、反航して来て反転して後続という手の込んだ合流をしています。どうしてこんな形の合流をしたのでしょうか?今日は予行練習なので合流方法を試していたのかもしれません。 |
「しらゆき」が「ぶんご」を追い抜いて行きます。おゃ?「しらゆき」は前方を航行していたはずだし、船越岸壁には「うらが」の次に接岸する艦なので、この時間にこんな場所を航行していてはいけないのですが…どうしてでしょう?
その疑問に「ぶんご」艦上で偶然出会ったマニア仲間のMさんが答えてくれました。「『しらゆき』で急病患者が発生し、ヘリで搬送されたそうです」。 艦内で病気を発症した70歳代の男性をヘリで搬送することになり、「しらゆき」は先ほどの「くらま」同様に進路から外れてヘリを発着艦させていたため、この時刻にこんな場所を航行しているのです。先ほどから「ぶんご」の速力が遅いのが気になっていたのですが、「しらゆき」を先行させるためだったのですね。体力の消耗が激しい観艦式に高齢者を乗せるのは再考すべきではないでしょうか。 |
間もなく浦賀水道航路に入ります。ここを通過する船舶は一列にならなければならないので、同じタイミングで水道を通過する民間の船舶がいると、ご覧のように灰色の艦船の中に色鮮やかな民間船が混じることになります。こうして見ると民間船を海自艦が護衛して航行しているシーレーン防衛を彷彿とさせる光景です。 逆に、この民間船の船長や乗組員は前後を数多くの海自艦に囲まれてどんな気分なのでしょうねぇ?もし観艦式の実施を知らないようなら、「いったい何事が起ったのか!」と驚いていることでしょう。 船越を出港して既に7時間あまり、甲板上の乗艦者はみなさんぐったりしたご様子で、撮影をしているのは私とMさんのみ。ただ、こんな風な面白い光景が現れるので撮影を止められないんですよねぇ。私にとっては艦を降りるまでが観艦式なのです。 |
横須賀まであと少しの地点まで戻ってきました。浦賀水道に入る前からずっと「ぶんご」の直後を航行していた「おおなみ」が吉倉桟橋に戻るために「ぶんご」から離れていきます。3日後にお会いしましょう!時刻は午後4時20分、夕日が「おおなみ」を照らして哀愁漂ういい雰囲気になっています。艦艇は光の当たり具合で、人間と同様に様々な表情を見せてくれるのも魅力のひとつといえます。 こうして見ると、上甲板に装備されたOTOメララ製127ミリ砲が目立ちます。前タイプの「むらさめ」型はほぼ同じ船体と艦型で76ミリ砲を装備していますが、「なみ」型で127ミリ砲に換装されたことで、艦の大きさと砲の大きさのバランスがとれて、艦全体が力強く重厚な印象になりました。逆に、マニアの中には76ミリ砲の方がバランスがとれているという人もいます。これはもう好みの問題ですね。 |
さらに後方を航行していた「しまかぜ」も隊列から離脱します。彼女は今回の観艦式で拠点としている横須賀新港へと戻ります。 今回1隻のみで祝砲射撃を担当する「しまかぜ」ですが、前回の観艦式本番で姉の「はたかぜ」がやってしまった失敗を起こさぬよう頑張って欲しいものです。「はたかぜ」の失敗は3年前のレポをご覧ください。 遠くから見ても船体中央部にある図太い煙突が目を引きます。これはガスタービン4基の排気筒を1本の煙突としてまとめたために、ご覧のような巨大な煙突となりました。 「はたかぜ」型はイージス艦の陰に隠れた地味な存在となってしまっていますが、巨大な煙突のほかに前甲板に装備されたSAM発射機や、これを波浪から守るための艦首ブルワークなど特徴が多く、コアなマニアに人気がある玄人好みの艦といえます。 |
船越はもう目の前だというのに「ぶんご」は超ノロノロ航行で、なかなか前には進みません。これは「しらゆき」が予定よりも大幅に遅れて帰港したために船越への接岸が遅れ、「しらゆき」の後に接岸する艦も入港時刻が大幅にずれ込んでいるためです。「ぶんご」は接岸可能な状況になるまで、このノロノロ航行を続ける模様です。 イラつく乗艦者の気持ちを和らげるためか、はたまた当初から予定していたのか、出港時と同様に後部甲板に大湊音楽隊の皆さんが登場し、演奏を披露してくれました。 素敵な演奏で艦が進まない退屈さを紛らわせてくれましたが、船越が目前に迫った時に演奏が始まった曲は「津軽海峡 冬景色」(笑) 大湊音楽隊らしい選曲ではありますが、間もなく艦が接岸するタイミングと曲がマッチして、艦上はとてもいい雰囲気になりました。 |
艦上で「津軽海峡
冬景色」が流れる「ぶんご」は、ようやく船越に戻ってきました。招待客専用艦である「うらが」はとっくに接岸を終え、甲板上には乗艦者の姿はまったくありません。一方、「うらが」の後方では「てんりゅう」が大急ぎで接舷作業を行っています。「しらゆき」の入港・接岸が大幅に遅れたために、目刺しで留める「てんりゅう」は今ようやく作業に取り掛かったのです。 現在の時刻は午後5時10分、ちょうど日没となり、「うらが」では自衛艦旗の降納が行われています。もう、そんな時刻なのですねぇ。 乗艦券に記されていた入港予定時刻より30分以上遅れています。海自艦の入港とは舫が岸壁に繋がれた時刻を指すので、「ぶんご」は舫が掛かるまであと20~30分程度はかかりそうなので、結局は入港予定時刻より1時間程度遅れることになりそうです。 |
午後5時40分、接岸作業が終了し下艦が可能な状況にはなったのですが、何しろ850人もの乗艦者がいるのですから、そう簡単には艦を降りることはできません。岸壁への桟橋は1人づつしか通れませんので、ご覧のとおりの長蛇の列ができてしまってます。 仕方ない、しばらく待つか! それにしても、よくもこれだけ多くの乗艦者を乗せたものです。あれだけ乗艦券が入手できずに苦しんだのに、艦に乗ってみるとこんなにも乗艦券を入手できた人(=乗艦者)がいるのですから、いかに応募が殺到して抽選倍率が高かったのかが分かります。 願わくば、3年後の次回観艦式の時には、この得体の知れない海自人気が終息していて欲しいものです。私のHP運営も、従来の理解の拡大から次の段階に入る必要があるのではと痛感しました。 |
意外や意外、下艦の順番待ちの間にもシャッターチャンスが訪れます。観閲付属部隊を構成する一隻である「あぶくま」が入港してきたのです。既に日は落ち、辺りはかなり暗くなっていますが、カメラのISO感度を上げて撮影を敢行します。 「あぶくま」型DEは「ゆき」型DDと同程度の兵装を有してはいるものの非常にシンプルな艦容をしていますが、この角度から見ると、とても精悍でバランスの良い格好良さを感じます。また長らくDEの建造が途絶えていることから、現役海自艦で唯一この型が背負う200番台の艦番号も渋くて素敵です♪主砲と艦橋構造物の間に妙なスペースがあります。そこはSAM発射機の設置予定スペースなのですが、就役後に設置という予定がいつの間にか沙汰止みとなってしまっています。 |
続いて「とね」が入港して来ました。この艦が乗艦者を乗せている艦としては最後の入港となります。カメラのISO感度を目いっぱい上げて撮影しているので画像はまだ明るいように見えますが、実際は既に真っ暗な状況で、肉眼ではマストや構造物の所々に灯されている燈火しかみえません。シャッター速度も1/4秒しか稼げません。 ですから、せっかくのシャッターチャンスにも関わらず、撮影したほとんどの画像がブレまくっていました…(涙) 私は3日後の事前公開2でこの「とね」に乗るのですが、「とね」でも長時間の航海と撮影が楽しめそうです(苦笑) 観閲付属部隊の艦なので訓練展示が良く見えると思われますので、きょうの「ぶんご」では撮影することができなかった祝砲射撃や対潜爆弾、IRフレアなどを撮ることができればいいなと、否応なしに期待が膨らみます。 |
下艦開始から約40分後、ようやく「ぶんご」から降りることができました。40分待ったとはいえ、その間に「とね」や海面警戒部隊の艦が戻ってきたりしたので退屈はしませんでしたけどね。艦から降りる際に、乗艦時に受け取ったパスケースを返却しましょう。その際、隊員さんや事務官さんに「ありがとうございました」「お世話になりました」等の感謝の気持ちを忘れずに伝えてください。 現在時刻は午後6時20分、朝に「ぶんご」に乗り込んだのが午前6時40分頃だったので、約12時間も乗艦していたことになります。全然疲れを感じていない…と言いたいところですが、強風と波浪で揺れる艦上で踏ん張り続けていたことで、腰と脚が強烈に痛いです。 でも、その痛みが何だか心地よく感じるのは、そのだけきょうの事前公開が大満足の1日だったということなのでしょうね。 |