2015自衛隊観艦式〜事前公開2・展示 帰投編


艦艇部隊・祝賀航行部隊への観閲が終了し、引き続き航空部隊への観閲と訓練展示が実施されます。
3日前の事前公開1とは異なり、観閲付属部隊に属する「とね」からは訓練展示の模様がよく見えました。

午後12時21分、航空部隊への観閲が始まりました。
観閲を受ける航空機の機種と順序をご紹介しますと…@P-1(受閲航空部隊指揮官=航空集団司令官座乗)、ASH-60JSH-60KUH-60J、BMCH-101MH-53E、CAH-1DCH-47(陸自)、DTC-90、EP-3C、FP-1、GC-130R、HF-2(空自)、IF-15J(空自)、JP-8A(米海軍)、KMV-22(オスプレイ・米海兵隊)となっており、総参加機数は37機にのぼります。

上空はご覧のような、晴れとも曇りとも言えない微妙な状態。低視認性塗装の機体が空に溶け込んで、カメラのAFが思うように合いません。もしかしたら私の技術が稚拙なだけかも知れませんが…。
逆に赤い塗装を纏ったUH-60Jはよく目立っています。救難機は視認性を上げることで、被救難者を安心させる効果もあるのです。
本稿では事前公開1編では省略した航空機をご紹介。
こちらは新型輸送機C-130Rです。老朽化したYS-11Mの代替機として昨年度6機が導入されましたが、元々は米海軍の輸送機・KC-130Rの未使用中古機で、導入にあたっては機体・電子機器のオーバーホールと空中給油装置の撤去といった工事が施されました。
他の海自機同様に低視認性塗装を纏っていますが、新型哨戒機P-1と共通したやや青味の強い色合いとなっています。個人的には、この塗装は“海軍機らしさ”が出ていてすごくいいと思います。

全機が厚木基地に所在する海自唯一の輸送航空隊・第61航空隊に所属しており、日本各地に人員・物資を輸送する任にあたっています。とりわけ硫黄島・南鳥島への定期便は、現地に駐在する自衛隊員にとっては、文字通り“命綱”・“生命線”と言うべき存在です。
空自機・F-2戦闘機です。元々は純国産機としての開発されるはずでしたが、日米貿易摩擦等の政治的な問題によってアメリカとの共同開発機となりました。ロッキード・マーティン社製のF-16戦闘機をベースとしていますが、随所に日本の最先端技術が散りばめられた傑作機です。三菱重工が開発・製造したことから、航空機ファンからは「平成のゼロ戦」と呼ばれているそうな…。

かつては支援戦闘機(=攻撃機)と呼ばれていましたが、空自が2005年に「支援」と「要撃」の区分を廃止したことから、現在は要撃任務にも使用されています。
機体に施された青い洋上迷彩が特徴ですが、元々は対艦攻撃を主任務とする支援戦闘機だったためこの塗装を纏っています。先代の支援戦闘機F-1は、なぜか陸上迷彩が施されていました。
こちらはお馴染みの空自戦闘機・F-15Jです。現在、単座型・複座型合わせて201機が運用されている空自の主力戦闘機です。米マクダネル・ダグラス社のF-15を、空自向けに三菱重工がライセンス生産した機体で、基本性能の優秀さ高い拡張性により、現在まで実に30年以上に渡って空自主力戦闘機の座を占めています。

かつては要撃戦闘機と呼ばれていましたが、「要撃」と「支援」の区分が廃止された現在でも主として対領空侵犯措置任務に就いています。まさに“日本の空の番人”とも言える存在なのです。
相性は「イーグル」で、このF-15を操るパイロットは「イーグルドライバー」と呼ばれます。思い起こせば私が大学生の頃、織田裕二扮するイーグルドライバーが航空隊のナンバー1を目指すという、日本版「トップ・ガン」のような映画がありました。懐かしい…。
午後12時31分、航空部隊への観閲が終了。観閲部隊と付属部隊の隊列は180度ターンし、進路を西から東へと変えます。
変針点に到達した先導艦「むらさめ」が反転を開始、続いて観閲艦「くらま」も変針点に達すると、「むらさめ」が海面に残した航跡をトレースするかのように、寸分違わぬ進路で反転していきます。

ある意味、観艦式で最大の見せ場とも言える大反転ですが、一番最初に反転する「むらさめ」がおかしな進路で反転しようものなら、艦艇による反転の輪がぐっちゃぐちゃになってしまいます。それだけに艦が変針点に達してから反転が終了までの間は、「むらさめ」の艦長は言い知れぬ緊張感に襲われるのではないでしょうか。
ただ、そこは鍛え抜かれた技量をもって見事なタイミングと進路で反転、本番日でもこの見事な反転を見せて欲しいものです。
「むらさめ」の後を追って反転中する「くらま」ですが、その姿は観閲艦にふさわしい威風堂々としたものがあります。新型DDHの「ひゅうが」「いせ」「いずも」が就役しても、この「くらま」には歴史を重ねた艦が持つ独特の重厚感と雰囲気があり、その存在感が霞むことはまったくありません。今はむしろ、一隻のみとなった旧式DDHとしての存在が、海自艦の中にあって強烈な個性を放っています。

今回が観艦式最後の参加となりますが、姉の「しらね」が最後の観艦(2012年)においては受閲部隊の中の1隻だったのに対し、「くらま」は最後も観閲艦を務めます。まさに「くらま」は、生涯の最晩年に至るまで栄光に包まれていると言っても過言ではありません。
3年後の次回観艦式では、このタイプのDDHの姿を見ることはできません。皆さん、「くらま」の“最後の晴れ姿”を心に刻んでください。
私が乗る「とね」も左に大きく舵を切ります。すると、「くろべ」「こんごう」「きりしま」という付属部隊の艦と、受閲後に反転して付属部隊の隊列に加わった「いずも」が後続しているのが見えました。
2隻のイージス艦に新型DDHという、艦艇ファンなら心が躍らずにはいられない素敵な光景です♪ 一方で、それらの艦の前を航行する「くろべ」は何となくユルい雰囲気…いかにも強そうなイージス艦やDDHとの雰囲気の落差に思わず笑ってしまいます。

この光景、何となく昔に見たことがある気がします。「いずも」の航行シーンを見るのは初めてなのにどうして既視感があるのだろうと思ったのですが、よくよく考えれば、中高生の頃に雑誌「丸」「丸スペシャル」で見た高雄型重巡に翔鶴型空母が後続している写真によく似ているではありませんか。まさに日本海軍、ここに復活です。
「とね」に続いて「くろべ」も舵を切って反転進路に入ります。その背後では、同じタイミングで観閲部隊に属する「てんりゅう」が反転しており、2隻の訓練支援艦が一枚の画像に収まりました
母港・呉では仲の良い姉妹のように2隻で並んで停泊していることが多い両艦ですが、訓練支援艦という性格上、2隻が一緒に航行している光景はほとんど目にすることはありません。かく言う私も、航行中のこの2隻を一枚の画像に収めるのは初めての経験です。

大学3年生の時、就役直後の「くろべ」を呉で見たのですが、パゴダ状のマストを有する当時としては特異な艦型を目の当たりにして、「なに、この変な形のフネ?」と思ったのを昨日の事のように覚えています。当時、呉には「あづま」という、もう一隻の訓練支援艦がいましたが、こちらの方がスマートで格好いいと思ったほどです。
「くろべ」に続いて「こんごう」も反転進路に入ります。このように後続する艦が次々と変針点に到達し、舵を切って反転する光景は、訓練展示に勝るとも劣らない観艦式の見どころであります。
巨大な艦橋構造物を有する「こんごう」型ですが、この距離・角度から見ると、艦橋構造物と船体のバランスがちょうど良く、とても精悍でスタイリッシュな佇まいとなっています。1番艦の就役から22年、企画・設計時からは30年近くに達しようかというのに、艦容に古さを全く感じさせないのは、デザインが優れている証左といえます。

画像左下に手すりが写り込んでいますが、実は「あぶくま」型DEは艦尾が跳ね上がったデザインなので、後方にカメラを向けると高い確率で手すりが写り込んでしまいます。ただ、写り込み方次第では結構味のある一枚になるので、悪いことばかりではありません。
「きりしま」も反転を終え、2隻のイージス艦が「とね」に後続します。
↑では艦橋構造物と船体のバランスがいいと述べましたが、逆に正面から見ると、艦橋構造物は船体に対して非常にトップヘビーで、今にも転覆しそうに思えるほどのアンバランスな艦容です。見る角度で印象が大きく変わるのも「こんごう」型の魅力といえます。

就役22年になる「こんごう」は海自初のイージス艦で、乗組員は自らの艦を『The First Japanease AEGIS Ship』と銘打って、艦への深い愛情と高い誇りを持って勤務しています。長く勤務する曹士が愛情を持つだけでなく、頻繁に異動する幹部でさえも何度も勤務する人が多いことから、「こんごう」乗組員の自艦への愛情は他艦の追従を許しません。前編でご紹介した副長も「こんごう」には3度目の勤務で、将来は「こんごう」艦長になるのが目標とのことです。
祝砲を撃ちながら「しまかぜ」がやって来ました。我が「とね」の真横を通過したのは、4発目の射撃を行っている時でした。
今回、祝砲射撃を実施するのはこの「しまかぜ」1隻のみですが、仲間がいない憂さを晴らすかのように、やたらめったら撃ちまくっているような印象を受けます(笑) もちろん、無茶苦茶に撃っている訳ではなく、51番砲と52番砲を交互に35秒間隔で撃っています。

乗艦前からはしゃぎまくっている例の女の子ですが、相変わらずのはしゃぎっぷりです(苦笑) 艦を知ってその魅力に憑りつかれているのかと思いきや、「護衛艦『しまかぜ』が祝砲を撃ちながら近づきます」という艦内アナウンスに、「『しまかぜ』ってどのフネぇ〜?」というリアクション。あれだけはしゃいでいながら、「しまかぜ」を知らんのかい!いったい最近の海自ファンって何なのでしょう?
潜水艦「こくりゅう」です。潜航して接近してきた「こくりゅう」は、観閲艦「くらま」の手前でいったん浮上、セイルパス状態でしばらく航行し、我が「とね」の真横で再び潜航を始めました
既に艦首からセイル前面までの船体は海中に没しており、このあと徐々にセイル中段と船体後部が見えなくなり、最後はセイル上段と潜望鏡のみを海面に残して通り過ぎていきました。その後ほどなく、艦全体が海中に潜ったものと思われます。

3日前の事前公開1では祝砲射撃や潜水艦の浮上・潜航は全くと言っていいほど見えませんでしたが、今日の「とね」は“観客席”である付属部隊の艦なので、ベストとは言えないものの、展示がかなりよく見えます。このように、観閲・同付属部隊の艦と受閲部隊の艦では、訓練展示の見え方に大きな差が出るので注意が必要です。
左舷前方を航行する観閲艦「くらま」から、白煙が立ち上りました。
「何事か!」と見ていると、白煙の中からミサイル艇が飛び出してきました。3隻のミサイル艇は「くらま」に斜め方向から高速で接近、最接近したところでIRデコイを炸裂させて右に変針、そしていま白煙の中から飛び出したのです。韋駄天ぶりを如何なく発揮です!

「くらま」と比べると、ミサイル艇がいかに小さな艦(フネ)がお分かりになるかと思いますが、その小さな艦が高速で縦横無尽に駆けまわり、乗艦者の視線を釘付けにするのですから、これ以上痛快なことはありません。日ごろは“海のスクランブラ―”として、人目のつかない所で息の抜けない任務に就いていますが、観艦式におけるこのパフォーマンスは、まさに“3年に1度の晴れ姿”といえます。
いいぞ、ミサイル艇!もっとやれ!!(笑)
後方から3機のP-3Cが飛んで来ました。3機は高度200フィート、速度200ノットで飛行し、それぞれの機が投下目印としている艦の真横に達した際に150kg対潜爆弾を投下、その後各機とも300ヤード間隔で計4発を投下していきます。この展示も3日前の事前公開1では全く見えなかったのですが、今日はP-3Cからの投下の瞬間から着水・爆発まで一連の流れがとてもよく見えます。

爆弾は着水して2秒後に「ゴワン!」という音を伴って炸裂、海面に凄まじい勢いで水柱を立てます。その数秒後には爆発による水圧が我が「とね」にも押し寄せ、「ズコーン!ズコーン!」という金属音とともに船体を揺らします。この凄まじい水圧によって、爆弾が直撃しなくても至近弾で敵潜水艦を殲滅することができます。また派手な水柱が立つので、不審船舶に対する警告にも使用されます。
続いて2機のP-1が飛来、500フィートの高度から60発のIRフレアを投下して行きます。60個ものオレンジ色の火の弾が放物線を描いて落下していく光景はもはやアートの領域、訓練展示の中でも最も大きな歓声が「とね」艦上にこだましました。
観客にはアートにすら見えるIRフレアですが、本来の用途は機体が赤外線誘導ミサイルに追尾されている際の欺瞞で、その美しさとはうらはらに、機体と搭乗員に最悪の危機が迫っている時の”頼みの綱”なのです。そう思うと、この美しさに複雑なものを感じます。

3年前の前回まではP-3CがIRフレア投下を担当しており、観艦式初参加のP-1がいきなり注目度の高いこの展示を引き継いだことになります。観閲官送迎用のヘリがMCH-101に交替するなど、こと航空機に関しては世代交代を印象付ける観艦式となりました。
IRデコイの白煙の中から飛び出した3隻のミサイル艇が戻ってきました。約40ノットの高速で各艦を抜き去っていく姿は、「IRフレアよりも私たちを見てよね!」と元気に主張しているようです。空に描かれたIRフレアの美しさに酔いしれた直後にミサイル艇が海上を爆走する…これはまさに“感動の三次元運動”です。

このミサイル艇の航行もLCACと同様に、悪天候だと中止になるそうですが、6年前(2009年観艦式)の嵐のような猛烈な時化の中でもミサイル艇が爆走したことを考えると、いったいどのレベルの悪天候になれば中止になるのだろうと思ったりもします。もはやミサイル艇が航行中止になるような悪天候は、観艦式自体が中止になるほどのレベルだと思うのですが…。6年前は時化による大波がミサイル艇の船体を飲み込み、航行中の姿が見えなくなる程でした。
展示の最後はブルーインパルスです。演目を披露する6機を見事に収めることができました。艦艇一本槍のマニアが航空機をキレイに撮るのは、ネコが逆立ちするくらい難しいことなんですよ!(笑)
6機はそれぞれポジションと役割が与えられています。大雑把に説明すると、先頭を飛行するのが1番機(編隊長機)で、左翼を受け持つ2番機、右翼を受け持つ3番機、後方から隊形を整える4番機、ソロ科目を担当する5番機6番機といったようになっています。

三代目となる現行機はT-4練習機ですが、ブルーインパルス所属機は戦技研究機として、通常機とは異なった仕様となっています。
プロペラ機による訓練を終えたパイロットに施す中等練習用のジェット機で、川崎重工業が製造する純国産機です。丸みを帯びた愛嬌のあるデザインから「ドルフィン」の愛称で呼ばれています。
ブルーインパルスの編隊が艦隊の上空を通過します。各機がスモークを曳きながら飛行し演目を披露するのですが、上空は曇り空とあって、「スター」や「サクラ」「ハート」といったスモークで空に描かれた意匠は、残念ながらおぼろげにしか見えませんでした

訓練展示はこれにて終了です。「事前公開1編」でも述べましたが、観艦式は海上自衛隊の式典であり、海自と海上防衛について理解を深めてもらうための催事ですので、訓練展示にブルーインパルスを引っ張り出すのではなく、DDHからのヘリ発艦洋上給油救難飛行艇の着水などを披露すべきだと私は考えます。ましてや今回は、新型DDH「いずも」が初参加しているのですから…。
海自の担当者も目新しさを考えて工夫したのでしょうけど、観艦式の本来の趣旨からは外れる結果となっていることが残念です。
訓練展示が終了し、艦隊は帰路に就きます。「とね」艦上は、乗艦者がパイプ椅子に腰を降ろしたり、毛布の上に寝転がったりするなど、訓練展示に大きな歓声が挙がった先ほどまでとは打って変わって、ホッとした緩い空気に包まれています。
乗艦者のほとんどが「もう観艦式は終わった」との認識なのでしょうが、ここで観艦式が終わったと考える人は艦艇マニアを名乗る資格はありません。帰路も見どころのオンパレードなのですから…。

かくいう私ですが、出港時からずっと立ちっぱなしで、なおかつ2台の一眼レフを抱えて撮影し続けてきたので疲労は否めず、艦上を包む緩い雰囲気にも乗せられて、毛布の上に腰を降ろしました(マニア失格ですね)。そして、すぐ近くにいた「すーさん」と「撮れましたか?」「ちょっと天候が残念でしたね」などと話していたのですが…。
私の背後に視線を移した「すーさん」の表情が突然変わり、カメラを手にして慌てて立ち上がるではありませんか。「なに?」と思って座ったまま振り向くと…げっ、「きりしま」が速度を上げながら私が乗る「とね」を追い抜いて行くではありませんか!しまった!
私もカメラを手にして慌てて立ち上がり、おっとり刀で撮影を始めますが、無情にも「きりしま」は正面撮影用のベストポジションを通り過ぎてしまっていました…(涙) うわぁ〜もったいない!

甲板上を包む緩い雰囲気で油断し、周囲への警戒を怠っていました。まさに痛恨の極みです。やはりマニアたるもの、観艦式や展示訓練では出港から入港まで気を抜いてはいけないということを再認識しました。撮影だけではなく万事においてもですが、失敗とは緊張の糸が解けて気が緩んだ時に起きるものなんですねぇ。
失敗により再び緊張感を取り戻した私、「きりしま」が過ぎ去ったあとも後方の海域を睨み続けます。帰路において我が「とね」は隊列の最後尾に位置するので、「きりしま」に続いて他の艦もこれから「とね」を追い抜いていくであろうと考えたからです。

案の定、「いずも」が増速しながら近づいてきました。今度はカメラを手にしているので、余裕を持ってベストポジションまで引きつけて撮影します。思えば、今観艦式において「いずも」をこの角度(左舷前方)から撮影するのは初めてです。「きりしま」の失敗があったからこそ、「いずも」を最良の位置で撮影することができました。
空が雲に覆われており、加えてやや逆光でもあることから、艦の色味が美しく出ないのが残念。天候によって自在に色味を変える艦艇は、カメラにとっては厄介な被写体なのかもしれません。
さらに続いて「こんごう」も「とね」を追い抜きます。次々とやって来ては「とね」を追い抜いていく大型艦たちに、私の心は阿波踊り状態へと突入します♪ そう、観艦式はまだ終わっていないのです!

この「こんごう」は木更津、先ほどの「いずも」は横浜、「きりしま」は横須賀(吉倉)に帰投します。我が「とね」は横須賀船越に戻るのですが、入港順序は一番最後であることから、隊列の最後尾を航行することになるのです。同じ船越組でも、早い順番に入港する「うらが」や「しらゆき」は隊列の前の方を航行しています。つまり、観艦式の帰路の隊列=入港の順番というわけです。
入港の順番は艦の大きさ等に左右される場合もありますが、基本的には艦に偉い人や海自にとって大事な人が乗っているか否かで決まります。よって帰路の隊列=カーストの序列でもあります(笑)
「こんごう」が過ぎ去った直後、珍しい艦が現れました。海洋観測艦「わかさ」です。海洋観測艦といえば一般人の乗艦厳禁という観艦式とは最も縁遠い艦のはずですが、どうしてこんな所に…?
実は「わかさ」は、観艦式実施海域への船舶の進入防止や大型浮遊物の除去を任務とする海面警戒部隊の一員だったのです。乗艦者の目に触れにくいとはいえ、警戒部隊も観艦式の参加艦艇と考えれば、機密の塊である海洋観測艦が観艦式に参加していたことに、艦艇マニアとしては大きな喜びを感じます。

観艦式を影から支えてくれた「わかさ」もお役終了となり、これから帰路に就くために「とね」に後続します。「とね」は隊列の最後尾とされていますが、実はその後には海面警戒部隊の艦が続くのです。横須賀までの道中、この珍しい艦を存分に撮影できそうです♪
後続する「わかさ」を「見れば見るほど不思議な形だなぁ」などと思いながら撮影を楽しんでいると、またまた珍しい艦が姿を表したではありませんか。特徴的な「2002」の艦番号…輸送艇2号です。
この子も「わかさ」同様、海面警戒の任に就いていました。ふり返れば、2010年の伊勢湾マリンフェスタの際にも、特務艇「はしだて」などとともに海面警戒にあたっていました。あれから5年かぁ…。

このタイプは、離島や沿岸僻地への人員・物資の輸送を主目的として建造され、現在「1号」(佐世保)と「2号」(横須賀)の2隻が就役しています。「ゆら」型輸送艦が全艦退役してしまった今、離島・僻地への輸送を担うことができる唯一の輸送艦(艇)となっています。
基準排水量が420tほどの小さなフネですが、軽車両と人員70人の輸送が可能で、愛嬌のある艦容を有する“癒し系艦艇”です
おや、「まえじま」がいるぞ!「わかさ」「輸送艇2号」と同じく、海面警戒の任務に就いていたと思われますが、原則として観艦式の海面警戒は横須賀所属艦艇が務めることから、呉の「まえじま」がいることに若干の驚きを感じました。遥々ご苦労様です。

「まえじま」は「うわじま」型掃海艇の4番艇で1993年12月に就役、おととし3月に掃海管制艇に種別変更され、呉に所在する掃海隊群第101掃海隊に所属しています。掃海管制艇は遠隔操縦自航式掃海具(SAM)を無線遠隔操縦して掃海にあたる艇で、艦齢を重ねた掃海艇が種別変更されて運用されています。1隻の艇で2隻のSAMを操作することが可能で、現在、第101掃海隊には「まえじま」と「くめじま」(「うわじま」型5番艇)が所属しています。「うわじま」型も第101掃海隊の2隻と第45掃海隊の2隻のみとなりました。
住友重機械工業横須賀製造所のクレーンが見えてきました。目指す横須賀はもう目と鼻の先です。日没が迫り夕焼けで真っ赤に染まる横須賀の海に、1隻の護衛艦が沖合い停泊しています。祝賀航行部隊の先導を務めた「いかづち」です。
「いかづち」は外国艦6隻を先導した後は、外国艦とともに観艦式実施海域を離脱して一足早く横須賀に帰投していたのです。しかしながら、観艦式本番では最も早く出港するために本日の吉倉への入港順序は一番最後で、吉倉組の全ての艦が入港するまでここで待機しているのです。夕日に染まるシルエットが超素敵です!

途中、吉倉桟橋方向に目をやると、帰投した艦に混じって「てるづき」が停泊しているのが見えました。最新鋭DDで、しかも横須賀に在泊しているのになぜ観艦式に参加しないのでしょう?もったいない!
直後を航行していた「わかさ」は吉倉へ。実は「わかさ」の後方にもう1隻が後続していました。「あぶくま」姉妹の三女「おおよど」です。言うまでもなく、「おおよど」も海面警戒の任務にあたっていました。夕日で船体を赤く染めながら、「とね」と同じ船越へと戻ります。

私の隣にいた若い男の二人組が、「あっ、『おおよど』さんだ!」と言いながら、喜々として「おおよど」の撮影を始めました。
この二人組、「艦これ」好きが高じて海自ファンになったようで、「あぶくま」を「あぶぅ」と呼ぶなど、出港からずっと海自艦と「艦これ」キャラをオーバーラップさせて大喜びでした。私もレベル103の『提督』ですが、度を越えた艦娘と海自艦の同一視には眉をひそめざるを得ません。ましてや、乗組員の前で艦をゲーム内のあだ名で呼ぶのは失礼であり、厳に慎んでいただきたいと思います。
午後5時8分、船越に入港しました。これから一足先に入港作業を済ませた「てんりゅう」に横付け(接舷)します。
ちょうど日没となったようで、在泊艦ではラッパ譜「君が代」の吹奏に合わせて自衛艦旗の降下が行われています。ということは、3日前の事前公開1で乗艦した「ぶんご」が入港した時刻とほぼ同じ時刻ということになります。3日前は「しらゆき」に急患が発生したために「うらが」を除く船越組の入港が大幅に遅れたのですが、「とね」の本来の入港時間はこの時刻だったのです。

YT79YT67が「とね」の入港を支援します。掃海艦艇を除く船越組全7隻の出入港をこの2隻が一手に引き受けています。出港時・入港時ともに手際よく艦に取り付いては、曳いたり押したりして艦を出港(入港)させます。ここにも観艦式を影で支える侍がいました。
午後5時40分、「とね」を下艦して船越の岸壁に降り立ちました。
もう日はどっぷりと暮れて船越はほとんど夜なのですが、日が落ちたばかりの群青色の空と、ライトでオレンジ色に染まる岸壁、サーチライトで照らし出されて浮かび上がる護衛艦の三者のコントラストが息を呑むほどの美しさで、思わずシャッターを切りました。

「とね」に乗艦したのが午前7時半頃だったので、今日は約10時間艦に乗っていたことになります。さすがに身体は疲労しており、とりわけ立ちっぱなしだった脚が痛むので、京急田浦駅までの約30分間の道のりが地獄のロードとなりそうです(苦笑)
参加艦艇が戻った岸壁には2回目の予行練習(事前公開2)が終わった安堵感と、いよいよ次は観艦式本番だぞという緊張感の両方が混じった空気を感じます。船越組のご奮闘を祈っております
船越の別の岸壁には「あぶくま」が接岸しています。こちらは「とね」よりも少し先に入港しており、既に艦上に乗艦者の姿はありません。
艦上に灯された幾つもの燈火によって「あぶくま」は光に包まれ、昼間の力強い姿とは異なる幻想的な佇まいを見せています。電灯艦飾とは異なる光に包まれた夜の艦艇もとても素敵です。

観艦式本番は3日後の18日ですが、当初私は本番日の乗艦券を入手することができませんでした。ところが、事前公開1の翌日、当HPを通じて交流がある元将官の海自OBにお会いした際にその事を話したところ、そのOBは横須賀総監部等に掛け合って乗艦券を確保してくださいました。嗚呼、何という奇跡…! ということで、本番日も乗艦して取材・撮影します。その前に明日いったん帰宅し、鋭気を養ったのち17日に再上京します。いざ、観艦式本番へ!

付属部隊の艦に乗って観閲と訓練展示を堪能、位置が変われば同じ観艦式でも全く見え方が変わります。