2015自衛隊観艦式〜事前公開1・出港編〜


2015自衛隊観艦式は10月12・15日に事前公開、18日に式本番という日程で実施されました。
本稿では12日に実施された事前公開1(「ぶんご」乗艦)の模様を3回に渡ってレポートします。

時は2015年10月12日午前6時30分、私は横須賀基地船越地区にいます。本日は3年ぶりの自衛隊観艦式の初日・「事前公開1」の実施日です。私はこの船越の岸壁で掃海母艦「ぶんご」に乗艦し、相模湾沖の式典海域に“出撃”します。
陽が昇り始め朝焼けに赤く染まる船越地区ですが、朝の静寂を打ち破るかのように乗艦者が続々と入門しています。

都内の宿泊先から山手線・京急線の始発電車を乗り継いで約1時間20分、船越のこの場所には午前6時を少し過ぎた頃に到着したのですが、驚くべきことに、既に300〜400人が開門待ちの長い列を形成しているではありませんか!3年前の前回は今回よりも到着が30分程度遅かったのですが、並んでいたのは100人程度、早くもこの3年間で急騰した海自人気を思い知らされました
何しろ私の前に300〜400人が並んでいるのですから、入場門の前に辿り着くのにすらかなりの時間がかかります。この門の手前で隊員や事務官らが乗艦券を確認するのですが、カバンの中から乗艦券が出てこなかったり、記入欄(住所・氏名・連絡先を記す欄)に記入がない人が結構いるため、門の手前はかなり混雑します。乗艦券は事前に不備なく記入し、入場待ちの間に手に持っておくか、すぐに取り出せる場所に移しておきましょう

凄まじい海自人気の煽りを喰らって、私は今回直前まで乗艦券を入手することができませんでした。まさに観艦式参加断念の危機に見舞われたのですが、本日の事前公開については、東京都品川区在住のH様のご厚意によって乗艦が可能となりました。
乗艦を前にして、まずは心から御礼申し上げます。
門を通過するとポールで仕切られたレーンが現れます。レーンの入口には艦名が掲示されており、乗艦者は自分の乗る艦のレーンを進まなければなりません。
船越から乗艦者を乗せて出港するのは、「ぶんご」「うらが」「てんりゅう」「しらゆき」「あぶくま」「とね」の6隻ですが、私が乗る「ぶんご」だけレーンが2つあります。ということは、「ぶんご」には他艦より遥かに多くの乗艦者がいるということです。しかも、入場した人の殆どが「ぶんご」のレーンに流れ込んでいて、他のレーンは人の姿はまばらです。うわぁ…艦上の混雑が心配だなぁ…。

←の画像は、レーンを少し進んで後ろを振り返った光景です。左端の人がたくさん歩いている二列が「ぶんご」のレーンです。真ん中の「うらが」のレーンなんてすっかすかです。何だ!この差は…。
レーンを進んだ先に手荷物検査場があります。ここでカバンの中身の検査を受けたあと金属探知機を通過して、晴れて横須賀基地船越地区へ足を踏み入れます。

この手荷物検査場が激しく混雑します。人によっては時計等の金属類の取り外しに時間がかかったり、カバンを開けるのに手間取ったりするためです。手荷物検査場では待ち時間の間に身に付けている金属類を取り外し、カバンも開けておきましょう。そうしておくことで、自分の番が来た時にスムーズに検査を受けることができ、混雑の緩和に繋がります。
逆に言えば、検査場は混雑するので、乗艦締切り時刻直前だと出港に間に合わなくなる恐れがあります。乗艦者はかなりの時間的余裕を持って出港場所に行く必要ことが必須です。
私が乗艦する「ぶんご」は、船越地区の一番奥まった場所にある岸壁に泊まっています。検査場を通過してから約700m、時間にして10分近く歩かなければなりません。
はやる気持ちが私を急がせるのですが、いかんせん日ごろの運動不足が祟って身体が思うように前に進みません(苦笑)。ようやく「ぶんご」が泊まっている岸壁に着いた際には、息はあがり、脚が悲鳴を上げるかのように痛み出しました。気持ちに身体がついてこれないとは…歳を感じるなぁ…。5日前に47歳になりました!

画像は「うらが」ですが、「ぶんご」は海側に目刺しで係留されています。乗艦用桟橋の手前にあるテントで乗艦券を提出、代わりに乗艦券番号を記した紙を入れたパスケースが渡されますので、これを受け取って乗艦します。
ケースの中の紙は乗艦券の番号が記された部分を切り取ったもので、下艦する際にこれを返却することで、艦を降りた証明になるのです。ですから、紛失すると下艦時にとても厄介な事態を招くことになりますので、乗艦中は失くさないように首からぶら下げておく必要があります。間違っても海に落としてはいけません。

さて、無事に「ぶんご」に乗艦した私、事前に撮影場所として想定していた右舷最後部に向かいます。既に腕利きのマニアに場所を占められていると思いきや、後部甲板には私しかおらず、難なく理想の撮影位置を確保できたのでした。それはあたかも、映画「二百三高地」のラストで、豆腐屋の二等兵が高地の頂上に辿り着き、抵抗するロシア兵がいないことを知って勝利を確信したシーンのようでした。例えがマニアック過ぎてすみません…。
「ぶんご」の後方には「とね」「てんりゅう」「しらゆき」の3隻が目刺しで泊まっています。「ぶんご」は受閲部隊ですが、この3隻は観閲・観閲付属部隊ですので、出港時刻は我が「ぶんご」よりもかなり遅い時刻となります。ちなみに、この3隻の中で最初に出港する「とね」の出港時刻は、午前8時50分となっています。

「ぶんご」の出港時刻は午前8時15分、受閲部隊は観閲・観閲付属部隊が式典海域に到着する前に隊列を形成して同部隊を待ち受けるので、早い時間に出港する必要があるのです。
一方、港への帰投は、艦に乗った偉い方々から早くお帰りいただくために観閲部隊が先となり、受閲部隊は基本的に後回しです。つまり、受閲部隊の艦は早く出港して遅く帰投するという、乗艦時間が非常に長いマニア向けの艦と言えるでしょう。
突然、後方から高らかな出港ラッパの音色が耳に飛び込んできました。掃海艦「つしま」の出港です。
「つしま」をはじめとする掃海艦・掃海艇計5隻は、「ぶんご」とともに受閲部隊第5群を形成します。これら5隻は第5群の先頭艦である「ぶんご」よりも先に出港して隊列を形成、沖合いにて「ぶんご」を待ち構えて合流します。私が確保した撮影場所からは、その合流の様子が至近距離から撮影できそうです。これは楽しみだ♪

今回の観艦式に参加する掃海艦艇は「やえやま」型2隻、「ひらしま」型2隻、「すがしま」型1隻で、最新型でFRP製船体の「えのしま」型の参加がないのが残念でなりません。就役している3隻すべてが横須賀を母港にしているのに残念です。3隻とも船越に姿が見えないことから、隊で訓練に出ているのでしょうか?
「つしま」に続いて「ひらしま」「たかしま」が出港、さらに「みやじま」「はちじょう」と続々と出港していきます。こうなると船越岸壁はひっきりなしに出港ラッパが鳴り響きます。乗組員の気合を代弁するラッパの音色に、私のテンションも一気に沸騰します。
「よっしゃ〜!撮影頑張るぞ!!」
時刻はまだ8時前ですが、既に観艦式は始まっているのです。

「みやじま」は6月に佐伯湾で第3護衛隊群の入港を待ち構えている際に、私の前を横切って行った時以来の再会です。大分からはるばる横須賀まで遠征する私のマニアっぷりに、「みやじま」も苦笑いしているに違いありません(笑) 一方で、こんな小さな掃海艇たちが呉や佐世保から遥か横須賀まで来航していることも、改めて考えると、とても凄いことだと感じざるを得ません。
午前8時ちょうど、海自の最も“神聖な儀式”である自衛艦旗掲揚が行われます。ラッパ譜「君が代」に乗せて徐々に掲げられていく自衛艦旗を見ていると、思わず背筋がピンと伸びます。

これまで何度か述べてきましたが、私は自衛艦旗掲揚の際は必ず掲揚の前半までで撮影を止め、後半は艦旗に向かって正対するようにしています。自衛艦旗は海自の旗であると同時に、日本国の象徴でもあります。民間人といえども自衛官と同様に艦旗には敬意を払うべきであり、特に掲揚時には姿勢を正して最大限の敬意を示す必要があるというのが私の考えです。
自衛艦旗掲揚はアトラクションではなく儀式です。急騰した人気によってこの事を理解していない人が大勢いるようです。海自や艦を愛するなら、まずは艦旗に敬意を払ってください
自衛艦旗掲揚後、楽器を手にした華やかな一団が後部甲板に入場して来ました。大湊音楽隊の皆さんです。
観艦式には海自にある全ての音楽隊(東京・横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊)が参集し、イベント会場や艦上での演奏を通して式の盛り上げに一役買っています。6年前(2009年)の観艦式で私が乗った艦(掃海母艦「うらが」)にも、この大湊音楽隊が乗っていました。どうやら私は大湊音楽隊の皆さんとご縁があるようです

交響曲や歌謡曲・アニソン等多彩な演奏で出港に向けてのムードを高めてくれるのですが、なかでも艦上で聞く「宇宙戦艦ヤマト」のテーマ曲は格別で、私のボルテージも最高潮に達しました。
あまりのテンションアップにより、14万8000光年彼方のイスカンダルへ飛んで行けそうな気がしました(笑)
午前8時15分、「ぶんご」艦上に出港ラッパの音が鳴り響きました。いよいよ我が「ぶんご」の出港です。と同時に、大湊音楽隊の演奏は行進曲「軍艦」(いわゆる軍艦マーチ)に変わりました。
出港ラッパは「ぶんご」乗組員だけではなく、私の気持ちにも航海に向けた気合を注入してくれました。近距離撮影用(標準レンズ装着)のカメラを首に、遠距離撮影用(望遠レンズ装着)のカメラを肩にそれぞれ懸けて、私も“合戦準備”を完了させました。

「うらが」の艦橋露天部では指揮官が「ぶんご」の出港を見送っています。掃海母艦に乗っているので掃海隊群司令と首席幕僚かと思いきや、意外にも第2護群司令の岩ア将補同首席幕僚の高橋一佐(帽子を振っている人)ではありませんか。どうやら2護群司令が観閲部隊随伴艦の指揮官を務めるようです。
「ぶんご」はゆっくりと船越岸壁から離れて行きます。
“目刺し”で仲良く一緒に接岸していた「うらが」の姿も徐々に小さくなっていきます。「うらが」の出港は約30分後の予定です。
「うらが」艦上にいる見学者が異様に少ないなぁ…。出港まであと30分あるとはいえ、私が乗る「ぶんご」とは大違いです。

実は私、出港前から通勤電車並みに混雑している「ぶんご」と、スペースに余裕があり優雅な雰囲気すら漂う「うらが」の露骨なまでの違いが気になって仕方がありませんでした。
この差は両艦の乗艦者の属性の違いに起因しています。「うらが」は大臣・海幕長招待者用の艦(乗艦者400人程度)であるのに対し、「ぶんご」は一般公募の乗艦者を目いっぱい詰め込んだ艦(乗艦者は850人!)なのです。まさに“観艦式カースト”ですな…。
少し航行すると、横須賀基地吉倉地区から出港して来たミサイル艇が右舷側に現れ、我が「ぶんご」の後方に合流しました。
おぉ、いきなり珍しい子とご対面だ♪

ミサイル艇といえば、その圧倒的迫力の高速航行が観艦式や展示訓練に不可欠となっていますが、いつも突如として姿を現し、風のように走り去っていくイメージが強いので、出港直後の航行シーンの撮影はかなり貴重な体験です。これは幸先いいぞ〜!
この艦番号「829」の子は、佐世保の第3ミサイル艇隊に所属する「しらたか」で、私の地元・九州で何度も見学・撮影したことがある最も身近な存在のミサイル艇です。
その特性から遠距離航行を考慮していない設計の艇ですが、はるばる佐世保から遠征して来てくれて本当にご苦労様です!
「しらたか」に続いて「くまたか」「おおたか」も姿を現して合流、3隻が単縦陣で我が「ぶんご」に後続します。
いつもは圧倒的な速さで駆け抜けるミサイル艇が、隊列を組んで低速で航行する姿なんて超貴重ではありませんか!私のカメラのシャッター音が機関銃のように鳴り響いたのは言うまでもありません。というか、ミサイル艇が仲良くゆっくりと航行する姿はとてもカワイイです(笑) 高速航行時とは違った魅力がありますね♪

「くまたか」は余市(第1ミサイル艇隊)、「おおたか」は佐世保所属ですが、実は「くまたか」は就役から5年余り佐世保の艇でした(2008年6月転籍)。しかも両艇は同じ日に就役した双子の姉妹なのです。つまりこの3隻はかつての第3ミサイル艇隊の陣容であり、今回の観艦式参加は“久しぶりの姉妹の再会”と言えるでしょう。
またしばらく航行すると、右舷側に今度は大きな艦影が姿を現しました。横須賀新港から出港してきたDD「さみだれ」です。今回の観艦式では受閲部隊第2群の2隻(「きりさめ」「さみだれ」)は、横須賀新港をベースとしています。
逆光により、まさに“艦影”と言うべきシルエット状の姿ですが、「あめ」型DDの特徴がよく現れており、幻想的な雰囲気とも相まって、なかなか素敵なお姿です。逆光も悪いばかりではありません。

去年の呉地方隊展示訓練が台風で中止となり、この「さみだれ」の航行シーンを撮り損ねたのですが、今年は鹿児島(7月)・観艦式と、立て続けに撮影することになりました。大阪まで遠征したにも関わらず展示訓練が中止になったことを「さみだれ」が申し訳なく思いその埋め合わせをしてくれているように思えます(笑)
「さみだれ」は「ぶんご」の前方を航行します。その前方には先に横須賀新港を出港した「きりさめ」、さらにその前方には吉倉を出港した受閲部隊旗艦「あたご」「おおなみ」が航行しています。
「ぶんご」を含めた5隻は、この順序で一列になって浦賀水道航路を航行します。水平線上にシルエットとなって浮かび上がるいくつもの艦影…とても幻想的でいい雰囲気です。

浦賀水道は1日に約700隻もの船舶が航行する世界屈指の海上交通路で、最小幅6.5kmという狭水道かつ潮流も速いことから、これまた世界屈指の海の難所としても有名です。
このため、東京湾南方から久里浜沖に至る距離14.8km(8.1海里)、幅1.4kmの大型船用航路=浦賀水道航路が設けられており、大型船は航路上を一列で右側航行しなければなりません。
3年前の観艦式の時と同様、浦賀水道には多数の漁船と遊漁船がひしめいています。軍艦が漁船のすぐ近くを航行するのは、何度経験しても妙な不安と気持ち悪さを感じてしまいます
浦賀水道は多数の大型船舶が行き交う航路であると同時に豊かな漁場でもあり、この季節はタチウオやアジが釣れるようです。

ちなみに、浦賀水道では漁船や遊漁船等の小型船は、航路を航行している大型船の進路を妨げてはならず、衝突の恐れがある時にはどのような位置関係にあろうとも大型船を避ける義務があります。つまり、ここでは海上衝突予防法の規定は適用されないのです。浦賀水道で小型船と大型船が衝突した場合は、小型船が100%悪いということになりますので、小型船所有者はご注意願います。「自衛艦が避けなかった」は通用しないのです。
浦賀水道に多数の漁船や遊漁船がひしめいている一方で、「ぶんご」艦上は大勢の見学者が甲板上にひしめき合っています。何しろ850人もの見学者が乗っているのですから…。「ぶんご」は比較的大きな艦で、海外在住邦人の救出・収容を想定した設計になっているとはいえ、あまりに詰め込み過ぎではないでしょうか。
←の画像では手前に人がいないスペースがありますが、そこは喫煙所で、喫煙所以外の甲板上は足元に注意していないと人を踏みつけてしまいそうになるほどの混雑具合です。

甲板上にいる人の殆どが寝ていたり、座って食事や雑談をしています。私は後続するミサイル艇や前方を航行する艦を夢中になって撮影していたのですが、ふと気付くと撮影しているのは私を含めて数人…あれ、皆さんどうして写真を撮らないの?
浦賀水道に差し掛かる頃から、上空を対潜ヘリがたびたび通過するようになります。これら対潜ヘリは観艦式参加艦艇を狙う某国の潜水艦を探している訳ではなく、航路の安全確認のほか、観艦式実施海域に誤って民間船舶が入り込まないように上空から監視しているのです。また、中には海自の広報隊員や新聞・雑誌のカメラマンを載せて、艦隊を上空から撮影するために飛んでいるヘリもあります。私も上空から撮影してみたいぞ!

バリバリというローター音を轟かせてヘリが次々と飛来すると、「いよいよ観艦式が始まるぞ〜」と、気持ちが昂揚してきます。このワクワク感は、夏の体験航海や展示訓練では感じることができない独特な感覚です。同じ艦艇イベントでも、夏の広報イベントとは違う雰囲気や昂揚感を味わえるのが観艦式なのです。
浦賀水道を抜けてすぐ、前方に突如として巨大な艦影が現れました。おぉ、「いずも」ではないか!
今年3月に就役したばかりの新型DDHであり、今回の観艦式の“目玉商品”である「いずも」は横浜を出港、横須賀出港組に先立って浦賀水道を通過し、横須賀組の艦を先行させるためにこの地点で行き脚を止めて待機していたのです。

それにしても大きい!4月の特別公開で「いずも」の大きさに驚かされましたが、洋上で航行する姿はその巨大さが際立って見えます。この大きさとこの形…一部のマニアが「空母だ!」と叫んで狂喜乱舞する気持ちが分からないでもありません…(苦笑)
とはいえ、「いずも」は護衛艦です。甲板上で「いずも」を見て「空母、空母」と騒いでいる乗艦者を見て複雑な気持ちになりました。
「いずも」は1隻のみで受閲部隊第3群を編成し、旗艦「あたご」から数えて6番目の位置を航行しなければなりません。そのため「いずも」は横須賀組5隻をすべて先行させ、横須賀組最後尾の「さみだれ」に後続します。
「いずも」を追い抜いた横須賀組5隻も順次隊列を整え、浦賀水道を抜けて少し航行した頃には、旗艦・受閲部隊1群・2群・3群までの一本の隊列が出来上がりました。

我が「ぶんご」は当分の間、「いずも」に後続し、第4群の潜水艦部隊と第5群の掃海艇部隊が合流してくる地点まで航行します。ということは、しばらくの間、後ろから「いずも」を撮影できるという訳です。またしても幸運が巡ってきました♪ もしかして、この「ぶんご」は、撮影的には美味しい位置を航行する艦なのでは…。
「ぶんご」に後続していた3隻のミサイル艇が行動を開始しました。3隻は順次40ノット近くにまで増速、右舷側から一気に「ぶんご」を追い抜いて行きました。まさに“速きこと風の如し”です。
仲良く隊列を組んで低速で航行している際は、まるで“借りてきた猫”のように大人しかった3隻ですが、ここで一気に本領を発揮してきました。ミサイル艇はこうでなくっちゃ!

白波を蹴立てて爆走する3隻のミサイル艇のすぐそばには、操業中の漁船がいます。漁船の至近距離をミサイル艇が爆走するという不思議な組み合わせの画が撮れました(笑) これもなかなか貴重な光景ではないでしょうか。すぐ横を爆走された漁師さんたちはさぞ驚ろかれたことでしょうねぇ。
訓練展示での高速航行、楽しみにしていますよ♪
右舷側遥か前方に、もうひとつ大きな艦影が見えます。その艦影は「いずも」と同じ空母艦型です。この艦は…輸送艦「おおすみ」です。よく見ると艦尾から水しぶきが上がっています。ちょうど搭載艇LCACが艦内から飛び出してきたようです。

「おおすみ」は2隻のLCACと補給艦「ましゅう」とともに、受閲部隊第6群を編成します。隊列形成に先立ってLCACを発進させていたのです。式典開始までまだ2時間以上ありますが、受閲部隊ではこのように隊列の形成や搭載艇の発進など、浦賀水道を抜けた時点から観艦式が始まっているといっても過言ではないでしょう。
LCACは当初は「おおすみ」型各艦の固有の装備でしたが、現在は6隻で第1エアクッション艇隊を編成していて、任務に就く艦に練度の高い艇を派遣する形をとっています。
我が「ぶんご」を含めた7隻の受閲部隊艦艇は、航行しつつさらに隊列を整えます。「いずも」と「ぶんご」は、合流時にはかなりの距離が開いていましたが、その後「ぶんご」が徐々に距離を詰め、「いずも」にだいぶ近づきました。
また、他の6隻も徐々に距離を詰め、「ぶんご」が「いずも」に近づく頃には、ご覧のような美しい単縦陣の隊列が出来上がりました。おぉ、これは見事だ!早くも海自の高い練度がさく裂です。

この隊列を構成する各艦をご紹介しますと、先頭が旗艦「あたご」、次いで「しまかぜ」「おおなみ」(受閲第1群)、「きりさめ」「さみだれ」(受閲第2群)、「いずも」(受閲第3群)の順で航行しています。「ぶんご」は受閲第5群で、このあと「いずも」と「ぶんご」の間に潜水艦3隻から成る受閲第4群が合流する予定です。
後ろ姿とはいえ、6隻もの艦が一列になって航行する様子は、鳥肌が立つほどの勇壮かつ感動的な光景です。しかも、隊列の最後尾=「ぶんご」の直前にはあの「いずも」がいるのです。
「ぶんご」に乗ったの、大正解だわ♪♪
次々と訪れる撮影の好機、既にこの時点で撮影枚数は1500枚を超えています。いったい今日一日で何枚撮影するのやら…。

何気なく航行しているように見える各艦ですが、潮流波浪といった外的条件により、艦は常に進行方向とは違う方向に流されます。この影響を計算した上で舵を取り、艦を真っ直ぐ進めるには的確な判断力と高い操艦技術が求められます。また自動車のようなブレーキがない船舶は、等間隔を保って航行するのは至難の業です。この隊列には海自の技量が凝縮されているのです。
観艦式は3年に一度の式典ですが、私は最大かつ唯一の“実戦”だと考えています。海自は厳しい訓練に明け暮れ、そこで培った練度や技量を広く披露することはありません。例えれば、磨きに磨いた切れ味鋭い刀を、ずっと鞘に納めておくのと同じです。

観艦式はその刀を鞘から抜く場なのです。高い練度と技量を披露することは、国民に対しては海上防衛への理解の醸成となる一方で、諸外国に対しては我が国への海からの侵攻を断念させる抑止力となるのです。米海軍など一部を除いて、現代海軍の存在意義は戦闘ではなく抑止となっていることを考えると、観艦式で高い練度を披露することはまさに実戦であると言えます。
“中華な大国”が西南諸島周辺で不穏な動きを見せている時だけに、抑止力としての観艦式の意義は大きいと私は考えます。
わーい、富士山が見えるぞ!!
横須賀を出港して2時間15分後、相模湾からはっきりくっきりと名峰・富士山が見えます。なんという美しい佇まいでしょう…。
頂上に雪をいただいた絵に描いたような富士山の姿ですが、実は数日前に初冠雪があったばかり。富士山はこの観艦式のためにお化粧をしてくれたのでしょうね(笑) ありがとう!富士山。

九州在住だと滅多に富士山を見る機会なんてありませんし、ましてやこのような美しい姿の富士山を見るのは生まれて初めてです。しかも、その富士山を背景にして艦艇が航行しているのですから、私にとってこれ以上の絶景はありません。もしかしたら、今後の人生でこれ以上の景色を見る機会なんてないと思えるほどの絶景です。これは一生の思い出になりそうだ…。
3年前の観艦式でも、事前公開の際に富士山が見えました。しかし、富士山が見えたのは訓練展示中の僅かな時間のみ。しかも頂上に冠雪はありませんでした。今回は天気、空気の透明度、初冠雪など、いくつもの気象の好条件が奇跡的に重なって美しい富士山が姿を見せているのです。艦上で撮影しながら、“奇跡”をもたらしてくれた神様に感謝せずにはいられませんでした。

新型DDH「いずも」を富士山と絡めて撮影しました。富士山もこの話題の新鋭艦を興味津々で眺めているに違いありません(笑)
我が国の象徴である富士山と、海上において国の護りに就く自衛艦の組み合わせは、自衛隊が日本を守っていることを可視化したような画と言えるでしょう。そう、この美しい富士山=日本を守るために、自衛官は人知れず訓練に励んでいるのです
富士山が“合流”した受閲部隊各艦は、観艦式実施海域に向かって航行します。見事な単縦陣の隊列と美しい富士山の競演に、艦上で寝ていたり座り込んで雑談していた見学者たちも、俄かにカメラを取り出して撮影を始めました。皆さん、さすがにこの絶景に心を動かされたようです。

この時点で撮影枚数が2000枚を超え、早くもお腹いっぱいの私ですが、この絶景はこの日繰り広げられた艦隊絵巻のほんの序章に過ぎませんでした。このあとさらなる艦艇の合流、部隊の反転、そして観閲式典、訓練展示と、怒涛のごとくシャッターチャンスが押し寄せるのです。
時刻は午前10時45分、式典を1時間少々あとに控え、いよいよ受閲部隊が躍動します。さあ、3年に1度の“実戦”の幕開けです!

掃海艇・潜水艦の合流、大反転、そして観閲式典…シャッターチャンスが怒涛の如く押し寄せる「式典編」に続く…