新型DDH「いずも」 特別公開


4月11日、3月末に就役したばかりの新型DDH「いずも」が抽選に選ばれた人を対象に公開されました。

新型DDH「いずも」型1番艦「いずも」は3月25日に就役、当HPがかねてからお伝えしていたとおり、横須賀に配備されました。
就役翌日には報道公開が行われましたが、このたび4月11日に抽選で選ばれた約9000人を対象に公開されることになりました。これまで全くクジ運の無かった私ですが、今回は「『いずも』を撮影したい!」という気持ちが天に通じたのか見事に当選、昨年8月以来の横須賀遠征となりました。

公開前日の10日に上京、公開を待ちきれないのと下見を兼ねて横須賀へ向かいました。京急線の最寄駅・汐入駅から横須賀基地を臨むヴェルニー公園へ…。途中、「いずも」の巨体が目に飛び込んできました。うわぁ〜!! 予想はしていましたが、実物を目の当たりにすると、その大きさに驚かずにはいられません
ヴェルニー公園から見る「いずも」の大きさと言ったらもう…圧倒されて言葉になりません…。まさに衝撃的な大きさです。それもそのはず、「いずも」は旧海軍の空母「蒼龍」「飛龍」を凌駕し、「翔鶴」「瑞鶴」に匹敵するほどの大きなのですから…。
基準排水量1万9500t全長248m全幅38mというサイズは、言うまでもなく、海自史上最大の艦艇となりました。前タイプの「ひゅうが」型よりも排水量で6000t、長さで51m大型化しています。

同じ逸見岸壁に「ひゅうが」が接岸している時は「大きな艦が留まっているなぁ〜」という感じでしたが、「いずも」は艦が留まっているといった呑気な雰囲気ではなく、そそり立つ巨大な壁が突如として現れたといった感じ。ヴェルニー公園から見える景色を一変させてしまったと言っても過言ではありません。
横須賀基地を見渡すことができる山に登りました。俯瞰して見ると、「いずも」の巨大さを改めて実感します。横に位置する総監部庁舎が、まるでミニチュアのおもちゃのようです…(笑)
さらに驚くべきことに、あの長大な逸見岸壁を一隻でほぼ占有してしまっています。「いずも」は目刺し係留が不可能な艦なので、母港・横須賀または各基地で接岸する際には、他の停泊艦をごっそり移動させて、「いずも」のための接岸スペースを捻出する必要に迫られそうです。結構大変な事ですよ!

3年後に就役する見込みの2番艦は佐世保に配備となりますが、佐世保は艦の数が多い割には大きな桟橋・岸壁がないので、今の設備のままでは2番艦配備時に接岸場所をめぐって他艦を巻き込んでの大騒ぎになるのではないかと心配です…
翌11日、公開当日です。残念なことに、横須賀は朝から雨模様…せっかく「いずも」が撮影できるのに雨だなんて… ○| ̄|_
ふり返れば、日向細島港での「ひゅうが」初公開(2009年7月)も呉基地での「いせ」初公開(2011年10月)も大雨でした。新DDHの初公開には雨がつきものなのでしょうか?

午前中の早い時間にも関わらず、大勢の人がヴェルニー公園から「いずも」を撮影しています。関心の高さがうかがえます。
「いずも」はその大きさと形によって、新聞・テレビは「海自が空母を造った」と騒ぎ立て、知識の浅い艦艇ファンは「ゆくゆくはF35搭載だ!」となどいった妄想を膨らますという、おかしな状況が生起しています。なので、私はこれから「いずも」を見学・撮影してその本質に迫りたいと思います。いざ、推参!
先に述べたとおり、今回の公開は事前抽選で当選した人でなければ「いずも」が接岸する岸壁はおろか基地内にも入れません。
私は第2回入場券(午前10時入場)が当選したのですが、はやる気持ちに背中を押されて、40分も早い午前9時20分に総監部入口に着いてしまいました。「さすがに入場不可だろ…」と思いつつ案内役の隊員さんに尋ねたところ、予想に反して入場OK!。実は、第1回と第2回の入場券持参者は午前中ならどの時間でも入場可能だったのです。総監部としては見学者が一気に押し寄せるのを避けるために緩やかな時差入場をさせたかったようです。

総監部入口から逸見岸壁に接岸する「いずも」が見えます。総監部庁舎からはみ出したかのように見えるその姿は、見る者に遠近感が狂ってしまったかのような不思議な感覚をもたらします。
手荷物検査を終えていよいよ逸見岸壁へ。というか、岸壁に入る前から「いずも」がそそり立つ壁のように私を圧迫します。私の「いずも」に対する第一印象は「壁」の一言に尽きます。
パッと見で「ひゅうが」型とよく似ていますが、目を凝らして見ると細部でかなりの違いがあるようです。そして、この違いこそが「いずも」に想定された役割に起因するものであり、「いずも」型DDHの本質に迫るカギであると私は考えます。

いま一度「いずも」のスペックを紹介しますと、基準排水量1万9000t全長248m全幅38m出力11万2000馬力最大速力30ノット乗員約520名(司令部50名、女性自衛官最大90名)となっています。建造費は1135億円で、JMU横浜事業所で2012年1月から3年2ヶ月の歳月をかけて建造されました。
逸見岸壁に足を踏み入れました。至近距離で近くで見る「いずも」は「壁」というよりも「ビル」です。右側に立つ隊員さんと比較すれば、「いずも」の巨大さがお分かりいただけると思います。

右舷側を観察してみると、まず目に付いたのはスポンソンで、「ひゅうが」型では一つでしたが、「いずも」では二つに増設されています。また、「ひゅうが」型では右舷側には設置されていなかったキャットウォークが、「いずも」には設置されています。
キャットウォークの設置は「ひゅうが」型の運用経験を踏まえたもので、これによって右舷側での通行と作業が容易になりそうです。キャットウォークの設置に伴って、「ひゅうが」型では艦橋構造物の前方飛行甲板にあった洋上補給装置とヘリコプター給油装置はスポンソン内に移設されています。
「ひゅうが」型との最大の相違点がコレ。右舷後方にあるデッキサイド式の第2(後部)エレベーターです。
デッキサイド式の採用によって、飛行甲板上でのヘリコプター運用が改善され、運用の自由度が増します。また、インボード式(従来のエレベーター)に比べて昇降のための装置が簡易で、その設置スペースも少なくてすむという利点があります。

このエレベーターこそが、「いずも」型DDHの本質に迫る大きなカギと言えます。「いずも」型では艦内に陸自の大型トラック空自のパトリオットPAC-3車両を搭載して輸送する任務も想定されて設計されました。これらの車両を搭載するにはデッキサイド式のエレベーターが必要なのです。つまり、「いずも」型は離島奪還作戦弾道ミサイル防衛への従事も想定されているのです。
「いずも」の艦尾です。この部分は「ひゅうが」型とは大きく異なります。「ひゅうが」型では左舷側1ヶ所だったスポンソンが、「いずも」では左右2ヶ所にあります。そして二つのスポンソンを連絡するキャットウォークも設置されています。

スポンソンには個艦防御用の兵装が設置されています。左舷右舷ともにファランクス20ミリCIWSが載っているように見えますが、CIWSは右舷側のみで、左舷にあるのは海自艦初搭載のシーRAMです。シーRAMはCIWSの機関砲部分をRAM(近接防御ミサイル発射機)に置き換えたもので、「いずも」では2基装備されています。一方、CIWSも2基装備されていますが、「ひゅうが」型が備える最新型(1B)ではなく旧型(1A)となっています。これは、建造費節減のために退役した護衛艦のものを流用したためです。
右舷側サイドランプから乗艦。格納庫に足を踏み入れます。
広い!!見た目は「ひゅうが」型の格納庫と同じですが、艦が大型化しているのに伴って格段に広くなっています。格納庫の長さは125m幅21m天井までの高さは7.2mで、いずれも「ひゅうが」型より拡大しています。
この格納庫を見た後に「ひゅうが」型の格納庫の画像を見たら、すごく狭く感じたほどです。「ひゅうが」型の格納庫もかなり広いのですが…

この格納庫に搭載する航空機(ヘリコプター)ですが、最大搭載機数は14機(「ひゅうが」型は11機)、常備搭載機数は9機(哨戒ヘリ7機、掃海・輸送ヘリ2機)とされています。「ひゅうが」型の常備搭載機数が4機(哨戒3、掃海・輸送1)であることを考えると、DDHとしての機能が格段に強化されていると言えます。
↑の画像が艦首側から艦尾方向を見ているのに対して、こちらの画像は艦尾側から艦首方向を見ています。中央に見える仕切りのような物はスライド方式の防火シャッターで、このシャッターより前方(艦首側)が第1格納庫後方(艦尾側)が第2格納庫に区分されます。各格納庫には、航空機・車両のタイダウン位置の管制や応急指揮を担当する管制室が設置されています。

この格納庫、搭載するヘリコプターは海自の機体だけではありません。任務によっては陸自機や空自機を搭載することも想定されています。具体的には、離島奪還作戦時には陸自の輸送ヘリCH-47JA戦闘ヘリAH-64Dなどが、災害支援時には空自の救難ヘリUH-60JAなどを搭載して、洋上の航空基地としての役割を果たすことが期待されています。
第2格納庫右舷側にある第2エレベーター用の開口部です。
この開口部から降下しているエレベーターに対して、航空機の搬入・搬出を行います。また陸自・空自の大型車両搬入・搬出には、この開口部が搬入口として使用されます。今は公開用に開口部を開けていますが、航行中や作業を行っていない時は、この開口部はスライド式の扉で閉鎖されます。

格納庫では陸自の73式大型トラックが50台収容可能で、艦内には陸自隊員400人分の居住区も備えています。「ひゅうが」型では小型トラックしか積めず、収容人員も100人であることを考慮すると、輸送機能も大幅に強化されています。さらに収容人員は「おおすみ」型輸送艦(330人)をも上回っています。「いずも」は“輸送艦”というもう一つの顔を持っていると言えるでしょう。
第1(前部)エレベーターに乗って飛行甲板へ。
多くの見学者にとっては巨大なエレベーターで飛行甲板に上がるという経験は初めてなのか、上昇を始めると皆さん大喜び!私の近くにいた人は喜びと驚きのあまり、こんな感想を口にします。「おぉ〜すげえ!宇宙戦艦みたいだ〜。宇宙戦艦ヤマトに航空機運搬用エレベーターってありましたっけ?

第1エレベーターは「ひゅうが」型と同じインボード式ですが、大型の陸自輸送ヘリ等の運搬を考慮して幅が3m拡大されています(長さ20m×幅13m)。言うまでもなく、エレベーターのサイズ拡大は船体の大型化によって可能となりました。設置位置は「ひゅうが」型同様、船体の中心線上ではなく、飛行甲板の中心線上に設けられています。使用最大荷重は30tとなっています。
飛行甲板です。こちらも広い!!人も多い…(苦笑)
「ひゅうが」型よりも随分と広くなったような気がします。「いずも」の飛行甲板は、長さ245m×幅38mで、「ひゅうが」型の長さ195m×幅33mに比べて格段に広がっています。面積で計算すると約1.5倍なのですから、なるほど広く感じる訳です。

全長が増したことでヘリの発着艦スポットは5ヶ所に増え(「ひゅうが」型は4ヶ所)、幅が増したことで発着艦スポットと艦橋構造物との間隔が伸びて安全性が高まりました
艦の大型化によって、DDHの本来機能であるヘリ運用に関しては大きく改善され、使い勝手が良くなったことは間違いありません。
甲板上に多数見える丸い蓋のような物は、ヘリコプターや車両を係止・固定するためのタイダウン・ホールです。
第1エレベーターが降下した状態です。これを見てお分かりだと思いますが、飛行甲板と格納庫の間に甲板が一層あります。 この甲板は「いずも」では第2甲板と呼ばれる部分で、この甲板上に重要な施設や部屋が設けられています。

艦橋構造物直下にCICFIC(司令部作戦室)が配置されているほか、艦長室士官室先任海曹(CPO室)司令部公室司令室多目的室など、非常に重要な施設が位置しています。
これらの施設は「ひゅうが」型にもありましたが、その運用経験から位置が大幅に変更されています。また、任務時における作戦司令部や災害支援時における対策本部が設置された際には、多数の高級幹部や自治体幹部が乗り込んでくることから、幹部用の居住区が大幅に拡充されているのも本級の特徴です。
艦橋構造物は、「ひゅうが」型と同じく5層から成り、幅も同じですが、第1煙突と第2煙突の間に臨時燃料移送装置を設置したために全長が長くなりました。あの狭い艦橋はそのままなのです…。

艦橋窓の上部壁面に絆創膏のようなレーダーが見えますが、OSP-50アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーです。このレーダーは「ひゅうが」型のFCS-3レーダーからミサイル管制機能を除いた、簡単に言えばFCS-3レーダーの簡易版です。
一方で、「ひゅうが」型にはなかった対水上レーダーOPS-28航海レーダーOPS-20をマスト上に装備。つまり、近接防御兵装しか持たない「いずも」では、ミサイル管制を含むレーダーは簡易化し、艦の航行に関するレーダーは強化しているのです。レーダーの設置のし方にも「いずも」らしさが表れています。
艦橋構造物の後部は航空管制室となっています。
「ひゅうが」型よりも飛行甲板に面した突出部分が大きくなりました。これは飛行甲板が広くなり、艦首方向にあるヘリスポットへの見渡しを良くするための措置です。管制室では、ヘリの進入や発着艦だけでなく、飛行甲板における機体の配置や移動など、ヘリ運用に関する様々な管制を行います。

艦橋構造物ですが第1甲板(飛行甲板レベル)前方に通信機械室や気象海象室、後方部分に発着艦員待機室があります。「ひゅうが」型では搭乗員待機室も第1甲板にありましたが、運用するヘリの数が増え、それに伴って搭乗員も増加したことから、飛行甲板直下の第2甲板に移され、広さも拡大されました。機体を整備する整備員の待機室は、格納庫に隣接した第3甲板にあります。
「いずも」の大きな特色である施設がこの飛行甲板直下の第2甲板(CIC・FIC・艦長室・司令部公室等と同レベル)にあります。その施設とは医療区画です。「いずも」ではこの医療区画が大幅に拡充されました。FICなど「いずも」で拡充された施設は多々ありますが、この医療区画の拡充は際立ったものとなっています

診察室手術室歯科治療室集中治療室医療事務室が設けられ、入院者用の病床は「ひゅうが」型の8床から35床へ大幅に増やされました。35床の病床は、同じく病院船としての役割が付与されている「ましゅう」型補給艦の46床に匹敵する規模であり、急患輸送に大きな威力を発揮するヘリコプターの優れた運用能力と合わせて、洋上病院としての役割が期待されます。そう、「いずも」は“病院船”という顔も持っているのです。
飛行甲板の最後尾部分です。「ひゅうが」型では識別番号の右舷側にVLS(垂直発射装置)がありましたが、「いずも」ではご覧のとおりVLSがありません。「ひゅうが」型においてVLSはヘリ発着の支障になったため、「いずも」では不採用となりました。

VLSの不採用にはさらなる理由があって、「いずも」では艦が大型化したにも関わらず「ひゅうが」型とほぼ同じ建造費に抑える必要があったこと、さらに「ひゅうが」型の運用実績で、これほどの大型艦が対潜攻撃を実施する機会は少ないと判明したため、大型の船体をヘリコプター運用に特化させ、攻撃用の兵装は一切装備しないことになったのです。従って「いずも」に装備されているのは先に紹介したCIWSシーRAMと、対魚雷防護兵装である投射型静止式ジャマー自走式デコイのみです。
右舷後部にある第2エレベーターです。先ほどから度々言及しておりますが、海自DDH初採用のデッキサイド式です。サイズは長さ15m×幅14mで、使用荷重は30tです。
先に紹介したように、「いずも」では対潜ヘリSH-60Kを7機常備しますが、SH-60Kは予算の制約によって調達が進んでいません。「いずも」に7機を搭載すると、他のDDHやDDに搭載する機体が不足する事態が想定されることから、今後調達を増やすのか、SH-60Jで代用するのかなど、機体の確保が課題となります。

一方で、機体を確保してもすぐに「いずも」での運用が可能になる訳ではなく、“艦載機”としての特殊な運用をこなせるよう、搭乗員・誘導員・整備員の練度を上げていかねばなりません。これから始まる習熟訓練でも、この点が重点的に行われます。
飛行甲板の表面は「ひゅうが」型と同じ処理(ノンスキッド・デッキコンポジション)が施されています。私が見る限り、就役直後に一部報道にあったような垂直離発着機が噴出させる高温の排気ガスに耐えるための処理は施されていません
そもそも、そのような記事を書いた記者やライターは「いずも」の飛行甲板に実際に立ってみたのでしょうか?それともこの表面処理がそんな風に見えたのでしょうか?

その報道は、「海自が危険な空母を造った」「ゆくゆくは垂直離発着機を導入して攻撃型空母として運用する」という論調にしたいが故の根拠なき記事であり、安保法制整備を進める安倍政権と結び付けて、「いずも」を我が国が危険な方向に向かっている象徴として報じたい記者・ライターの悪意をひしひしと感じます
左舷側のキャットウオークです。右舷側に新設されたことは先に述べましたが、左舷側も「ひゅうが」型に比べて取り付け範囲が拡大し、幅も広くなりました。ここにはヘリの発着艦に必要な機材が格納されていますが、発着艦スポットに近い場所には、ヘリコプターへの給油装置消火装置(ホース)が備えられています。

キャットウオークがない場所(主に艦首・艦尾)には落下防止用の安全柵が設けられていますが、「ひゅうが」型のような起倒式ではなく、最初から横向きに固定された柵に変わっています。(13枚↑にある艦尾部分の画像を見るとよく分かります)
横向きの柵があるとはいえ、やはり垂直に立つ柵がないと非常に怖いです。この柵が原因で、「いずも」は観艦式や体験航海では一般の見学者を乗せることができないかもしれません
あっ、群司令だ!「いずも」が所属する第1護衛隊群の司令・齊藤海将補が見学者との記念写真に笑顔で応じています。
実は群司令、最初は「いずも」乗り組みの幹部(二佐←撮影している人)に案内されて飛行甲板を視察していたのですが、通りがかったオバさんに、「ちょっと隊員さん、一緒に写真を撮ってちょうだい♪」と声を掛けられました。そのオバさんは袖の階級章が分かるはずもなく、たまたま近くにいた隊員に声をかけただけだったのですが、その人がよりにもよって群司令だったのです(苦笑)

私も私の横にいた乗組員(三尉)も、予想だにしない事の成り行きに茫然自失…。乗組員:「あのオバさん、一番偉い人に声を掛けましたねぇ(笑) 私:「いや〜、知らないということは最強ですね(笑) こんな会話を交わして2人で爆笑しました。
群司令は視察を中断して、そのオバさんと記念写真に収まったのですが、その様子を見ていた他の見学者が次々と群司令に記念撮影を願い出るという、さらなる予想外の展開となりました。しかし、群司令は嫌な顔ひとつせず、笑顔で記念撮影に応じるのです。ご立派です。群司令の周りにはあっという間に撮影の人だかりができ、見学者の中には「みてみて!あそこで撮影会やってるよとか言い出す人も出る始末。撮影会じゃありません!!

後から撮影を依頼した人たちは、ベタ金の階級章と群司令の端正な佇まいを見て「すごく偉い人=艦長」と考えたようです。「艦長さん」は一般人にとっては憧れの存在ですから、撮影希望者が相次いだのです。ちなみに群司令は「艦長さんですか?」との問いに、「艦長ほど偉くはないんですよ」と答えておられました(笑)
艦内の見学と撮影を終えて、再び岸壁へ。この角度から見ると「ひゅうが」型とそっくりですが、大きさは格段に違います。

「いずも」では第1煙突と第2煙突の間に臨時燃料移送装置を設置したことを先ほど述べましたが、その移送用のホース(給油蛇管)が見えます(矢印部分)。本来、艦艇への燃料補給は補給艦の役目ですが、隻数に制約がある(「とわだ」型3隻+「ましゅう」型2隻)ために、「いずも」に随伴して行動する艦艇に燃料を補給する能力が付与されたのです。3300klの補給用燃料を搭載しており、補給艦と同じくハイラインで洋上給油を行います。
「いずも」が補給能力を持つことで、小規模な部隊ならば補給艦の随伴なしでも長期行動が可能となり、行動の自由度が大きく増します。「いずも」は“補給艦”という顔も持っているのです。
最後に艦前方から撮影。帝国海軍の空母「大鳳」を彷彿とさせるエンクロウズド・バウです
確かに外観だけを見れば「いずも」は空母に見えるかもしれません。しかしながら、外観のみを見て「いずも」を空母と言うのは、ここまでレポをお読みになった閲覧者の皆様は、『木を見て森を見ない』のと同じくらい愚かな事であるとお分かりでしょう。

では、「いずも」と何なのか?まず第一は「しらね」の代艦であるDDHであり、第二が充実したFICや多目的室、通信機器を備えた指揮中枢艦です。ここまでは「ひゅうが」型も同じですが、「いずも」は「ひゅうが」型の対潜攻撃能力を削減した一方で、大型の船体を航空機の運用に特化し、加えて、輸送艦・病院船・補給艦の能力を付与した多機能艦・多目的艦なのです。
撮影を終えて岸壁を出ようと歩いていたら、目の前に齊藤群司令が現れました。帽子を脱いで脱帽時の敬礼(つまりお辞儀)をすると、群司令は答礼しながら「撮影を楽しめましたか?」と、私に話しかけてくるではありませんか!これはチャンスだと思い、「いずも」に関して色々とお話を聞かせていただきました。

「いずも」が空母だと騒がれる事についてどのようにお感じなのか尋ねたところ、群司令は「確かにこの大きさと形ですから色々と言われますよね」と前置きしたうえで、「『いずも』は限られた防衛予算の中で、我が国を取り巻く様々な問題や脅威、さらに将来起こりうる新たな問題に対処すべく様々な能力を盛り込んだ結果、この大きさ・形になったのです。決して空母を造った訳ではないのです」とお答えになりました。
そして、群司令はこうお続けになりました。「私たち海上自衛隊は、この『いずも』が国民の皆様をお守りできるよう一生懸命訓練に励みますので、暖かく見守ってください」
私に対しては、「我々だけでは周知は困難です。皆さんに『いずも』の事を正しく理解していただけるようPRをよろしくお願いします」。嗚呼、私のような者に群司令じきじきのお願いだなんて…分かりました群司令、一部の新聞・識者の悪意ある報道やマニアの妄想を打ち砕くべく、私は全力で頑張ります!

おゃ?群司令は私が管理人であることを知っているかのような口調だったなぁ…なぜだろう? 群司令からの要請に決意を新たにしつつ岸壁を去ります。ふと振り返った際に見た「いずも」も、私に「PRお願いしますよ!」と言っているような気がしました。
海自の護衛艦という艦種は、憲法9条下における婉曲的な呼称で、諸外国海軍の駆逐艦に相当します。
「いずも」に対して『お前のような駆逐艦があるか!』という意見も聞こえますが、「いずも」はシーレーン防衛や離島防衛、弾道ミサイル防衛、災害派遣、国際貢献活動等の任務や、国家財政逼迫による艦艇の減少や新規建造の抑制といった我が国特有の任務や防衛環境に応じて独自に進化した駆逐艦、言うなれば、ガラパゴス携帯ならぬ“ガラパゴス駆逐艦”なのです。

朝日新聞は1月7日の朝刊で、「どう見ても空母だけど…」という見出しで「いずも」は空母だとする記事を掲載。「なし崩し的に憲法が拡大解釈されている」との評論家の批判を紹介していますが、これこそが本質を理解していない愚かな報道の典型だと思います。
ヴェルニー公園に戻りました。依然として大勢の人が対岸の逸見岸壁にいる「いずも」を撮影しています。その光景は、「いずも」フィーバーと言えるほどの熱狂と賑わいです。

多くの国民が「いずも」と海自に関心を持つことは非常にいいことですが、願わくばこれら「いずも」に関心を寄せる人々が、「いずも」を正しく理解して欲しいと切に願います。「空母」だと言って喜んだり、妄想を膨らませることは海自と海上防衛に対する正しい理解には繋がらず、ひいては一部新聞・テレビの誤った報道に踊らされる可能性すらあると私は危惧を抱いています。
最初はあの形と大きさに興味を惹かれても構いませんが、その後は「いずも」の本質を理解して欲しいです。そして、一般公開で乗組員に「空母ですか?」などと質問することのないように…。

新型DDH「いずも」の航空機運用は多彩な能力の一つに過ぎず、真の価値はその多機能性にあり。


【「いずも」の詳細な画像は→護衛艦「いずも」型画像集