マリンフェスタ in 八戸


夏の終わりの北方海域で重量級の艦艇イベントが炸裂!マリンフェスタin八戸の模様をレポートします。

2年2か月ぶりに青森県八戸市にやって来ましたぁ!!
九州在住の私が東北地方、しかも青森県に再び訪れることになるとはまさに予想外でしたが、大きな艦艇イベントが開催されるとあっては駆け付けない訳にはいきません。2年前と同様、飛行機と東北新幹線を乗り継いで、大分から約1850km彼方の八戸の地に降り立った次第です。

前回は全く土地勘のない場所、しかも東北・青森とあって色々な不安がありました。しかし遠征時に港の位置港への交通手段撮影活動に好立地なホテル、果てはコンビニの場所など様々なデータを採っていたので、今回は安心かつスムーズに遠征計画を立案することができました。
言うなれば、八戸はもう“私の庭”同然なのです(笑)
八戸に到着したのはマリンフェスタ前日の午後8時過ぎ。翌日は午前7時過ぎに宿泊先のホテルを出発して、午前7時40分頃に八戸港八太郎1号埠頭に到着しました。
八戸港は八戸市街地(本八戸)や八戸駅から遠く離れており、にも関わらず、交通手段は自動車を除けば1時間に1本程度のバスのみという“辺境”にあります。しかも、最寄りのバス停が遠いのなんの…。八戸港に行く場合は、時間に十分な余裕を持って行動することを強く推奨いたします。

開場までしばらく埠頭の門の前で待ちます。待っていると、何処かの部隊帽を被ったおじさんがやって来て私に何か言うのです。
「※#%&@☆Д□☆*◇」。あまりに凄まじい東北弁を、九州人の私は全く理解することができませんでした…(苦笑)
「さっきのおじさんはいったい何と言っていたのだろう…?」と考えを巡らせていると、潜水艦が岸壁を離れて行くのが見えました。
「そうりゅう」型潜水艦5番艦の「ずいりゅう」です。

「ずいりゅう」は今年3月に就役した最新鋭艦で、「そうりゅう」型で初めて横須賀に配備された艦としても注目されています。
個人的には、20年以上前にハマったシュミレーションゲーム「提督の決断」で、攻撃機100機を搭載する新開発の最強空母「瑞龍」と名付けたことがあり、その点でも非常に親しみを感じる艦です(笑) 「そうりゅう」よりも名前の響きが素敵とさえ感じます。

この「ずいりゅう」、これから実施される体験航海にどのように絡んでくれるのか…非常に楽しみです♪
開門と同時に、本日の体験航海でお世話になる艦へまっしぐら。今回私が乗艦するのは…イージス護衛艦「みょうこう」です。
1ヶ月半前の舞鶴遠征(舞鶴地方隊展示訓練)で、お姿をたくさん撮影させていただきましたが、またイベントでご一緒することになりました。今年の夏は不思議と「みょうこう」と縁があります

私はこれまでに体験航海や展示訓練で「こんごう」(2009年大分)、「きりしま」(2011年大阪)、「ちょうかい」(2011年舞鶴ほか)に乗艦した経験があります。本日の「みょうこう」乗艦で、「こんごう」型4隻をすべて制覇することになります。
今回のマリンフェスタで、私は幸運にも「みょうこう」と「あしがら」の乗艦券が当たりました。そして、ある理由で「みょうこう」に乗艦することを選択しました。その理由とは…。
午前8時40分に乗艦が始まりました。
埠頭に早く着いたため、乗艦開始直後に「みょうこう」に乗ることができた私、定石通り撮影のベストポジション=左舷後方部に陣取りました。実は乗艦待ちの列に並んでいる時に、私の傍を「みょこう」の副長さんが通りがかったので尋ねたところ、展示の大部分は左舷側で行われるとのこと。情報収集と陣地確保…ここまではとても順調です♪

それにしても次から次に人がやって来ます。出港時刻が迫り、「航海当番配置に就け」が下令された後も人が来ます。桟橋の撤去作業中にもまだ人が来ました。まったく、もう…。
艦艇の体験航海に参加する際には、乗艦券に記された出港時刻の15〜20分前には乗艦を済ませましょう!
午前9時45分、「みょうこう」は岸壁を離れました。乗組員が艦橋に報告するのを聞いたところ、約700人が乗艦しているようです。
甲板上を見渡すと、一眼レフカメラを手にしたマニア風の乗艦者はごく僅か。大半がレジャー施設にいるような親子連れや、あまり艦艇には縁がなさそうなおじさんおばさんです。そのせいか、なかには乳幼児を連れている人がいたり、艦艇に乗るにはふさわしくない服装の人(ミニスカにハイヒールの女性も)がいたりと、本当に何処かのレジャー施設のようでした…(苦笑)

恐らく、乗艦券が八戸市内や青森県内で大量に配布され、“無料の遊覧船”ぐらいのつもりで乗っている人が多々いるのでしょうね…。まあ、そのような方々に海自への理解が深まれば、これはこれでいいのかもしれません。
「みょうこう」はゆっくりと港外へ。振り返ると、八太郎4号埠頭を出港した輸送艦「しもきた」が後続しています。
その横に接岸してるのが見える2隻はイージス艦「あしがら」試験艦「あすか」で、「あしがら」は間もなく出港、「あすか」は一般公開担当艦のため埠頭でお留守番です。

今回のマリンフェスタには12隻が参加、このうち「みょうこう」「あたご」「あしがら」「しもきた」「くまたか」「わかたか」「ずいりゅう」の7隻が、7日(初日)の体験航海に“出撃”します。また、多用途支援艦「すおう」など小型艦艇4隻が海面警戒にあたります。
大湊地方隊開隊60周年記念イベントなのですが、大湊所属艦は海面警戒にあたる4隻のみという状況…。「まきなみ」「すずなみ」「ちくま」は何処に…参加して欲しかったなぁ。
「あたご」「あしがら」も出港し、我が「みょうこう」「しもきた」に後続すべく増速します。←は先に出港した「あしがら」が速力を落として「あたご」を先行させた場面です。
まだかなり距離があって残念ではありますが、いきなり今遠征の最大の目的である「あたご」姉妹の2ショットです。痺れます…♪

今回私が遥々東北・八戸まで遠征した目的のひとつは、「あたご」「あしがら」の2ショットを撮ることです。両艦は就役以来、別々の母港、別々の護衛隊に所属していて2隻が揃うことはまずないからです。恐らく、就役後初の2ショットではないでしょうか?
私と同様に、「あたご」姉妹の競演をお目当てに八戸フェスタに来ているマニアはかなり多いと思われます。
増速した「あたご」と「あしがら」が追い付いてきました。両艦は「しもきた」に後続します。どうやら我が「みょうこう」を先頭に、「しもきた」「あたご」「あしがら」の順で隊列を組むようです。

う〜ん、予想外だ…(汗)
「しもきた」にはフェスタの統裁官である大湊地方総監・槻木海将が乗艦しているので、当然「しもきた」が隊列の先頭に立つと考えておりました。で、「みょうこう」は隊列の2番目で、「あたご」「あしがら」姉妹の競演を至近距離から狙えると目論んでいたのですが実際には「しもきた」が間に挟まる形となったばかりか、姉妹とはかなりの距離があります。
考えようによっては、「あたご」姉妹に大型輸送艦が絡むという珍しい絵が撮れる訳ですから、気持ちを切り替えて撮影続行です。
隊列は航行中に幾度となく大きく変針するので、そのたびに我が「みょうこう」に後続する3隻が一直線になって航行する“絶景”を目にすることができます。そして、そのたびに私もカメラが壊れんばかりの勢いでシャッターを切ります。

いつもなら甲板上にシャッター音がこだまする状況なのですが、今回は先に述べた通りの乗艦者ですから、興奮して撮影しているのは私を含めてごく僅か、代わりに「あ〜あ、カメラ持って来れば良かった〜」という声がそこかしこから聞こえてきました。
カメラも持っとらんのかい!!(苦笑)
そんな乗艦者もさすがに写真を撮りたくなったのか、携帯スマホで撮影する人が出現。中にはi・padで撮影する人も。大きな筐体に風をもろに受けて海に落としそうになっていました(苦笑)
「しもきた」は出港以来、もうもうと煙を吐きながら航行します。
特に増速するために機関の出力を上げた際には、←のような猛烈な黒煙を吐き出します。まるで蒸気機関車のようです…。
これは、「おおすみ」型輸送艦の機関がディーゼルエンジンであるためです。V型16気筒エンジンを2基積んでいます。

そんな事はつゆ知らずの乗艦者たち、「なんじゃあのフネは!エコじゃないぞ〜」とか「環境破壊だ!」とか「あんなに煙を吐く古いフネはスクラップにしてしまえ!」とか言いたい放題。
一方で、少し前にニュースを見て知ったのか、「しもきた」を見て「『いずも』だ!」と叫ぶ人もいて、甲板上はちょっとしたお笑いライブの会場と化していました(笑)
八戸港を出港して1時間あまり、これより展示が始まります。
第一弾はミサイル艇の高速航行です。最初にやって来たのは「わかたか」です。「はやぶさ」型ミサイル艇の2番艇で、私とは初対面です。「やっとお会いできましたね」と呟きながらシャッターを連射、うねる海面を白波を蹴立てながら爆走する雄姿が撮れました。カッコいい!!

1番艇「はやぶさ」と同日に就役した「わかたか」は、「はやぶさ」と共に舞鶴に新編された第2ミサイル艇隊を編成。その後、ミサイル艇1号・2号の退役に伴い2008年に第1ミサイル艇隊(余市)に異動しました。「わかたか」という名から、海幕の編成担当者は「いずれはホークス(若鷹)の地元・九州(佐世保)に配備したい」と考えたそうですが、九州とは真逆の余市に行ってしまいました。
「みょうこう」を左舷後方から追い抜いた「わかたか」は180度変針。いや、変針と言うよりもドリフトターンと言った方が最適な物凄い曲がり方です。ミサイル艇の縦横無尽の爆走っぷりは、何度見ても気持ちがいいものです。まさに、ミサイル艇の高速航行は広報展示の花形ですね♪

海自には現在3つのミサイル艇隊がありますが、この「わかたか」が所属する余市の第1ミサイル艇隊は、元々は北方から迫り来るソ連艦隊を迎撃するために1993年に発足、3隊の中では最も歴史ある部隊です。現在は「わかたか」と「くまたか」の2隻が所属していますが、かつては水中翼船タイプのミサイル艇1号型が3隻配備されていました。第1ミサイル艇隊は昔も今も、北方からの脅威に対する“守りの一番槍”なのです。
「わかたか」に続いて「くまたか」が登場。「わかたか」に負けじと、うねりをもろともせず海上を駆け巡ります。この艇は就役以来ほぼ毎回のように観艦式に参加して高速航行を披露しており、艦艇マニアにはすっかりお馴染みの艇です。
海上を40ノット以上の高速で航行する際の艦の動揺はすさまじく、艦橋でシートベルトを締めずに座席に座ろうものなら、天井に頭をぶつけるということです。恐ろしい…。

2隻のミサイル艇は高速航行の最後にIRデコイを発射したのですが、今回も撮影に失敗しました。舞鶴での失敗の教訓はまったく生かされませんでした…(苦笑) 誰か、IRデコイ発射時の上手な撮影方法を教えてください!!
2隻のミサイル艇が展示を終えて去って行っても、縦横無尽に爆走した余韻が冷めやらぬといった感じです。さて、次はどんな展示が実施されるのでしょうか…胸が高鳴ります♪

展示が行われている間も我が「みょうこう」の後を「しもきた」「あたご」「あしがら」と続きます。大型艦3隻が航続する光景は、なかなか威風堂々とした素晴らしい光景ではありませんか!一見、観艦式かと見まちがえるほどの豪華な隊列です。
このフェスタは大湊地方隊60周年記念ではありますが、八戸にイージス艦3隻を含むこれだけの艦艇が集まりイベントが開かれるのは、やはり震災とは無関係ではないようです。今だ復興途上にある東北の人たちを激励したい―今回のフェスタは、言うなれば東北の人たちに対する海自の激励なのではないでしょうか。
展示第二弾は飛行展示です。
最初に現れしは対潜ヘリコプター・SH‐60Jです。もはや説明は不必要と言えるほどお馴染みのヘリです。画像では判別しづらいのですが、垂直尾翼に「25」という数字が記されており、この機体が大湊に所在する第25航空隊所属機であることが分かります。

第25航空隊は第21航空群(館山)の隷下部隊で、対潜ヘリSH‐60Jを運用して津軽海峡の防備を担当しているほか、大湊を母港とするヘリ搭載護衛艦に派遣されて対潜作戦にあたります。
1956(昭和31)年に編成された大湊地方隊隷下の大湊航空隊が前身の歴史ある部隊で、2008年の航空集団改編で21空群隷下に編成替えされ、名称も第25航空隊に変更しました。
続いては救難ヘリコプター・UH‐60Jです。アラートオレンジの機体が、雲で白っぽい空を背景に強烈な存在感を放ちます。
海自において東日本を活動範囲とするUH‐60Jは館山の21空群第72航空隊の所属ですが、この機体は恐らく大湊航空基地に所在する第72航空隊大湊航空分遣隊の所属機と思われます。

一方、西日本をエリアとするUH‐60Jは大村の22空群第73航空隊に所属しており、同隊は徳島鹿屋に分遣隊を置いています。
ヘリコプターによる救難というと航空自衛隊の専売特許のように思いがちですが、海自にもしっかり部隊があり、空自の部隊に勝るとも劣らない厳しい訓練を重ねています。
ちなみに、空自のUH-60Jの機体塗装はイエローで、最近では青い洋上迷彩を纏った機体も増えています。
UH-60Jに続いて陸自の観測ヘリOH-1と空自のF-2戦闘機が飛来しましたが、海自以外は興味がないので省略します(笑)
そして、いよいよ真打が登場、哨戒機P-3Cです。
この機体、展示海域から目と鼻の先にある八戸航空基地に所在する第2航空群の所属機です。

第2航空群は最も北に位置する固定翼哨戒部隊で、日本海北部と北海道周辺の警戒監視を担当しています。また、気象庁への業務支援として冬季に北海道周辺の流氷観測も行っています。
考えてみれば、大湊には対潜ヘリと救難ヘリ、八戸には哨戒機と青森県は海自航空部隊の一大拠点といえますね。その背景には、重要海峡である津軽海峡に面するとともに、北海道周辺の北方海域に近いという地理的な特性があると考えられます。
P-3Cは「みょうこう」の上空を通過後、IRフレアを発射しました。
その発射の瞬間を奇跡的(というか偶然)に撮影することができました。私はこれまでIRフレアを真横からしか見たことがなかったのですが、後ろから見るとこんな感じだったんですねぇ。

真横から見るフレアの放物線はとても美しいのですが、後ろから見るハの字型のフレアは得も言われぬ迫力があります。「窮地に追い込まれた際に使用する防御兵器」という、IRフレアの本質を垣間見たような気がしました。
敵の赤外線ホーミング誘導ミサイルを回避するための兵器で、フレアが火の玉状なのは、エンジン排気口から出る赤外線と同じ赤外線を出しながら燃えているからです。また、数多くのフレアを放出するのは欺瞞効果をより高めるためです。
P-3C通過後、空から海面上に目を落とすと、遠くから黒い物体がゆっくりと近づいてくるではありませんか…。
潜水艦「ずいりゅう」、ここで登場です
浮上したままセイルパスをするだけかと思いきや、艦首部分から海面下に潜りはじめ、最後は完全に海中に姿を消しました
←は今まさに潜航しようとしている瞬間で、艦首部分はすでに少し海面下に没しています。

5隻目にして早くもネタ切れ感がある「そうりゅう」型の艦名ですが、疑問なのは、「そうりゅう」が復活したのになぜ「ひりゅう」が復活しないのかという点。「ひりゅう」では文字数が揃わないから?あと「かいりゅう」(海龍)もすごくいい名だと思うのですが、特攻兵器の名でもあるので、これも採用されないでしょうね…。
「ずいりゅう」が通り過ぎた後、一本の矢の如く単縦陣で整然と航行していた隊列に変化が顕れました。
各艦は一斉に左回頭、しばらく4隻が並走したのち、殿艦だった「あしがら」が再び左回頭。続いて「あたご」「しもきた」「みょうこう」の順で左回頭。そう、航行順序をそっくり逆転させるのです。

←は、「あしがら」が2回目の左回頭をしながら隊列の先頭に出ようとしているシーン。「あたご」も今まさに再回頭しようとしています。まさに“くろがねの城”と呼ぶにふさわしい「あたご」と「あしがら」。その姉妹2隻が、いま目の前で艦隊絵巻を共演しているのです。八戸まで来て良かったぁぁ!!(感激)
2年前の八戸遠征は「あたご」がお目当てでした。そして今回は「あたご」姉妹。私は“「あたご」フェロモン”に弱いようです(笑)
艦隊運動が完了し、「あしがら」「あたご」「しもきた」「みょうこう」の順に航行する隊列に変わりました。
この隊列で八戸港に戻るのかと思いきや、実はこのあと「みょうこう」が一気に増速して前方の3隻を抜き去るという、マニアにはたまならいシーンが予定されているのです。楽しみ〜♪

もう既にお気づきと思いますが、天候があまり良くありません。沖合いに進むに連れて次第に雲が厚くなり、実は展示の少し前から小雨がぱらついているのです。
考えてみると、7月の舞鶴は海を覆うモヤに悩まされ、8月の呉地方隊展示訓練は大雨で中止、そして今回の八戸フェスタも曇天&小雨というあいにくの天気…2013年シーズンはまったくと言っていいほど天候に恵まれませんでした(涙)
カメラを構えて「みょうこう」が増速するのを今か今かと待っていたら、前方から「グオ〜ン」という重低音のエンジン音が聞こえてきました。救難飛行艇US-2です。おおっ!
機首には「01」の数字が…US-2の記念すべき初号機ではありませんか!!初号機をここで見れるとは…八戸に来て良かった!

初号機は2004年3月に防衛庁(当時)に納入され、9ヶ月後に納入された2号機とともに、約3年半に渡って性能試験部隊での運用試験に携わりました。US-2の量産機は3号機からで、この初号機と2号機は試作機という位置づけになります。
初号機は当初は白地に赤ラインが入った「JAL仕様」と呼ばれる塗装を纏っていました。ちなみに、2号機は青いラインが入った「ANA仕様」でした。現在の濃緑色は3号機から採用されました。
US-2が過ぎ去ったあと「みょうこう」は一気に増速、前方を航行する「しもきた」を抜き去りにかかります。そして、2隻が並んだその時、「みょうこう」が「しもきた」に座乗する大湊地方総監・槻木海将に敬礼を行います。
「パァ〜♪パァ〜♪パッパカパッパッパァ〜〜♪」

「しもきた」の艦橋露天部では、槻木海将が「みょうこう」からの敬礼に対し、美しい答礼で応えます。
槻木海将は8月22日に着任したばかりで、前職は海自補給本部長でした。経理・補給畑を歩んできた方で、補給本部長のほか海幕総務部長、第4術科学校長、海幕経理課長などを歴任してきました。一方で艦艇部隊指揮官の経験はないことから、今回の大役に槻木海将も心が躍っているのではないでしょうか?
「みょうこう」に追い抜かれた「しもきた」ですが、そのまま「みょうこう」に後続します。後続するために増速したその時、煙突からこれまでとは比較にならないくらいの大量の煙を吐き出しました。しかも、凄まじいほどの黒い煙です。
「あんのフネぇ、ついに壊れたんだべ〜」。私の近くにいたおじさんが朴訥とした東北弁で呟いたのには笑いました。
壊れたと勘違いされてもおかしくないほどの異常な煙ですねぇ。←の画像なんて、右舷に直撃弾を喰らって炎上しているように見えてしまいます…(苦笑)

ところで、「しもきた」の艦名の由来となった下北半島って青森県ですよね。「おおすみ」型3隻の中で「しもきた」がフェスタに参加し、さらに栄えある“旗艦”まで務めている理由はそこでしょうね。
先頭を航行する「あしがら」は行き脚が止まるくらいにまで減速し、「みょうこう」「しもきた」「あたご」を先行させます。
最新型のイージス艦ながら弾道ミサイル防衛には非対応である「あたご」型ですが、BMD改装が予算措置され、米国もイージスシステムアップグレードの有償援助調達を既に承認しています。今後、数年以内に「あたご」と「あしがら」はBMD艦に改装され、“艦隊の盾”から“国土の盾”へとその役割を拡げます。

先代にあたる帝国海軍の重巡「足柄」は、1932年のジョージ6世戴冠記念観艦式に招待艦として英国に派遣され、その精悍かつ攻撃的な艦容から“飢えた狼”というあだ名をつけられました。
この「あしがら」もこの角度から見ると、先代に負けず劣らずの精悍な佇まいだと思います。まさに“艦隊を守る狼”です。
「あたご」は「しもきた」の後ろに付き、3隻を先行させた「あしがら」は「あたご」に後続します。こうして再び隊列の順序が入れ替わり、出港時と同じ隊列となりました。
「ずいりゅう」通過後から始まった二度にわたる隊列順序の入れ替えは、迫力ある見事なまでの艦隊運動でした。3隻のイージス艦と大型輸送艦による艦隊運動なんてそうそう見られるものではないので、本当に貴重な経験です。繰り返しになりますが…八戸まで来て良かった〜!!

艦隊はこれから約1時間かけて八戸港へ戻ります。展示海域から港までの距離が時間にして60分程度というのは、退屈しないちょうどいい距離です。7月の舞鶴では何も撮る物がない海原を2時間半以上も航行し、退屈のあまり気絶しそうになりましたから…。
八戸港に戻ってきました。港内には「しもきた」が先頭で入港します。航行中に「しもきた」は我が「みょうこう」を追い抜いて、先頭を航行していたのです。相変わらず黒い煙を吐いてます(苦笑)

「しもきた」は「みょうこう」が接岸する1号埠頭より奥にある4号埠頭に接岸すること、さらに、総監がお招きした来賓を少しでも早く艦から降ろすために、いの一番に入港したものと思われます。

おととしの東日本大震災で、八戸は震度5強の揺れに見舞われ、6mを超える津波も襲来しました。震災から4か月後だった前回遠征時には、港内の岸壁や堤防が多々破損していましたが、今回ざっと見回したところ、目立った破損個所はありません。ここ八戸においては、復興は着実に進んでいるようです。
「みょうこう」の接岸作業中、直後を航行していた「あたご」が、すぐ傍を通過して行きました。「あたご」は「しもきた」と同じ4号埠頭に接岸します。この4号埠頭は、2年前に「あたご」と「まきなみ」「せとぎり」が寄港し、一般公開と体験航海を行った岸壁です。

不遇な境遇に置かれていた「あたご」がようやくイベントに参加するとあって駆け付けた前回の遠征から、もう2年も経つのですねぇ。ついこの前のような気がしますが…(笑)
で、その八戸遠征の翌年(昨年)は観艦式で乗艦、そして今年は八戸で再会…私とはめちゃくちゃ相性のいい艦です。不遇のどん底時代を直に見てきた私としては、イベントで多くの市民やマニアを乗せる「あたご」を見ると、心の底から嬉しくなります
「あたご」さん、来シーズンもまた何処かの港でお会いしましょう!
殿艦の「あしがら」も入港。「あしがら」は我が「みょうこう」の横に目刺し係留するので、減速しながらゆっくりと近づいてきます。
城郭のような堂々たる艦橋構造物を有する巨艦が、目の前でぐんぐんと迫ってくる光景はまさに大迫力!痺れます!
「みょうこう」では桟橋の準備が整い乗艦者の下艦が始まりましたが、私は「ごちそうを目の前にして艦を降りてなるものか」と、ひたすらシャッターを切り続けます。

この「あしがら」は、いま私が乗っている「みょうこう」と同様、今シーズンたびたび撮影の機会に恵まれた艦です。
今回、「あしがら」の乗艦券も当選していたものの、撮影位置の関係から「みょうこう」乗艦を選んでしまいましたが、また近いうちに乗艦できることを切に期待したいと思います。
「あしがら」の接舷シーンの撮影を終え、午後2時20分に岸壁に降り立ちました。私を乗せてくれた「みょうこう」に感謝の気持ちを捧げつつ、艦尾方向から撮影を行います。甲板上やマスト上では、早くも夜の電灯艦飾の準備が進められています

「こんごう」型4隻の中で唯一これまで乗艦経験がなく、撮影機会にも恵まれなかった「みょうこう」ですが、今シーズンついに乗艦が叶い、これまでの巡り合わせの悪さを一気に挽回するほどの充実した撮影ができました♪ 「みょうこう」、ありがとう!
イベントが終われば、再び厳しい訓練と大変な任務に邁進する日々に戻るのでしょうけど、“日本海の盾”として大陸や半島から我が国を脅かす連中に睨みを効かせて欲しいと思います。
マリンフェスタin八戸は夕刻まで行われており、お留守番役の「あすか」の公開が実施されているほか、午後3時からは体験航海から戻った「みょうこう」の公開も行われます。
また、フェスタは2日間実施されていて、明日は「みょうこう」と「あしがら」のみが参加して、内容が大幅に簡略化された“文字通りの体験航海”が実施されます。

私は体験航海には参加せず、埠頭で航海に参加しない潜水艦やミサイル艇、さらに「みょうこう」「あしがら」の出入港シーンの撮影を行う予定です。明日も楽しくなりそうです♪
「頑張れ!東北」「負けるな!東北」との想いが詰まった八戸フェスタ。来年もその先も、東北を励ますべく艦艇が全国から八戸に集合して欲しいものです。もちろん、私も駆け付けます!

「頑張れ!東北!」の想いがこもった重量級イベントは、1800km移動の苦労も吹き飛ぶほどの充実ぶりでした。