α7Ⅲ 試験撮影&習熟訓練

約6年半ぶりに撮影機材を更新、フルサイズのミラーレス一眼を初めて導入しました。
導入後、性能確認と試験撮影・習熟訓練を実施したのでレポートとしてまとめました。

※遠征記というより作例集という趣向で執筆しておりますで、予めご承知おきください。

新しい愛機はベストセラー機・SONYα7Ⅲです♪ 最近は他社(キヤノンやニコン)からSONYのミラーレス一眼に乗り換える人も多いそうですが、ミノルタ時代からのαユーザーである私にとっては至極当然というか順当なチョイスと云えます。
私は2014年春からα77α77Ⅱを愛機としていましたが、両機とも設計は2010年前後で、さすがに性能的な陳腐化が進んできたこと、そして何より、50歳を超えた私が重い一眼レフを使うことが身体に堪えるようになったため機材更新を決意した次第です。

α7ⅢはSONYのミラーレス一眼における第3世代ベーシック機で、雑誌やネットで事前に調べたところ画質・連写性能・操作性などの面で高い評価を受けています。今でこそキヤノン・ニコンもミラレース一眼を発売し販売も好調なようですが、α7Ⅲ発売(2018年3月)からしばらくの間は販売面では独壇場でした。かつては酷評されユーザーも嘲笑されたSONYの一眼…時代は変わりました
(笑)
同じSONY製とはいえ、α7Ⅲはフルサイズ機マウント構造も違うため、これまで使ってきたレンズは使えません。レンズも一緒に購入する必要があることから、リーズナブルなレンズキットを購入しました。リーズナブルとはいえ約27万円の出費です(汗)

購入した翌日(9月22日)、さっそくα7Ⅲの試写操作を習熟するため呉へ遠征。記念すべき1枚目は「歴史の見える丘」から望む呉湾と造船所の景色です。撮影画像を確認してまず最初に感じたのは色味の良さ。派手過ぎず、地味過ぎず、それでいて印象的な色合い…なかなかいい感じです。あと建物・クレーンなどの構造物やコンクリートの質感もとてもリアルです。画素数はα77とほぼ同じ2430万画素なので、解像感はあまり変わっていないような気がします。α7Ⅲ、いきなり実力者の片鱗を感じさせてくれました

巨大な貨物船が建造中の場所はJMUの第3ドッグ(旧呉海軍工廠第三船渠)で、海軍時代は多くの有名艦を生み出しましたが、現在は民間船の組み立て用として使われています。この北隣にある第4ドッグが、呉所属艦が修理・補修を受けるお馴染みの場所です。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/200sec、F9、ISO100、70mm

呉遠征の定番撮影である艦船めぐり遊覧船から、呉在泊の艦艇群を撮影します。まずはFバースに停泊中の輸送艦「くにさき」です。
おや?妙に違和感のある画になっていますねぇ…。
秋の強い日差しが降り注いでいるとはいえ、日光が当たっている場所と当たっていない場所のコントラストが強すぎます。いや、コントラストが強いというよりも明るい場所の描写が粘れていないというか、簡単にいえば白とびしている状態です。船体の青みが強すぎるのも気になります。海面の色が船体に色かぶりしているようにも思えます。α7Ⅲの画作りはこういうものなのでしょうか?

さらに気付いたことが…レンズを望遠側の最大焦点距離(テレ端)の70mmにしても被写体に寄り切れないのです
(汗) それもそのはず、これまでのAPS-C機では焦点距離70mmでも実際はその1.6倍、112mmの焦点距離だったのです。知識としては知っていたのですが、フルサイズ機を初めて使ってみて焦点距離が変わる=実際の数値どおりになることを実感しました。言い換えれば、フィルム時代の焦点距離感覚で構図を考える必要があるのです。頭の中の時計の針を20~30年ほど巻き戻さなければならないようです。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/200sec、F9、ISO100、70mm

同じくFバースに停泊中の訓練支援艦「てんりゅう」です。上記「くにさき」の前方の位置になります。呉の遊覧船で撮影経験がある人はご存知だと思いますが、午前中の便に乗った場合、陸地方向(東側)と工場方向(南側)にカメラを向けると強烈な逆光になってしまいます。↑の画も左側(東)からの斜光=逆光に近い条件なのですが、ソニー機に搭載されている逆光補正機能(Dレンジオプティマイザー)によって暗部が黒つぶれせずに描写されています。この画を見る限り、逆光補正時の画はα77とあまり変わらないようです。

ほぼ真横からの構図ですが、従来機(APS-C機)ではこの位置からでは船体全体がフレーム内に入りきれませんでした。被写体には寄れなくなりましたが、逆に真横からの構図が難なく撮れるようになったこともフルサイズ機による構図の変化と云えます。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/125sec、F9、ISO100、29mm

Sバースに停泊中の「そうりゅう」型潜水艦です。セイルに艦番号の痕が残っています。今年3月に就役したばかりのリチウムイオン蓄電池搭載艦「おうりゅう」です。就役から半年が経ったにも関わらず、艦番号の痕跡はなかなか消えないようです。
セイル上の旗竿に隊司令旗が揚がっていないので、習熟訓練が一息ついたと考えられます。船体に貼られた音響防止タイルの質感が上手く表現されています。カメラを北側に向けている=順光ということもあって、この「おうりゅう」の画はキレイに撮れました♪
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/160sec、F9、ISO100、70mm

掃海管制艇「ゆげしま」です。妹の「ながしま」と共に第101掃海隊を編成していますが、同隊は今秋に解隊、それに合わせて「ゆげしま」「ながしま」は退役する予定です。普段は川原石側の専用桟橋に停泊している両艇ですが、退役準備のためEバースに停泊しています。よく見ると、甲板上の備品も幾つか撤去されており、既に退役作業が始まっていることが窺えます。寂しいなぁ…

右側(東側)からやや光が差し込んでいますが順光に近い条件、にも関わらず完全に海面の色が船体に被っています。この描写はいけません!飛行機や戦車等には興味がなく、強烈な日差しの下で海に浮かぶ艦艇を撮る機会が大半の私の愛機が、この条件下でこんな描写をするのではこちとら仕事になりません。α7Ⅲよ、君の前評判の高さは何だったの…?

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/200sec、F9、ISO100、46mm

DE「あぶくま」を魅力的なアングルから撮影することができました。遊覧船のガイドから毎回「海自で一番小さい護衛艦」と紹介されてしまう「あぶくま」と「とね」ですが、この位置・角度から見ると小型さを感じさせない迫力満点&精悍な佇まいです。

魅力的な1枚ではありますが、上部構造物と船体のコントラストが不自然です。元々構造物と船体は塗装の色合いが少し異なり、加えて日光の当たり具合や海面の色かぶりもあるのでしょうけど、それにしても違和感を拭えない描写ぶりです。
さらに気付いたことが…画像を等倍に拡大して確認していたら、周辺部や遠方がぶれているような描写になっているのです。手ぶれなら画像全体がぶれるはずですが、部分的にぶれているのは手ぶれではありません。となると考えられるのはひとつ、レンズが周辺部を解像できていない=描写しきれていないのです。これまでの妙なコントラストや色かぶりも、レンズが原因なのかもしれません。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/320sec、F9、ISO100、34mm

アレイからすこじまでSバースに停泊する潜水艦群を撮影。テレ端の70mmでもこれだけしか寄ることができません…。広角側を多用する風景撮影とは異なり、艦船撮影は艦から離れた場所で望遠的に撮影することが多いので、被写体に寄れないのは致命傷です。当面は望遠レンズを装着したα77と併用とはいえ、これではせっかくα7Ⅲを買ったのに使用機会は限られてしまいます

さらなる悲劇が…。「何だか眠い画像だな」と思って拡大して確認したところ、↑の「あぶくま」の画像と同様、周辺部と遠方部がまったく解像できていません。気になってこれまで撮影した画像をチェックしたところ、ほぼ全ての画像で同じ症状が出ているではありませんか!これはもう疑う余地はありません。完全にレンズがα7Ⅲの性能を損ねてしまっています。オマケのようなレンズなので正直あまり期待はしていなかったのですが、まさかカメラ本体の性能をこれほどまでスポイルするとは予想外でした。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE28‐70mm F3.5-5.6OSS、1/320sec、F9、ISO100、70mm

帰宅後、居ても立ってもいられず速攻でレンズを購入しました。ソニーの高性能レンズに与えられる称号「G」のエンブレムが眩しいFE24-105mm F4 G OSSです。このレンズはGレンズの称号どおりの高解像な描写が雑誌やネットで絶賛されていて、発売後しばらくの間は人気に生産が追い付かず入手が困難だったということです。テレ端が105mmまであるのも大きな魅力です。α7Ⅲとの相性も良いようで、カタログの最初のページにはこのレンズを装着した姿が掲載されているほど。これは期待が持てそうだ…♪

装着したところなかなかの格好良さ、見ているだけで心が躍ります♫ ただ、レンズが大きく長くなった分重量も増加し、α7Ⅲの軽量・コンパクトという利点は若干損なわれてしまいました。それでも従来のα77よりも遥かに軽いのでノープロブレムです。ちなみに価格は約16万円、カメラ本体と合わせて40万円を超える出費となってしまいました…
(汗汗汗)

さっそく試写のため佐世保へ、遊覧船から佐世保在泊中の艦艇を撮影しました。最初に目に飛び込んできたのは満身創痍のDDG「あしがら」の姿。私も長いあいだ海自艦を撮影してきましたが、これほどまで船体が痛んだ状態の艦を見るのは初めてです。

外見や見てくれを重視する海自においては掟破りなほどの「あしがら」の姿ですが、実は「あしがら」はDDH「いせ」と共に8月1日から派米訓練RIMPACに参加していて、十数日前に帰港したばかりなのです。約2ヵ月間洋上を航海し続けると船体はこれほどまでに痛むということがよく分かる姿です。艦長の佐藤1佐は7年前の夏、八戸での展示訓練で乗艦した「みょうこう」の副長で、甲板上で少しお話しをさせていただいた思い出があります。佐藤1佐をはじめ「あしがら」の乗組員の皆様、長期の訓練、お疲れさまでした!

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/250sec、F9、ISO200、48mm

塗装が剥がれ、錆が浮き、汚れが付着した痛々しい姿の「あしがら」ですが、α7Ⅲと新たなレンズの性能を見極めるには願ってもない被写体です。満身創痍の「あしがら」をα7ⅢとFE24-105mm F4 G OSSのコンビは見事なまでに描写してくれました

す、すごい…これがフルサイズ機の実力なのか…!!
まず驚いたのは階調の豊かさです。これはセンサーに多くの光を取り入れることができるフルサイズ機の特徴ですが、長い航海によって塗装が剥がれ、汚れが付着し、濃淡が発生したネズミ色の船体を忠実に描いています。従来のα77なら濃淡の半分くらいは描写しきれなかったはず。そして赤く浮き出た錆の部分も、微妙な色の違いや錆の広がり方がキッチリ描かれています。帰宅後にパソコン画面で確認した際、その生々しいまでの描写にゾクゾクしてしまいました。α7Ⅲが評判どおりのカメラだったことを初めて実感。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/200sec、F9、ISO200、61mm

あいにく、この日の佐世保は在泊艦艇が少なかったです。お目当ての補給艦「はまな」も不在でした…(涙) そんな中で「あしがら」の次に目を引いたのが独特な艦容を有するDD「すずつき」です。「すずつき」の船体は美しく整備されていますが、α7Ⅲの豊かな階調表現によって、人間の目ではさほど違いを感じない上部構造物と船体の塗装の色合いの差が、画像ではしっかりと表現されています。

「すずつき」の船体や風雨で汚れた桟橋の質感も見事ですが、特筆すべきは遠方にあるクレーンや住宅画面の隅に写っている建物などがキッチリと描かれていること。オマケレンズの時のようなぶれた描写ではありません。当然構図の中心にある「すずつき」はキレッキレの描写、全体的に解像感の高い画像となっています。FE24-105mm F4 G OSSの実力たるやお見事です。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/250sec、F9、ISO200、77mm

FE24-105mm F4 G OSSはテレ端が105mmまであるのでオマケレンズよりも格段に被写体に寄れるのですが、105mm以上の焦点距離が必要な場合はお手上げです。しかし、最近のカメラはレンズによる光学的なズームではなく、本体内でデータを切り出す電子ズーム機能が備わっています。従来機α77にもその機能があったのですが、私は画質の劣化を嫌ってほとんど使いませんでした。

説明書によると、α7Ⅲの電子ズームは2倍までなら画質を劣化させないとのことなので、試しに使ってみました。この画像は焦点距離65mmを電子ズームで2倍化して撮影、計算上では130mmの焦点距離の画像です。一見何ら問題がなさそうですが、等倍に拡大して見てみると艦橋構造物に備え付けのチャフ発射機が歪んでいたりアンテナや手すりなど細かいパーツの描写が破綻していたりと、若干は画質の劣化が起きています。とはいえ、画像を等倍で見ることはほぼ無いし、HPやSNSにアップするくらいのサイズなら問題はないので、「どうしてもα7Ⅲで105mm以上寄りたい!」と思う場合には、非常用として使っても良いのかもしれません。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/200sec、F9、ISO200、65mm(電子ズームで2倍に拡大)


倉橋岸壁の方に停泊している掃海艇「ひらしま」「やくしま」です。この頃になると空に少し晴れ間が覗くようになりました。
この形式は最後の木造掃海艇ですが、フルサイズセンサーの威力によって船体の木の質感流れるような木目がリアルに表現されています。さらに海面の描写が素晴らしい!これまで海面なんて気にしたことが無かったのですが、α7Ⅲは水を水らしく表現するので、画像の雰囲気が格段に良くなりました。船体に写った海面反射の光なんて、もうゾクッとするほどの美しさです。
これらはレンズの描写力とセンサーの表現力による合わせ技といったところでしょうか。レンズがα7Ⅲの能力を最大限に引き出していると感じます。高性能なカメラには良い(=高価な)レンズを装着しないと性能はフルに発揮されないことを再認識しました。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/400sec、F9、ISO200、34mm

同じく倉橋岸壁に停泊しているDDG「しまかぜ」DD「はるさめ」です。就役時はその大きさに目を見張った「しまかぜ」ですが、いまや汎用護衛艦DDの方がDDGの「しまかぜ」よりも大きくなっていることが実感できる構図です。「しまかぜ」は艦齢が32年に達したためDDGでいるのは今年度までです。来年度からは練習艦となり、姉の「はたかぜ」と共に隊員の育成に残り僅かな人生を捧げます。

約8年前に「しまかぜ」は呉への転籍が計画されましたが、諸事情で中止となりました。来年度に練習艦に種別変更された際には、今度は本当に呉に転籍することになります。「しまかぜ」が去った後の佐世保には新造の「はぐろ」が配備される見通しです。
両艦とも美しく整備されていますが、「しまかぜ」艦首部の塗装の微妙な濃淡がしっかり表現されているほか、「はるさめ」の後方に見える斜面に立ち並ぶ住宅群も、画像を拡大して見ると1件1件しっかりと描写されています。海面も瑞々しく表現されていてGood!
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/400sec、F9、ISO200、47mm

佐世保でα7ⅢとFE24-105mm F4 G OSSの実力を思い知った私、翌週に再び呉で試写を行いました。
呉中央桟橋1階ロビーの看板群、マニアの方々にはお馴染みの看板たちです。呉基地に停泊中の艦船撮影用に頻繁に利用するのが左端看板の遊覧船「艦船めぐり」です。一方、右端の「おさんぽクルーズ」は遊覧船ではなく江田島(小用港)行きのフェリーで、小用港で降りずにそのまま呉に戻ってくるフェリーの「目的外使用」です。呉湾に沖留めしている艦の撮影に重宝します。

α77では撮影しようとも思わなかったこんな何気ない光景も、α7Ⅲは撮影の意欲を掻き立て、「素敵な作品」に仕立ててくれます。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/80sec、F9、ISO800、63mm

前回の試写時と同じ場所に輸送艦「くにさき」が停泊しています。ほぼ同じアングルから撮影してみたのですが、テレ端105mmのレンズの威力によって十分に寄ることができました。空には少し雲が多いものの、前回試写時にかなり近い撮影条件です。

今回の「くにさき」は本来の色味で描写され、数々の汚れや錆びまでも表現されました。明暗のコントラストも適切で、日光が当たっている部分での白とびは発生していません。3枚目の画像と比べてみると、レンズによって描写が劇的に変化したことが分かります。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/640sec、F9、ISO200、93mm

こちらも前回と同じ場所に停泊している訓練支援艦を、同じく真横からのアングルで撮影しました。ただし、艦自体は「てんりゅう」から「くろべ」に変わっています。パッと見では気付かないほどよく似ていますが…(笑)

前回と同じくモロ逆光下での撮影ですが、驚いたことに逆光をほとんど感じさせない描写ぶり。FE24-105mm F4 G OSSが高い逆光耐性を有していることが分かります。そしてその高い逆光耐性によってα7Ⅲの描写性能がいかんなく発揮され、従来なら黒つぶれや色かぶりしていた船体は、まるで順光下で撮影したかのように塗装の濃淡や汚れまでもが識別できるほど明瞭に描かれています。
いやはや…驚きました。↑の「くにさき」の画像と同様にレンズで劇的に描写が変わっています。4枚目の画像と見比べてください。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/400sec、F9、ISO200、24mm

こちらもモロ逆光下での一枚。逆光であることすら感じさせない描写です。もう逆光は怖くありません(笑) この1枚を見てここ10年間におけるカメラのテクノロジーの大幅な進化を実感せずにはいられません。技術の進化は逆光をも克服してしまったようです。

フィルムカメラ時代は現像時に焼き方を工夫して逆光を補正していましたが、デジカメ時代が来てカメラ本体やPCで簡単に補正ができるようになり、そして今はカメラが逆光を感じさせない描写をしてしまう…こんな時代が来るとは思ってもみませんでした。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、68mm

掃海母艦「ぶんご」です。こちらもモロ逆光下の撮影で、ややアンダー気味に写っていたのでPCで明るさを若干補正しました。その場合、従来なら明るさを持ち上げた箇所からノイズが盛大に現れることも多かったのですが、この画像では目立ったノイズはありません。

「メリハリのない描写だなぁ」と思ったのですがそれもそのはず、よく見ると「ぶんご」はロービジ塗装に変更されているではありませんか。つまり、カメラがメリハリのない描写をしているのではなく、ロービジ塗装が己の姿をクリアに捉えさせていないのです。最新のテクノロジーを持ってしてもメリハリのない姿に写ってしまう…ロービジ塗装の効果たるやお見事です。
私はロービジ反対派ですが…。
舷側の塗装のムラ
が私には貨物船のように見えます。もしかして、これは対潜迷彩なのでしょうか?
(笑)
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/800sec、F9、ISO200、35mm

↑に掲載した4枚は午前中の遊覧船に乗っての撮影でしたが、午後の便にも乗って順光の下での試写も実施しました。
まずはJMUの修理岸壁に接岸しているDE「とね」です。順光だとα7Ⅲは見事な画像を生み出してくれました。オマケレンズで発生した船体の色かぶりは全く発生していません。林立するクレーン群が造船の街・呉という素敵な雰囲気を醸し出しています。
「とね」がこの修理で塗装がどうなるのか(ロービジ化or従来塗装)、非常に気になります。願わくば従来のままで…。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、42mm

DD「さみだれ」です。少し前に長期間の修理から戻ってきたばかりですが、嬉しいことに塗装は従来のままです。現在JMUで修理中の「いなづま」、さらに「さみだれ」と同じ時期に修理から戻った「さざなみ」「あぶくま」も従来塗装のままです。横須賀艦が修理に入るとことごとくロービジ化されているのに対して呉はこの状況。なぜこのような違いが起きているのか不思議です。もしかしたら、海自はロービジと従来塗装の効果比較を行いたいがゆえに、呉の艦を従来塗装のままにしているのかもしれません。

α7Ⅲの青空の描写も良好です。青い空と蒼い海が「さみだれ」のネズミ色の船体を美しく際立たせています。順光の晴天下でこんなに美しい画像が撮れるとなると、今後の撮影活動がとても楽しみになります♪ 取材意欲や撮影意欲も一層湧き立ちそうです。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/500sec、F9、ISO200、45mm

練習艦「はたかぜ」「しまゆき」です。両艦は同じ練習艦とはいえ、元々はDDGDDなので艦容が全く異なるのが面白いです。形は違えど力を合わせて隊員の教育にあたっている両艦ですが、残念ながら「しまゆき」は今年度末に退役となります。代わって「はたかぜ」の妹・「しまかぜ」が練習艦に種別変更される予定で、来年度から数年間は元DDGの「かぜ」姉妹が隊員育成の任を担います

「はたかぜ」「しまゆき」ともに艦齢は33年以上、長期にわたって風雪に耐えた船体の質感もα7Ⅲは上手く表現しています。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/350sec、F9、ISO200、56mm

時系列が前後しますが、午前中の遊覧船を降りた後にアレイからすこじまで試写を行いました。遊覧船に乗っていた時は、雲は多めとはいえ晴天でしたが、私がアレイからすこじまに着いた頃には雲が空全体を覆ってしまいました(その後再び晴れましたが…)。

前回「潜水艦に全く寄れない!」と驚愕した地点から再度撮影、今回はレンズのテレ端105mmの威力でここまで潜水艦に寄ることができるようなりました。これだけ寄れれば、数隻の潜水艦を一枚に収める画の撮影は問題なさそうです。

ちなみに手前に停泊している艦は練習潜水艦「みちしお」です。司令旗が揚がっているので第1練習隊司令が座乗しているようです。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、105mm

「もう少し潜水艦に寄りたいなぁ…」と思った私、佐世保で「すずつき」を撮影するときに使った電子ズームを使って、105mmからさらに1.5倍(=157mm相当)までズームしてみました。この画角だとかなりのクローズアップ感が出ました♪

「すずつき」を2倍ズームで撮影した際に細部の歪みや描写の破綻が発生したため「電子ズームは非常用」と思ったのですが、今回の試写で様々な倍率を試した結果、1.5倍までなら歪みや描写の破綻がほぼ出ないことが判明しました。なので、電子ズームに対する偏見?を改めて、非常用ではなく積極的に使っていくことに方針転換しました。105mmの1.5倍=157mmまで使えるとなると、望遠撮影でもα7Ⅲをかなりの頻度で使えます。重い従来型一眼レフ(α77)は極力使いたくないので、これは嬉しい試写結果となりました。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、105mm(電子ズームで1.5倍に拡大)

同じく1.5倍の電子ズームを使ってEバース周辺の艦艇群を撮影してみました。105mmの1.5倍=157mm相当だと個艦のアップはさすがに無理ですが、↑のように何隻もの艦艇が密集して停泊している光景は難なく撮影することができます。

手前の潜水艦は「はくりゅう」、その後方にいるのはDE「あぶくま」DD「さみだれ」訓練支援艦「てんりゅう」です。バラエティに富んだ艦艇が停泊する、まさに呉らしい一枚になりました。30年以上昔の学生時代以来の馴染みの風景ということもあり、私はこの場所から見る呉の風景が大好きです。私が学生だった頃(80年代後半)は旧式・小型の‟オンボロ艦”ばかりでしたが…
(苦笑)
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、105mm(電子ズームで1.5倍に拡大)

Aバースに停泊する音響測定艦「はりま」を、海軍時代の遺構であるクレーンと絡めて撮影してみました。画角が広がったことから、艦を単独で撮るだけでなく周囲の風景や施設等と絡めて撮りたくなるのもフルサイズ機=α7Ⅲに更新して起きた変化です。

いま見ても十分「変なカタチ」の音響測定艦「ひびき」「はりま」ですが、30年ほど前にこの場所から就役直後の「ひびき」を初めて見た際、その異様な艦容に驚き、呆然と立ち尽くしてしまったことを今でも鮮明に覚えています。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、37mm

アレイからすこじまの道路を挟んで反対側にある「澎湃館」に立ち寄りました。ここは呉海軍工廠時代の赤レンガ倉庫群の1つを、所有する企業(大之木グループ)が改装し、一昨年に土産店&休憩所としてオープンさせた施設です。

このような室内での撮影は明るさの調整が難しかったり、シャッタースピードが低下して手ブレしたり、さらにはISOが上がり過ぎてノイズだらけの画像になったりと多々苦労するのですが、α7Ⅲは難なく美しい画像を生み出してくれました。明るさを確保しているにも関わらず、手ブレのない鮮明な写り。ノイズを発生させないばかりか、歳月を重ねて剥げ落ちた壁面の質感もリアルに表現しています。今までの室内撮影の苦労は何だったのかとすら思える出来栄え。私はこの1枚を見て、α7Ⅲが稀代の名機であることを確信しました
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/30sec、F6.3、ISO1000、27mm

この日、澎湃館では大之木小兵衛さんによるセミナーが開催されていました。テーマは潜水艦で、潜水艦の構造や艦内生活、呉在籍潜水艦の顔ぶれなど、海自の潜水艦について分かりやすく解説してくれました。初心者=観光客向けの内容とのことでしたが、なかなか興味深く、楽しいお話でした。私は数年前から大之木さんと親交があるのですが、大之木さんは客席に私がいるのを見つけると「釈迦に説法するみたいで話しにくいわぁ…」と苦笑いしていました。いえいえ大之木さん、勉強になりましたよ!

大之木さんは大之木グループの中核企業である大之木ダイモ(広島県内では有名な会社です)の社長で、20年越しの構想でこの澎湃館をオープンさせました。社長業の傍ら澎湃館で海自や海軍、歴史をテーマにしたセミナーを定期的に開催しているほか、海自を支援する様々な活動にも携わっています。いわば、呉の海上自衛隊を民間から支える人物のひとりです。大之木さんの姿勢と頑張りには本当に頭が下がる思いです。呉を訪れた方々には、ぜひ澎湃館で大之木さんのセミナーを聞いて欲しいです。

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/30sec、F6.3、ISO640、24mm

澎湃館を出て呉中央桟橋に戻る途中、「歴史の見える丘」に立ち寄りました。今回は第4ドッグとその北側に広がる市街地を捉えてみました。この場所では従来は入渠している艦艇だけを撮影することが多かったのですが、先に述べたように、α7Ⅲだと広がった画角を利用してドッグを含めた呉の風景を切り取りたくなります。カメラを替えたことで被写体に対する感覚も変わりました

レンズが画面の隅々までキッチリと解像しているので、α77と同じ2430万画素ながら解像度は格段に上がったような気がします
遠方のピンクの看板がある建物が、伊400潜水艦の乗組員だった今西さんが創業した「ゆめタウン」(イズミ)、その向い側にあるドーム付きの建物が呉中央桟橋です。入渠しているのはDD「うみぎり」、何度も言いますが、塗装は従来のままでお願いします
(笑)
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/160sec、F9、ISO200、40mm

ここから紹介する画像は、11月1日に下関・あるかぽーとで実施された練習艦「しまゆき」「はたかぜ」の公開時に撮影したものです。
公開といっても乗艦できるのは募集対象者(18~33歳)のみで、私のような50歳過ぎのオジさんは岸壁で眺めるしかないのですが、α7Ⅲの試写、そして今年度末に退役する「しまゆき」の最後の雄姿を撮影するべく下関に馳せ参じました。

あるかぽーと内には遊園地があるので、観覧車と接岸する艦を絡めた素敵な構図で撮影することができます。この画像は逆光に近い厳しい条件での撮影ですが、本来なら黒つぶれしかねない「しまゆき」をα7Ⅲは上手く明度を補正して描写してくれました。
よく見ると、「しまゆき」の喫水がかなり上がっています。使用しない砲弾の揚陸など、既に退役作業が始まっているのかもしれません。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/500sec、F9、ISO200、31mm

「しまゆき」を艦尾側から撮影、順光なので美しく撮影することができました。風にはためく自衛艦旗がいい雰囲気を醸しています♪
「ゆき」型といえば、段々畑のような艦尾構造が特徴ですが、これは重量軽減のため艦尾の第1甲板を露天構造にしたためです。12隻が建造された「ゆき」型姉妹ですが、現在はこの「しまゆき」を含めて4隻のみ、今年度「しまゆき」と「あさゆき」が退役すると、残るは「まつゆき」と「せとゆき」の2隻のみになってしまいます。DDの象徴的存在だった「ゆき」型が2隻に…時の移ろいを感じます。

「しまゆき」は1987年2月17日に就役しましたが、私はこの日、東京・御茶ノ水にある某私大を受験しました。「しまゆき」の就役と3日後の「あさゆき」就役を祝うかのように東京は朝から大雪で、私は「天が2隻の就役をお祝いしているのかな?」と思いながら試験会場に向かったことを覚えています。それだけに「しまゆき」の退役は寂しいのですが、退役しても私の青春の記憶の中で生き続けます
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/500sec、F9、ISO200、40mm

あるかぽーとが素晴らしい撮影スポットであるのは、遊園地の観覧車から俯瞰撮影ができる点です。私は下関に艦艇が寄港した際には、毎回欠かさず観覧車に乗って撮影しています。50歳過ぎのオジさんが1人で観覧車に乗るのはかなり恥ずかしいのですが(笑)
ちなみに料金は700円。不運にもガラス面が汚れている観覧車に乗ってしまったら、再度700円を払って2週目に挑むことになります。

若干ガラスの反射が写り込んでいますが、「しまゆき」を関門大橋関門海峡と絡めて撮影することができました。「しまゆき」は佐世保での護衛艦時代、呉での練習艦時代を合わせると数えきれないくらい関門海峡を通過してきたのでしょうけど、もしかしたら今回の下関から呉への帰港時が最後の通過になるかもしれません。そう考えるとシャッターを押す指にも力がこもりました。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/320sec、F9、ISO200、34mm

一緒に寄港している「はたかぜ」も俯瞰撮影してみました。前甲板にミサイル発射機を備えた特異な艦容がよく分かる一枚です。
海面から反射する日光が幻想的な雰囲気を醸成してくれています。逆光も悪い事ばかりではありません。

「はたかぜ」型がこのような特異な艦容になったのは理由があります。「はたかぜ」以前のDDGは「あまつかぜ」「たちかぜ」型3隻の計4隻でしたが、いずれもミサイル発射機が後甲板にあるため、発射機を前に置いたDDG(=はたかぜ型)を4隻建造して前方からの脅威に対する守りを固めようとしたのです。それに伴い、波浪から発射機を守るために艦首が特殊な形状となりました。残念ながら、DDGはイージスシステム搭載艦に移行することになったため、「はたかぜ」型は2隻で建造打ち切りとなってしまいました。
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/500sec、F9、ISO200、35mm

公開を終えた「しまゆき」が出港して母港・呉への帰途に就きます。この時もかなりの逆光でしたが、α7Ⅲは暗部を補正して黒つぶれを防いだばかりか、船体の塗装の色味や濃淡、浮き出た錆まで表現しています。レンズの逆光耐性が高いこともありますが、逆光という条件下でこの描写ができるのは驚きというしかありません。この1枚を見て少なくない出費も納得することができました

甲板上で乗組員が帽振れをしています。もちろんこれは岸壁にいる見送りの人々への帽振れですが、私には間もなく退役する「しまゆき」が「これで今生のお別れです。長い間、応援ありがとうございました!」と言っているように見え、涙が出そうになりました。
異例ともいえる艦齢12年で練習艦に転身した「しまゆき」、その後20年以上に渡って数多の幹部・曹士を育ててきました。海外派遣任務や多国間演習への参加といった華々しい活躍ではなく、地道に隊員育成に邁進した生涯は海自艦艇史に刻まれることでしょう。
ありがとう!「しまゆき」、そして、さようなら…

<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/1000sec、F9、ISO200、39mm

続いて「はたかぜ」も出港したのですが、とんでもないくらいの逆光で、まともに写るかどうか疑問を抱きながらの撮影となりました。
結果はご覧のとおり、シルエット状にはなっていますが黒つぶれすることなく、船体の艦番号、甲板上の乗組員、数々の装備品がきちんと識別できます。特にロービジ化され普通の状況でも見えにくくなった艦番号を逆光下で描けていることは、α7Ⅲの表現力の高さの証明といえるでしょう。α77でも同時に撮影したのですが、「はたかぜ」は補正のしようがないくらい真っ黒に写っていました
(苦笑)
<撮影データ> SONY α7Ⅲ FE24‐105mm F4 G OSS、1/1600sec、F9、ISO200、84mm

約1ヵ月半に渡ってα7Ⅲを試写しましたが、結論から言えばとても素晴らしいカメラですその豊かな表現力たるや鳥肌ものです
ただ、その性能をフルに発揮させようと思えば生半可なレンズを装着してはダメで、高性能=価格の高いレンズが必要です。カメラ本体とレンズ合わせて大出血級の出費が発生しますが、撮影したリアルで美しい画像を見ればその出費が安いとすら感じるほどです。あと、何といっても軽さが素晴らしい!ミラーレス一眼を使ったら、もう大きくて重い従来型の一眼レフには戻れません
(笑)

新相棒α7Ⅲの性能にテクノロジーの進化を実感、来年は新相棒を存分に使う機会が多々あることを切に願う。