GW舞鶴遠征〜舞鶴航空基地編


舞鶴遠征レポの3回目は、ヘリコプター基地である舞鶴航空基地見学の模様をお送りします。
合わせて、舞鶴地方総監部など舞鶴市内に所在する海上自衛隊の関連施設をご紹介します。
皆さんご存知のとおり、私は飛行機やヘリコプターに殆ど興味がないのですが、土・日・祝日に舞鶴航空基地が公開を行っているということで、北吸岸壁を見学した後に足を延ばしてみました。

舞鶴航空基地は海上自衛隊で唯一日本海側にある航空基地で、2001年3月に完成した比較的新しい基地です。
基地には第23航空隊が所在し、哨戒ヘリコプター10機が配備されています。
かつては館山にあるヘリ部隊(第123航空隊)の舞鶴分遣隊という、いわば出先のような部隊でしたが、おととし3月に飛行隊、整備補給隊、基地隊から成る一人前の部隊に改編されました。
第23航空隊の庁舎です。

司令や幕僚が勤務する航空隊本部と、基地の管理や警備・管制・救難等を担う舞鶴航空基地隊が入居しています。
基地は海自で最も新しい航空基地であり、完成後まだ9年しか経っていないため、庁舎の建物もまだ新しくて綺麗です。

23航空隊は館山に司令部がある第21航空群の隷下部隊です。
所属のヘリコプターは、舞鶴を母港とする護衛艦の搭載ヘリとなるほか、日本海側における海上警備災害派遣任務にあたっています。
基地内には大きな格納庫が2棟あります。このうち手前の格納庫が公開されていました。
海自の航空基地は旧海軍の施設を引き継いでいる所が多いのですが、ここ舞鶴は用地取得から施設建設まで新たに一から作り上げられた基地です。

舞鶴航空基地がない時代には、ヘリコプターは舞鶴所属の護衛艦に乗るために館山から約500kmを2時間40分かけて飛んで来ていました。
ところが舞鶴周辺は冬場は天候が荒れるため、わざわざ館山から飛来しても悪天候で引き返すこともあったということです。
格納庫の内部。
すごく広い!巨大な体育館みたいな雰囲気です。
格納庫にはSH-60JSH-60Kが計6機格納されていました。

ヘリはこの格納庫内で整備を受けますが、整備を一手に担当するのが第231整備補給隊です。整備補給隊は整備補給班・航空機整備班・装備整備班・補給班の4つの班に分かれいます。

整備補給班は整備計画の立案を、航空機整備班は機体の整備を、装備整備班は搭載武器と装置の整備を、補給班は部品及び燃料の補給を担当しています。
支援部隊があってこそヘリの運用が可能となるのですね。
最新鋭の対潜哨戒ヘリコプター・SH-60Kです。

前タイプのSH-60Jを基に対潜戦・対水上戦能力の向上人員物資輸送能力の向上を図った改造開発機で、2005年3月に制式採用され同年8月から配備が始まりました。
現在、館山大村舞鶴厚木の4つの航空基地に配備されています。

舞鶴航空基地には去年9月に初めて配備され、順次老朽化したSH-60Jとの置き換えが進められています。
ちなみに今年度(H22年度)は海自に5機が納入される計画です。
こちらは前タイプのSH-60J。そのうちの1機が見学者に公開されていました。パイロットの方が説明をしてくれていました。

SH-60Jは1991年から配備が始まり、100機が生産されました。
長年対潜ヘリの主役の座に座っていましたが、老朽化により昨年あたりから急速に後継機SH-60Kとの置き換えが進んでいます。

電子機器を大量に搭載したため機内が狭いことや武装が貧弱といった泣き所を抱えた機です。
これらの欠点を解消し、さらに不審船対策大規模災害派遣といった多様化する任務に対応するため、この機体をベースにSH-60Kが開発されました。
SH-60Jのコクピットです。
一世代前の機体とはいえ、ずらりと計器やスイッチが並んだコクピットは痺れるほどのカッコ良さを感じてしまいます。

通常、航空機は左側が機長席で右側が副操縦士の席ですが、ヘリコプターは逆で、右側が機長席となっています。
後ろにはセンサーマンと呼ばれる航空士の席があります。

先に述べたとおりSH-60Jは機体内のスペースが狭いため乗員は3人ですが、SH-60Kではセンサーマンが2人搭乗し、操縦士と合わせて4人が搭乗します。また災害派遣や救難で出動する際には機上救護員が搭乗します。
SH-60KはSH-60Jをベースに開発された機体ですが、機体形状が変更されたほか、エンジンやローターは新型が採用され、レーダーや攻撃装備も飛躍的に改良されました。このため結果的には新規開発を行ったのに等しいくらいSH-60Jとは全く別の機体となりました。

SH-60Jはアメリカのシコルスキー・エアクラフト社製で、三菱重工業がライセンス生産をしていましたが、SH-60Kは三菱重工業が開発を行いました
三菱重工業と言えばあの零式艦上戦闘機(ゼロ戦)を生み出した会社です。SH-60Kにゼロ戦のスピリッツを感じてしまうのは私だけでしょうか…。
ヘリコプターの見学を終えて格納庫を出ると、消防車が放水のデモンストレーションをしていました。猛烈な勢いの放水に子供たちは大喜び!!

離発着の際における万一の事故に備えて、基地には消防車が配備されています。消防車の運用を行うのは舞鶴航空基地隊に所属する隊員たちです。

海上自衛隊は「海軍」ですが、消防車をはじめとする支援車両は航空自衛隊とほぼ同じものが配備されています。車体には錨のマークが描かれており、この場所が「海軍基地」であることを実感させてくれます。
基地内の正門に近い場所からは艦艇が停泊している光景を目にすることができます。

基地に隣接して舞鶴海上訓練指導隊があり、その敷地内にある小さな岸壁を輸送艦「のと」(奥)と水中処分母船1号(手前)が拠点としています。航空基地の敷地内から艦艇が見えるなんて海上自衛隊ならではです。
輸送艦「のと」は離島や沿岸僻地への人員・物資の輸送を任務としている小型の輸送艦です。
水中処分母船は水中の爆発物を処理する水中処分員を支援する船で、処分員用の居住施設や潜水病治療用の再圧タンク等を備えています。小さなフネですがまさに「母船」です。
航空基地を出た後、総監部や北吸岸壁に通じる坂道の頂上から基地の全景を撮影してみました。
ご覧のとおり、基地の眼前には美しい舞鶴湾が広がり周囲は山々に囲まれています

周囲を山に囲まれた航空基地(飛行場)って珍しいですよね

山があってヘリが離発着の際に進路をとりにくそうです。また山が入り組んでいると乱気流が発生しやすいので、その点でも操縦には苦労するのではないでしょうか。
舞鶴は冬場は天候が荒れることも加わって、舞鶴航空基地のパイロットは高い技量が求められそうです。
ここからは舞鶴にある海自施設をご紹介。
まずは舞鶴警備隊です。

警備隊と聞くと何だか小銃を持って戦う陸戦隊が配置されているイメージを持ってしまいます(私だけ?)
実際には陸戦隊はおらず、基地の警備(陸警隊)や艦船の出入港支援(港務隊)、爆発物の処理(水中処分隊)が任務です。

正門の門柱に注目!レンガ造りのレトロな門柱はもちろん旧海軍時代の遺産です。舞鶴鎮守府西門の門柱を移設したものです。
このように舞鶴は呉同様、旧海軍時代の空気が色濃く残っており、この点も遠征したくなる大きな理由です。
舞鶴教育隊です。舞鶴地方総監部や北吸岸壁のある場所からはかなり離れた場所にあります。

青地に白い文字と錨のマークが入った大きな看板が素敵ですが舞鶴にある全ての海自施設の入り口にはこの様式の看板が立っています。
この場所は旧海軍の舞鶴海兵団があった場所で、この正門は休日には舞鶴の市街地に外出する練習員らで賑わいます。

舞鶴海兵団時代にはキスカ撤収作戦の指揮を執った木村昌福少将が海兵団長を務めたことがありますし、現在は女性の比留間一佐が教育隊司令を務めています。
こちらは舞鶴造修補給所
造修補給所は艦船マニアにとってもあまり身近でない部隊ですが、艦船・部隊への物資補給(補給業務)と艦船・武器等の製造、改造、検査(造修業務)を担当しています。

造修補給所は総監部がある横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊の5ヶ所に置かれています。
とりわけ舞鶴は補給の教育を行う第4術科学校があり、地方総監に補給畑の人材が就くことが多いなど補給の総本山的な場所でもあります。
舞鶴地方総監部の正門です。
歴史を感じさせる重厚な造りの門柱は、言うまでもなく旧海軍時代の遺産です。

GWの時期、門の前には美しい花が咲き誇り、花と門柱と青い看板のコントラストがとても美しいです。
舞鶴地方総監部の敷地内には海軍記念館(旧海軍機関学校大講堂)があり、土・日・祝日には一般公開されています。
東郷平八郎元帥の書
機関学校関連の史料など200点が展示されていますので、舞鶴を訪れた際には足を運んでみてはいかがでしょうか?
舞鶴地方総監部庁舎です。海軍機関学校の庁舎でした。

海軍機関学校は1925年に横須賀から舞鶴に移転、終戦まで日本海軍の機関科士官を養成してきました。また機械・機関に関する総合的な研究と教育を行っていました。
庁舎の隣には海軍記念館となっている機関学校大講堂があり、機関学校生徒館は第4術科学校として利用されています。

機関学校は関東大震災で被災したため舞鶴に移転しました。
このため庁舎等の建物は現在の超高層建築物で採用されている動的耐震理論に基づいて設計された世界初の建築物ということで、建築史上大変貴重な建物だということです。
舞鶴地方総監部の正門前から北吸岸壁方面を望んだ様子。
歩道橋の間から護衛艦の姿が見えますが、中央の道路(国道27号)を挟んで総監部と岸壁が向かい合うように位置しています。

GW中の舞鶴は青い空、蒼い海そして新緑がまぶしい山々など、本当に自然が素晴らしかったです。その美しい自然に囲まれた艦艇たちも芸術的と言えるほど美しい佇まいでした。

さらに旧海軍時代の遺産が至る所に存在しており、舞鶴は海自艦艇、帝国海軍の空気、美しい自然という三拍子揃った素晴らしい場所だと改めて感じました。
来年のGWも舞鶴遠征で決まりです!(笑)

美しい自然に囲まれた美しい艦艇たち。GWの舞鶴は艦船マニアを虜にする魅力で溢れています。