佐世保シーサイドフェスティバル2011


舞鶴地方隊展示訓練の興奮も冷めやらぬ8月6日、3年ぶりに佐世保シーサイドフェスティバルに遠征しました。

舞鶴地方隊展示訓練でのミサイル艇の爆走にすっかり魅了されてしまった私。その興奮も冷めやらぬ2週間後の8月6日、佐世保市で開催されたシーサイドフェスティバルに遠征しました。
当初はヨコスカサマーフェスタに遠征する予定でしたが、ミサイル艇に心を奪われてしまった私は当然のように、ミサイル艇の公開が行われる佐世保に向かったのでした。

公開されるのは佐世保の第3ミサイル艇隊に所属する「しらたか」(PG829)です。「はやぶさ」型ミサイル艇の6番艇(最終艇)で、2004年3月に就役しました。
佐世保の第3ミサイル艇隊は、この「しらたか」と3番艇の「おおたか」で編成されています。
「ミサイル艇ってどんなフネなんだろぉ〜♪」と心を弾ませながら乗艦。まずは前甲板の主砲に目を奪われました。
主砲は62口径72mm速射砲で、1分間で100発の射撃が可能です。砲のシールドが角張っているのはステルス性を考慮しての形状です。この砲、小型のミサイル艇において異様なほどの大きさと迫力を誇っています。
前タイプの「1号」型ミサイル艇の主砲が20mm機関砲だったことを考えると、打撃力が格段にアップしたことになります。

艦橋構造部の上部にある丸いお皿のよう物は射撃指揮装置2型で、この装置が精密な照準を実施して72mm速射砲を正確な弾着に導きます。
前甲板から艦橋構造物内に入りました。小型の艇なので通路もご覧のようにかなり狭いです。

右側の扉は士官室、左側の扉は艇長室です。残念ながら双方とも公開されていなかったのですが、雑誌に載っている写真を見ると、士官室はテーブルとイスがあるだけの休憩室といった雰囲気で、4〜5人で満室となるほどの狭さです。ちなみに「はやぶさ」型ミサイル艇に配置される幹部は艇長を含めて4人なので、そのような広さでも問題はなさそうです。
幹部以外には14人の海曹が乗り組んでおり、艇の総員は18人です。海士がいないのは、1人が2〜3役もの仕事をこなさなければならないので、経験豊かな海曹が配置されているためです。
艇長室の入口の横にはご覧のようなプレートがあります。「艇長(司令)室」という不思議な表記です。

実は「はやぶさ」型は艇内が狭いために司令室がありません
司令が座乗している際、艇長は部屋を明け渡して艇長室が司令室になります。なのでこのような表記になっているのです。艦橋右舷側の艦長席(艇長席)は、司令どころか海幕長が乗艦しても決して譲ることがないのとは対象的です。

ちなみに、司令に部屋を譲った艇長はどうするかというと、士官室を艇長室代わりに使用します。ミサイル艇は小型であるゆえに護衛艦では考えられないような苦労があるんですねぇ…。
艦橋に上がりました。うわぁ〜!カッコいい!!

艦橋というよりもコクピットといった雰囲気。航空機のコクピット同様のあからさまなカッコ良さを感じます。
去年の夏、四日市港で特務艇「はしだて」のユニークな艦橋を見て衝撃を受けましたが、今回はそれ以上の衝撃です。この心の高鳴りは、子供の頃に多くの計器や無数のスイッチが並ぶジェット機の操縦席の写真を見てワクワクした感覚に近いです。この艦橋を見てカッコいいと思わない男子はいないと思います(笑)

高速航行時には猛烈に揺れるため、艦橋で勤務する者はイスに座っての作業となります。イスは前方に5脚、後方に3脚あり、すべてに5点支持のシートベルトが備え付けられています。
操舵輪は航空機の操縦桿のような形状をしています。「はやぶさ」型では初期の艇の操舵輪は自動車のハンドルような円形ですが、後期の艇からこの形状に変更されています。

隣のレバーが並んでいる席は出力担当者の席です。「はやぶさ」型では、操舵員と出力担当者が二人一組で操舵と機関出力という艇の制御を担当します。海上を猛烈な速力で爆走するミサイル艇は、ここに座る乗組員によって自在に操られている訳です。

5点支持のシートベルトで座席に固定されるとはいえ、高速走行時の激しい揺れの中で艇を正確に制御するのはとても大変なのではないでしょうか…。
ジャイロコンパスの前にもイスが備えられています。艇長のほか航海長や当直士官といった航海指揮官も、このイスに座って操艦にあたります。
艦長席と司令席以外はイスがない護衛艦の艦橋を見慣れていると、「はやぶさ」型のこの光景はとても新鮮というか不思議な感覚に包まれます。

「はやぶさ」型の幹部は艇長のほか砲雷長船務長兼航海長機関長がいますが、人数が少ないため機関長も当直士官としてこのジャイロコンパスの前のイスに座ります。機関操縦室が定位置である機関長が当直士官として操艦を担当するなんて、これまた護衛艦では考えられない事です。1人が2役・3役をこなす必要がある「はやぶさ」型ならではの勤務形態といえます。
艇長席です。ただでなくてもカッコいい赤青二色の艇長席は、スパルタンな雰囲気の艦橋の中でもよく映えて、より一層カッコ良さが増しているようにも感じます(笑)

ミサイル艇の艇長は三佐が配置されます。数人の艇長の前職を調べたところ、護衛艦で船務長や砲雷長として副長に次ぐ3の位置にいる幹部が次の異動で艇長を拝命するという事例が多いようです。
一方、ミサイル艇隊司令は二佐の配置で、小型艦の艦長経験者が多いようです。ミサイル艇隊の司令を務めあげた後は、数年以内に「きり」型や「あめ」型といった艦隊の中核を担う護衛艦の艦長を拝命するようです。艇長や司令としてミサイル艇を指揮してみたい…そんな妄想に駆られました(笑)
ミサイル艇がミサイル艇たる所以がこれ。90式艦対艦誘導ミサイルSSM-1Bです。
レーダーホーミングによる誘導で150〜200kmの長距離射程を誇ります。元々は日本近海に迫り来る敵輸送船団に打撃を加えることを目的に装備化された兵装です。「はやぶさ」型では2基セットを二つ、合計4基を装備しています。「はやぶさ」型のほか、「むらさめ」型・「たかなみ」型・「あたご」型にも装備されています。

前甲板の76mm速射砲とこの対艦ミサイルから、「はやぶさ」型がいかに水上打撃力を重視した艇であるかがうかがえます。
小さな「はやぶさ」型が後甲板に対艦ミサイルを備えている姿は、武士が太刀を背中に背負っているような勇ましさを感じます。
「しらたか」を真後ろからみたところ。
艇尾にある3基のウォータジェット推進機が、艇を40ノット(時速約80km)の高速にまで導きます。推進機は軸出力5400馬力を発揮するガスタービンエンジンと直結していて、ノズルの向きを変えることによって艇の進行方向を変えます。

強大な水上打撃力と高速を誇る「はやぶさ」型は、1999年に発生した能登半島沖不審船事件の教訓を取り入れて設計された海のスクランブラーです。艇長以下の全乗組員は防衛出動や海上警備行動に備えたスクランブル体制下にあり、勤務時間が終了しても2時間以内に艇に戻れる範囲で生活しなければなりません。大変な任務ですが、乗組員の方々には最前線の海の防人として頑張って欲しいと思います。
「しらたか」の見学を終えたあと、海自倉島岸壁の対岸にある埠頭に向かいました。
私が「しらたか」を見学している間に体験航海で倉島岸壁を出港した「いそゆき」「はるゆき」が戻ってくるのです。両艦の航行シーンと入港シーンを撮影しようと目論んだ訳です。

ところが、岸壁に着くと起重機船が接岸しており視界を遮っているではありませんか!この夜、シーサイドフェスティバルの目玉である花火をこの起重機船から打ち上げることになっていて、その準備のために接岸しているようです。
「この船に乗れば最高の撮影ポイントになるなぁ」と思っていたら、それが顔に出ていたのか、船員さんが「乗って撮影していいよ」と言ってくれました。ご配慮、ありがとうございます!!
起重機船の甲板で待つこと約10分あまり。「いそゆき」の姿が見えました。甲板上には大勢の見学者が乗艦しています。

佐世保地方総監部は、佐世保シーサイドフェスティバルに合わせて「ちびっ子ヤング大会」と銘打って体験航海や艦艇公開を実施してフェスティバルの盛り上げに一役買っています。まさに海自と地域が一体となっているわけです。
最新鋭艦が停泊する立神桟橋が米海軍基地内にあることから、艦艇の撮影が難しい佐世保ですが、「ゆき」型や掃海艇は海自固有の岸壁である倉島岸壁に停泊します。倉島岸壁は撮影しやすいロケーションなので、佐世保での艦船撮影はどうしても「ゆき」型や掃海艇が中心となってしまいます。地元のマニアは通な撮影ポイントをご存知のようですが…。
「いそゆき」が倉橋岸壁に近づいてきました。絶好の撮影チャンスです!乗船を許可してくれた船員さんに感謝しつつシャッターを切りました(笑)

「いそゆき」は「ゆき」型DDの6番艦で、1985年に就役しました。現在は佐世保配備の第13護衛隊、その前は佐世保地方隊第23護衛隊に所属し、まさに佐世保に根をおろした艦というイメージが強い「いそゆき」ですが、「はるゆき」とともにかつては横須賀の艦で、4護群の呉移転時に呉に転籍、さらに「いなづま」「さみだれ」の就役に伴って佐世保に転出しました。
艦齢が26年にも達するお婆さんではありますが、母港や所属部隊の変遷を経たベテラン艦は風格と味わい深さを感じます
曳船(YT)が「いそゆき」を押して艦の向きを180度変えます。肉眼ではあまり感じなかったのですが、画像で見ると曳船に押されている時の艦はかなり傾いているのですねぇ。
何度も言っている事ですが…「ゆき」型の艦後部のごちゃごちゃした形状はとても素敵です♪

「いそゆき」の後ろ姿に萌えながら夢中で撮影していると、隣にいた船員さんが、「ワシらは護衛艦がいる光景が当たり前のように感じているけど、他県から来た人には珍しいんやなぁ」と呟いていました。艦艇の出入港を毎日見ている地元の人にとってはそんなものかもしれませんね。私にとってはとても羨ましい状況ですけど…。
「いそゆき」に遅れること15分、「はるゆき」が入港してきました。「ゆき」型DDの7番艦で、「いそゆき」と同じ1985年の就役です。

「いそゆき」がIHI東京工場で産声を上げたのに対し、「はるゆき」はのちにIHIと経営統合する住友重機浦賀工場で生まれました。また、「はるゆき」は人生の全ての期間を「いそゆき」と同じ母港・部隊に所属しており、これらのことから「いそゆき」と「はるゆき」は仲の良い双子の姉妹と言えるでしょう。
第13護衛隊を構成するもう1隻の「ゆき」型である「あさゆき」がドック入りしているため、今年の夏はこの双子の姉妹が九州各地の港で広報活動に活躍しました。「いそ」「はる」姉妹が今後も仲良く活躍することを願わずにはいられません。
「いそゆき」「はるゆき」姉妹の撮影を終え、最初に「しらたか」を見学した三浦岸壁に戻ってきました。
次に見学するのは掃海艇「やくしま」(MSC602)です。

最新鋭掃海艇「ひらしま」型の2番艇で、2009年に就役しました。
「ひらしま」型は前タイプ「すがしま」型の拡大・発展型で、煙突が2本から1本に改められ、排水量が60t増加しています。3番艇までが就役していますが、船体にFRP(繊維強化プラスチック)を採用した「えのしま」型の建造が始まったことから、3隻のみの調達に終わりました。美しい木目を見ることができる木造掃海艇は本級が最後になってしまいました。
個人的には掃海艇は木造の方が味わい深いと思うのですが…。
「やくしま」の艦橋です。
掃海艇の艦橋と言えば「狭い」というイメージがあるのですが、「ひらしま」型はそんなイメージが当てはまらないくらいの十分な広さがあります。また、最新鋭の掃海艇とあって最新の航海用機器が備わっています。前タイプ「すがしま」型と比べても広さ、装備品ともに格段に充実しています。

1991年にペルシャ湾に掃海派遣された「はつしま」型を知っている者としては、「掃海艇もここまで進化したか」との想いを抱かずにはいられませんでした。実際、海自の掃海艇はペルシャ湾派遣以降、その教訓を取り入れて飛躍的な進化と高性能化を遂げています。これだけの掃海艇があれば、もし仮にペルシャ湾派遣のような事があっても余裕を持って対応できそうです。
艇長室が公開されていました。
机や本棚、ベッド等にふんだんに使われた木材が暖かな雰囲気を醸し出しています。護衛艦の艦長室の雰囲気も素敵ですが、掃海艇の艇長室もとてもいい雰囲気で大好きです。

艇長室以外にも掃海艇内は木材が至る所に使用されています。これは機雷被害の原因となる磁気を発生させないためですが、船体がFRP製となる「えのしま」型でも艇内には木材が使用されるのでしょうかねぇ?
ちなみに掃海艇の磁気対策は徹底していて、造船所で艤装中に艤装員が磁石を持って艇内を回り磁石がくっ付く箇所がないかどうか細かく点検するということです。
最新型の機雷処分具であるS-10です。
機雷処分具S-7の後継として我が国が独自に開発した水中航走式中深度機雷処分具です。機雷を捜索・類別するためのアクティブソナー識別用テレビカメラを搭載しており、これらで機雷を探知後に係維索切断用カッター処分用爆雷を使って機雷を処理します。
ちなみに、前タイプの「すがしま」型では欧州製の処分具(PAP-104)が装備されていました。

我が国の防衛産業の雄・三菱重工で生産されていますが、艦艇を担当する船舶・海洋事業本部ではなく、なぜか航空宇宙事業本部管轄の製品となっています。
「やくしま」の見学を終えたあと、海自倉島岸壁へ。ここでは護衛艦「きりさめ」の一般公開が行われています。

「すずなみ」の大湊転籍&第3護衛隊へ編成換えという大ニュース(?)に隠れて目立ちませんでしたが、実はこの「きりさめ」も8月1日付けで第7護衛隊から第8護衛隊に異動しています。
このところ艦艇の転籍・編成換えのニュースが頻繁に飛び込んできますが、これは一昨年の護衛艦隊大改変で護衛隊内各艦の母港がバラバラになったのを是正しているためです。海自はここに来て「艦長の上司(隊司令)が同じ母港にいないのは不都合」と判断したようで、将来的には護衛隊内の艦艇は可能な限り同じ母港、分散は多くても2ヶ所とする方針のようです。
「きりさめ」の艦橋です。
本艦は去年7月の別府港での体験航海で撮影していますが、せっかくの機会なので見学者が途切れたタイミングを見計らって艦橋内を詳細に撮影させていただきました。
木材をふんだんに使った「やくしま」を見学した直後なので、木材が使用されていない「きりさめ」の艦橋が殺風景というか味気なく感じました(笑)

この艦橋内で佐世保在住のあさぴぃ氏に遭遇。おぉ!今シーズン初めて九州のマニア仲間と出会った!!
今シーズンは不思議なことに、これまでまったく九州在住のマニア仲間とお会いすることがありませんでした。その分、関西のマニアの方々との濃厚な交流が実現していますが…。
ヘリ格納庫にはソマリア沖アデン湾への派遣の模様を伝える写真と、功績を称えて内閣総理大臣から贈られた盾が飾られていました。
「さみだれ」は派遣海賊対処行動水上部隊の7次隊として、去年12月1日から今年5月9日まで、「ゆうだち」と共にソマリア沖アデン湾に派遣されました。約3ヶ月間で32回の護衛を実施、護衛船舶数は287隻にも達します。

写真の中には7次隊の指揮官である伊藤一佐(第7護衛隊司令)が写ったものもありました。去年7月の別府港での体験航海でお世話になった伊藤一佐。無事に任務を果たして帰国した今、再びお会いして派遣時の模様をぜひお聞きしたいと思いました。
「きりさめ」の舷側には潜水艦が接舷していました。「おやしお」型潜水艦7番艦「くろしお」です。

前回(3年前)、シーサイドフェスティバルに遠征した際にも潜水艦が来航しており、乗組員にイベントに合わせて佐世保に入港したのかと尋ねたのですが、「イベントとは関係なく、たまたま入港している」とのことでした。
この「くろしお」、私とは相性がいい潜水艦なのです。
5月のGWに呉に遠征し遊覧船上から潜水艦を撮影した際、「おやしお」型が軒並み出港して不在である中、この「くろしお」だけが潜水艦桟橋に停泊していました。さらにこの約1ヶ月半後、大阪湾での呉地方隊展示訓練で再会することになります。
「きりさめ」のヘリ甲板から「いそゆき」「はるゆき」の双子姉妹が停泊している様子が見えました。両艦とも体験航海を終えて一息ついているように見えます。いつの間にかお仲間の「じんつう」も戻って来ています。

3年ぶりに足を運んだ佐世保シーサイドフェスティバルは、念願だったミサイル艇の見学が実現したほか、最新鋭掃海艇の見学「いそ」「はる」双子姉妹の航行シーンを画像に収めるなど多くの収穫がありました。
同じ九州にいながら横須賀や呉に比べて訪れる機会が少ない佐世保ですが、鎮西の防人たちの姿も魅力的であることを再認識させられた一日でした。

ミサイル艇の艦橋に心が躍り、新型掃海艇の進化に驚く…久しぶりに訪れた佐世保シーフェスは楽しさ満載でした。