GW舞鶴遠征〜遊覧船編〜


GWの5月1〜3日に日本海防衛の拠点・舞鶴に遠征しました。3回に渡ってレポートします。
第1回目は舞鶴艦隊の雄姿を海上から堪能することができる舞鶴港遊覧船の乗船記です。
舞鶴での艦艇撮影に威力を発揮するのが遊覧船です。
その名も「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」。その名のとおり、海自北吸岸壁(海軍舞鶴鎮守府)、ユニバーサル造船(舞鶴海軍工廠)、舞鶴教育隊(舞鶴海兵団)など帝国海軍ゆかりの施設をめぐる遊覧船です。

かつては三条埠頭という寂しい岸壁に乗り場がありましたが、昨年春から舞鶴を代表する観光施設である赤レンガ博物館のすぐ近くに乗り場が移されました。
土・日・祝日に1日2便が運航されますが、GWなどの観光シーズンには臨時便が増発されます。
乗船したマニアは例外なく痺れまくる物凄い遊覧船なのです。
遊覧船は舞鶴港遊覧船という民間会社が運航しています。

かつては私のようなコアなマニアが艦艇を撮影するために乗船する程度でしたが、いまや舞鶴を代表する観光資源となっています。乗船客の数も2年前とは比べ物にならない多さでした。
(ちなみに2年前は乗客が私1人のみという時がありました…)

←が遊覧船。横須賀の軍港めぐり遊覧船よりは小さく、呉よりは大きいといったサイズ。
私がお勧めするのは右舷後方の席。最高のアングルで艦艇を撮影することができます。
遊覧船が出港するとまず目に飛び込んでくるのが掃海艇。
実は遊覧船の乗り場は舞鶴地方隊第44掃海隊用の岸壁のすぐそばにあるのです。

画像の掃海艇は「まえじま」です。「うわじま」型掃海艇の4番艇で、去年3月に下関の第43掃海隊から転籍してきました。
第44掃海隊は「まえじま」「とびしま」「ながしま」の「うわじま」型3隻で編成されています。
GW期間中、この岸壁には「まえじま」しかいませんでした。他の2隻は何処に?
一方、反対側に目を移すと北吸岸壁の先端部に停泊している艦艇が見えてきます。
この巨大な艦は補給艦「ましゅう」です。何という大きさでしょう!隣にいる「まつゆき」がまるで内火艇のように見えます(笑)

「ましゅう」は基準排水量1万3500tで、ヘリ空母DDH「ひゅうが」とほぼ同じ排水量ですが、満載排水量は実に2万5000tに達するため、船体は全長221m、幅27mという帝国海軍の戦艦にも匹敵する巨大なフネです。現時点での海上自衛隊最大の艦艇です。

遊覧船の乗客の中にご老人の団体がいて、リーダー格の方が「ましゅう」を指差し「あのデカいフネがイージス艦じゃ〜」と説明していました。おいおい…(苦笑)
出港後、遊覧船はしばらくの間、艦艇が停泊している北吸岸壁やユニバーサル造船がある方向とは逆の方向へ航行します。
舞鶴警備隊や小樽行きのフェリーが発着する前島埠頭を通過したあと舞鶴教育隊の沖に着きます。

舞鶴教育隊のある場所は海軍舞鶴海兵団があった場所で、終戦により海兵団が閉鎖されたのち米軍駐屯地、警察予備隊駐屯地を経て昭和27年に舞鶴教育隊(当時の呼称は舞鶴練習隊)が設置されました。

入隊直後の新隊員(練習員)や、海士から海曹へ昇進する隊員(曹候補生)の教育を行っています。
舞鶴教育隊を過ぎると舞鶴の新名所、舞鶴クレインブリッジが見えてきます。
1998年に完成した日本海側最長の斜張橋で、全長は735m。二羽の鶴が羽を広げた様子をイメージして設計されました。
夜はライトアップされて、とても幻想的な姿となります。

橋のすぐ近くには有名な舞鶴引揚記念館があります。
今回の遠征では引揚記念館も見学したのですが、抑留者が極寒のシベリアの地で過酷な労働と悲惨な生活を強いられた現実を目の当たりにして涙を禁じえませんでした…。
遊覧船はユニバーサル造船舞鶴事業所のエリアに入ります。

日本海側唯一の大型造船所で、前身は舞鶴海軍工廠です。海軍工廠時代の施設がそのまま利用されており、石積みの岸壁などに海軍時代の雰囲気を感じることができます。
海自の大型艦艇も多数建造した経験があり、練習艦「かしま」輸送艦「くにさき」砕氷艦「しらせ」などがここで生まれました。

掃海艇「ながしま」がいました。
約10年前、周防灘で掃海隊群の訓練を取材した際に乗艦し、当時の第1掃海隊司令から機雷掃海について教わった思い出のフネです。懐かしいなぁ〜。
護衛艦「みょうこう」もいました!
定期修理のために造船所入りしているのだと考えられますが、装備品は取り外されていないようです。これから修理が始まるのかもしくは修理終了直後の姿なのかも知れません。

イージス艦を正面から、しかも超至近距離で見るとその迫力に圧倒されます。まさに「黒がねの城」といった雰囲気です。

「みょうこう」は去年10月に改装が行われ、ミサイル防衛機能が付加されました(「こんごう」型では3番目)。改装後にハワイで実施された訓練では予め時刻を知らされない条件の下、見事に模擬弾道ミサイルを撃墜しています。
「みょうこう」の後ろ姿。嗚呼、何て美しいのだろう…。
快晴の青い空と蒼く澄んだ海が「みょうこう」の美しさを引き立たせていますね!

他基地からのお下がり艦(=旧式艦)ばかりだった舞鶴艦隊に初めて配備された最新鋭艦が「みょうこう」でした。
その後、「みょうこう」は1998年に北朝鮮が発射した「テポドン1号」をフェイズド・アレイレーダーで探知し、翌99年には能登半島沖不審船事件で北朝鮮の工作船を追跡するなど、海上防衛の最前線である日本海で懸命の活躍を続けています。

映画「亡国のイージス」で護衛艦「いそかぜ」役を「好演」しました。
今回の舞鶴遠征の最大のターゲット、DDH「しらね」です。

最高のアングルから撮影することができました!
流れるような船体ライン、背負い式に配置された2門の主砲、マック形状のマスト、そして独特な形状の格納庫…「しらね」の魅力が凝縮された一枚です。

1護群旗艦という名誉ある地位にありながら、横須賀停泊中に艦の頭脳であるCICを全焼、「ひゅうが」就役に伴って舞鶴に左遷 転籍させられるなど絵に描いたような転落の人生ですが、舞鶴の美しい自然に囲まれて元気に舞鶴艦隊の一員を務めていました。頑張れ!「しらね」!!
ユニバーサル造船のエリアを過ぎると遊覧船は左に舵を取って対岸の海自舞鶴基地(北吸岸壁)に近づきます。

北吸岸壁の最も造船所寄りの場所は支援船の停泊位置です。
画像にはYO・YG(油船)が写っていますが、ほかにもYW(水船)やYT(曳船)も多数停泊しています。
海自艦艇の行動を支える「縁の下の力持ち」的な存在ですが、私はこのような支援船にまで萌えてしまいます

支援船をよく眺めると、船の種類ごとに役割に応じた様々な装備や珍しい装備があり興味をそそられます。
日本海の韋駄天、ミサイル艇「はやぶさ」「うみたか」です。
この2隻で第2ミサイル艇隊を編成しています。
1999年の能登半島沖不審船事件を機に6隻が整備された「はやぶさ」型ミサイル艇ですが、現在、余市・舞鶴・佐世保に2隻づつが配備されています。

24時間体制で日本海に睨みを効かせるスクランブラーなので、修理や整備、さらには訓練・休養等を考慮すると6隻というのは少な過ぎると思います。各ミサイル艇隊は運用に苦労しているのではないでしょうか。
ミサイル艇の速やかな増強を切に望みます国防音痴の民主党政権では無理でしょうけど…。
舞鶴の「ゆき」姉妹、護衛艦「みねゆき」「はまゆき」です。

舞鶴の「ゆき」型は長らくこの2隻でしたが、今年3月に呉から「まつゆき」が転籍して来たので横須賀・佐世保と同様に三姉妹となりました。三姉妹で第14護衛隊を編成しています。

「ゆき」型は海自艦艇史に名を刻む名艦で12隻も建造されましたが、1番艦の「はつゆき」間もなく退役を迎えるなど世代交代の波が押し寄せています。
3番艦の「みねゆき」も既に代艦の予算が承認されており、ここ数年のうちに退役するものとみられます。「ゆき」姉妹が仲良く佇む姿を見ることができるのもあまり長くないようです…(涙)
舞鶴のお嬢様、護衛艦「すずなみ」です。
海自で最も新しい(=若い)DDということと、「すずなみ」(涼波)という柔らかい艦名により何だかお嬢様のような雰囲気を感じます。そう思うのは私だけ?(苦笑)

最新鋭DD「なみ」型の5番艦(最終艦)で、就役と同時に舞鶴に配備されました。 ちなみに、先代にあたる帝国海軍の駆逐艦「涼波」(夕雲型10番艦)も就役後に舞鶴に配備された艦でした。不思議な偶然を感じますね。
舞鶴には「あめ」型DDが配備されていないので、流れるような美しい船体を持つ「すずなみ」はひと際目立ちます。その点もお嬢様と感じる原因かも…。
護衛艦「あまぎり」です。
最新鋭DD「なみ」型の1番艦「たかなみ」と2番艦「おおなみ」の就役に伴って横須賀から転籍して来た艦です。

就役4年目の1992年に「はまぎり」と衝突、浸水により艦が大きく傾斜してあわや沈没かという事態に至りました。
「あたご」「しらね」同様、不運なフネと言えます。舞鶴配備艦は事故や他基地からの左遷 転籍という悲しい過去を持った艦が多いのも特徴で、それがマニア心をくすぐります。

先代にあたる帝国海軍の駆逐艦「天霧」(吹雪型15番艦)も作戦中に味方駆逐艦と衝突するなど散々な運命の艦でした。
「あまぎり」の隣には護衛艦「あたご」が停泊していました。
つまり衝突した経験がある艦同士が並んでいたことになります(不謹慎でした…ごめんなさい)

今回の遠征の目的のひとつは、この「あたご」の撮影でした。
海上から「あたご」の全身を撮りたかったのですが、残念ながら「あまぎり」が隣にいて不可能でした…。
妹の「あしがら」が観艦式で受閲艦艇部隊の旗艦を務めるなど華々しい活躍をする一方で、「あたご」は事故以来人目を避けているような印象さえ受けます。

そんな薄幸な「あたご」がとても愛おしく感じます。頑張れ!
北吸岸壁の先端部に来ました。補給艦「ましゅう」の後ろ姿。
後ろから見てもその巨大さが一目瞭然です。隣にいる「まつゆき」の小さいこと…。
ちなみにどれくらい大きいかというと、全長221mは戦艦伊勢・日向より長く、幅27mは空母翔鶴・瑞鶴とほぼ同じです。
「ましゅう」、恐るべし!

「ひゅうが」型の後継である22DDH基準排水量1万9500t(満載排水量2万4000t)、全長248m幅38mという「ましゅう」をも超える大型艦となります。全長に至っては空母加賀を10mも上回ります。凄い!!
こんな大きな艦を己の号令で動かしてみたいものです。
護衛艦「まつゆき」
就役以来24年間、呉に在籍していましたが、今年3月15日に舞鶴に転籍してきました。
穏やかな瀬戸内海から一転、寒風が吹き波も荒い日本海の守りに就くことになったわけです。
私は学生時代から呉に停泊している「まつゆき」を見続けてきたので、舞鶴に停泊している姿にものすごい違和感を感じました。

入れ替わりで呉に転籍となった「あぶくま」ですが、実はまだ舞鶴にいて、対岸のユニバーサル造船のドックに入って大がかりな修理を行っていました。思わず「はよ呉に行かんか〜い!」とツッコミを入れてしまいました。
最後は多用途支援艦「ひうち」です。
この艦も移籍組で、おととし呉地方隊隷下の佐伯基地分遣隊からやって来ました。
佐伯にいた頃は、地元のイベントで何度も見学したことがある思い出のフネです。
「まつゆき」といい、この「ひうち」といい、昔親しんだ艦を遠方の基地で見かけると、遠くに引っ越していった友人に久しぶりに会ったような懐かしくも嬉しい気分になります♪

「ひうち」型5隻のネームシップですが、1〜3番艦と4、5番艦は外観や訓練支援能力が大きく異なります。
約30分間のクルージングが終了。海上から眺める舞鶴艦隊の雄姿に大興奮のひとときでした。

海自基地を巡る遊覧船は横須賀と呉にもありますが、舞鶴の遊覧船は艦艇の至近距離まで近づき、さらに最高のアングルで撮影することができます。
しかも料金は大人1000円と、とってもリーズナブル。私は遠征するたびに最低3回は乗船します(笑)
舞鶴を訪れたマニアの方はぜひ乗船することをお勧めします。乗船すれば遊覧船はあなたをパラダイスに導いてくれることでしょう。

お問い合わせは、虚葬゚港遊覧船  0773-77-0344 まで。

勢揃いした舞鶴艦隊を至近距離から撮影。港めぐり遊覧船の行く先はパラダイスです。